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【INTERVIEW】「A+は世界標準の資格を取得するチャンス」――米CompTIAのCEO・ベネター氏に聞く

2000年01月07日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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新年を迎え、今年は仕事や趣味に役立つ資格を取ろうと考えている読者も多いだろう。米国のコンピューター業界団体である米国電算技術協会(the Computing Technology Industry Association:CompTIA)は、資格試験受験講座を手掛けるタック(株)(TAC)と提携し、同団体が認定するIT技術者の資格『A+(エープラス)』の日本国内での普及に本格的に乗り出す。A+はコンピューター技術者の入門レベルの資格で、'94年のスタート以来、世界で17万人が取得している。TACはこの試験の受験講座を今年4月に開講する。A+の普及を目指すCompTIAのCEO、ジョン・ベネター(John Venator)氏に、狙いを聞いた。

CompTIAのCEO、ジョン・ベネター氏
CompTIAのCEO、ジョン・ベネター氏



――A+が誕生した背景について教えてください。

「A+が生まれる前、ハードウェアメーカーは、エントリー向けの試験を個々に実施してました。ところが次第にパソコンの価格が下がってきてマージンが減ると、企業としても無駄を省く必要が出てきた。そこで50社以上の企業がまとまり、『共通の資格を作れないか』と提案して、A+が生まれました」

「しかしA+が誕生した当時と今とでは、資格の意味が違ってきています。もともと、A+は一番下のクラスの技術者を養成することが目的で、対象としていたのは経験がゼロから6ヵ月のサービス技術者でした。ところがIT業界が拡大し、必要な技術者が増えるにつれ、IT全体の入門資格という性格に変わりました。これは、A+がハードウェアやソフトウェア、周辺機器といった、技術者に最低限必要な知識を取得することを可能にしているからです」

――A+はなぜ必要なのでしょうか。

「理由として、まずIT業界の労働力不足が挙げられます。ある調査によると、世界のIT業界全体で665万もの仕事が空いたままになっており、うち35万がサービス関係だといいます。この労働力不足のために、IT業界は業績を上げられない。この損失は100兆円を超すとも言われています」

「A+の当初の目的は、確かに各企業の無駄を省くことでした。しかし今では、IT業界で働く労働者の養成という役割を持つようになっています」

「IT業界の資格はピラミッド型になっています。トップ付近はマイクロソフトといったベンダーが認定する上級の資格です。そしてA+は、ベースとなる下の部分を受け持っています。A+によってピラミッドの底辺が広がれば、上位の資格を取得する技術者も増えていくでしょう。基礎を広げることで、IT業界の労働者を増やすことになるのです」

都内で開かれた発表会で「A+はピラミッドの底辺を広げる」と力説するベネター氏
都内で開かれた発表会で「A+はピラミッドの底辺を広げる」と力説するベネター氏



「就職希望者にとってもA+取得は有利になります。学歴が意味のない世界があるのです。米国の高卒者がIT業界で仕事を見つけるためにA+を取得すれば、少なくとも7つの仕事、それもつまらない仕事ではなく、立派にキャリアとなる仕事が7つは見つかります。A+を足がかりに、さらに上の資格を目指せば成功するチャンスも得られるでしょう。CompTIAが業界団体として提供するのは、こうした生涯教育の入り口の部分です」

――実際にはどんな人が受験しているのでしょうか。

「受験者は4つのタイプに分けられます。第1に、高校やカレッジを卒業して、これからIT業界で仕事を探す若者です。第2に、IT業界に転職を希望する人。3番目は、これは日本では関係ありませんが、軍隊出身者で、民間での就職を希望する人です。軍隊がA+受験のために補助をしてくれる国もあります」

「4番目は、何らかのハンディキャップを持った人たちです。ある調査は、IT業界における障害者の働きは、平均的な労働者よりも効率がいいと報告しています。就職の機会が少ないので、その分職場では集中して仕事に取り組むのだといいます。また資格を取得することで、就職するチャンスが広がる面もあります」

――すでに日本では'96年からA+の試験自体は行なわれています。今回、日本でA+の普及を目指すに当たってTACと提携したのはなぜでしょうか。

「日本では最初の段階でつまずいてしまった。北米と南米、ヨーロッパで普及し、このまま世界各国で順調に普及すると考えていたのですが、アジアではうまくいかなかった。日本では'96年から開始していますが、資格取得のための講座や教材がなかった。そこで日本におけるITトレーニングのリーダーであるTACに注目しました」

――アジアではなぜ普及が進まないのでしょう。

「アジアの経済危機が影響しているかもしれません。今後はアジア全体の経済回復で、資格取得が急速に広まると見ています」

「特に、パソコンやインターネットの普及でカスタマーサポート技術者の教育が必要になってくるでしょう。これまでカスタマーサポートは、SEやプログラマーがついでに行なってきたような仕事でしたが、中高年層がパソコンを盛んに購入する現在では、専門のスキルを持つ人がますます必要になってくる」

「CompTIAでは、アジアでの普及に力を入れていきます。オーストラリアやニュージーランドにもオフィスを置きました」

アジアでの普及に力を入れるというベネター氏は、「この18ヵ月で5回、アジアを訪れた。ロンドンからシンガポールに飛ぶと、25時間かかる。仕事じゃないと行けませんね」 アジアでの普及に力を入れるというベネター氏は、「この18ヵ月で5回、アジアを訪れた。ロンドンからシンガポールに飛ぶと、25時間かかる。仕事じゃないと行けませんね」



――CompTIAの目標を教えてください。

「CompTIAには3つの目標があります。まず1つに、IT業界の労働者不足の解消があります。2つ目は、業界の生産性や効率を高める活動です。これには電子商取引のスタンダード策定といったことが含まれます。最後に、業界の意識の向上です」

「これらのミッションを通じ、世界のIT業界に貢献していきたいと考えています。CompTIAのメンバー企業は、激しいマーケットシェア争いをしています。CompTIAは、企業が競争を続ける中で、IT業界の問題を解決する役割を担っています」

「CompTIAは非営利団体として、業界全体のレベルの底上げやコスト削減を目的に活動しています。特に3つの目標の中でも、人材不足の解消が重要です。A+によって人材提供の基礎作りができればと考えています」

「確認しておきたいのは、A+と各企業との関係です。よくこう聞かれます。『マイクロソフトやシスコらの資格とぶつかるのでは』。答えはノー。事実は反対で、IT業界を代表する企業がA+に期待を寄せています。A+はベンダーから中立の立場を取る入門レベルの資格であり、上位の資格と敵対関係にあるものではありません」

「さらに、ITの世界は日々進歩していますから、各国政府が国家資格を作るのを待ってはいられません。お役所は対応が遅いから、すでに過去のものになってしまった試験しか作れないでしょう。CompTIAはベンダー中立ですが、資格を世界標準にするために、各政府に対しても中立である必要があります」

「最後に日本のみなさんに強調したいのは、A+はチャンスだということです。世界標準の資格を取得するチャンスなのです」

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