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【年始特別企画インテル編 Vol.2】インテルがつまずき、AMDがAthlonを登場させた'99年後半

2000年01月06日 00時00分更新

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'99年は今までになく多くのプロセッサーが登場し、また急激な処理速度の向上が見られた年だった。x86互換プロセッサーの動向に詳しいフリーライターの後藤弘茂氏に、'99年のx86互換プロセッサー業界の総括と、2000年に登場が予想される製品についてのお話を伺った。第2回目は'99年後半のインテルとAMDを中心とした業界動向について。

Coppermineと820でつまずくインテル

後藤弘茂「'99年前半は、インテルがCeleronの低価格化で大攻勢をかけ、互換プロセッサーメーカーが次々と脱落する中、AMDだけが何とかしがみついていた、という状況でした。それが大きく変わるのが、“インテルのCoppermine遅れる”の報からですね。Coppermineが遅れる、さらにIntel 820チップセットがリリース直前までいきながら土壇場で発表が延期となったりした。この2つがインテルの'99年後半のもたつきですね」

FC-PGAパッケージのPentium III(Coppermine)
FC-PGAパッケージのPentium III(Coppermine)



編集部「'99年前半から後半にかけてプロセッサー市場の動きを見ると、とにかく価格とクロックが問題とされていましたね。インテルにとって見れば、Pentium IIIの売りとしていた“インターネット・ストリーミングSIMD拡張命令”*や“プロセッサ・シリアル・ナンバ”*などは、あまりメリットとして受け入れられなかったようですね」

*インターネット・ストリーミングSIMD拡張命令:Pentium IIIに実装された、マルチメディアアプリケーション向けの命令セット。浮動小数点演算の高速化や、複数のデータをまとめて処理するための拡張がなされた。正式発表前は“Katmai New Instructions”(KNI)などと呼ばれていたもの。

*プロセッサ・シリアル・ナンバ(PSN):Pentium IIIに実装された機能で、プロセッサーの1つ1つに変更不可能な固有の番号を持たせたもの。ソフトウェアを使ってその番号を読み出すことで、コンピューターの認証や企業内の資産管理などに利用できるとしている。

後藤「結局、一部のプロセッサーでなく、すべてのプロセッサーに搭載されなければ(対応するアプリケーションも増えてこないので)大きな意味はないということでしょう。かつての“MMX”*と同じように。

インテルの価格の付け方を見ると、同クロックのPentium IIとPentium IIIでは、ほとんど差がありません。ということは、インテル自身もその付加価値を認めていないということになります。ただ、Katmai*コアはおなじ0.25μmプロセスでも、Deschutes*(Pentium II)コアに比べて高クロックが可能なように最適化されています。この高クロックにできるという点が、Katmai(Pentium III)の大きなメリットだったのです」

*MMX:マルチメディア拡張命令。マルチメディアアプリケーション高速化のための命令セット。第2世代Pentiumである『MMXテクノロジPentiumプロセッサ』に初めて搭載されたが、このプロセッサー登場時は、MMXの機能を使うアプリケーションはわずかで、単に以前より高速なPentiumプロセッサーとして認識されていた。MMXは現在、Pentium II/III、Celeron、K6-2/III、Athlonなどほとんどのx86互換プロセッサーに実装されている。

*Katmai:第1世代のPentium IIIプロセッサー。0.25μmプロセスで製造され、Coppermineと異なり、2次キャッシュメモリーはプロセッサーコアと同じダイの上にはない。

*Deschutes:第2世代のPentium IIプロセッサー。0.25μmプロセスで製造されている。Katmaiと同様に、2次キャッシュメモリーはプロセッサーコアと同じダイの上にはない。

後藤弘茂――国内外のコンピューター業界の動向、特にプロセッサーやメモリー関連の情報に詳しいフリーランスのライター。月刊ASCII DOS/V ISSUEほか、パソコン雑誌などに多数の連載を持つ
後藤弘茂――国内外のコンピューター業界の動向、特にプロセッサーやメモリー関連の情報に詳しいフリーランスのライター。月刊ASCII DOS/V ISSUEほか、パソコン雑誌などに多数の連載を持つ



編集部「そうすると、Katmaiはユーザーサイドからはメリットが見えにくかったけれども、インテルからすればかなり重要なメリットを持っていたわけですね。実際Katmaiコアで600MHzまで動かしたわけですし」

後藤「インテルの元々の予定では、FSB(Front Side Bus)が133MHzとなるPentium III-533MHzからはCoppermineに移行することになっていました。9月のIDF(Intel Developers Forum)直後にCoppermineを発表するはずだったわけです。ところが10月末までCoppermineの発表がずれ込んでしまった」

編集部「'99年後半のポイントとなる、そのCoppermineに対するインテルの誤算はどういったものでしょうか」

後藤「インテルが6月にCoppermineが遅れることを認める以前から、Coppermineのサンプルチップには問題がある、という話がちらほら噂として流れ始めていたわけです。プロセッサー製造のタイミングからいって(9月に発表を控えた)この時期のサンプルに問題があるというのはたいへんなことです。

もしも、ここでCoppermineに問題が起きていなければ、AMDのAthlonの(性能面での)独走を許さずにすんだはずです。発表を前倒しにすれば良かったんですから。

インテル内部ではCoppermineをなんとかして出さなくちゃいけない、という大慌ての状況でした。プロセッサーの製造で大きなトラブルがあった場合には、平気で数ヵ月遅れるので非常に怖いんです。このときにわかっていたトラブルは、高クロック品がとれないということでした。これは後になって2次キャッシュメモリーインターフェースに関連する問題だったということがわかるんですが。

外から見ている分には、あれなんだかインテルおかしいな? という程度でしたが、インテル内部ではおそらく、顔が青くなっている人が何人もいるような状況だったでしょう。そんな、どたばたしている最中に、AMDがAthlonを発表するわけです。AMDにとっては最高の発表タイミングでしたね。インテルはなにしろ手の打ちようがありませんでしたから」

編集部注:『AMD Athlonプロセッサ』の発表は8月10日。発表時の最高クロック周波数は650MHzだった。

絶好のタイミングでAthlonが離陸

編集部「Athlonでは当初、チップセットの仕様変更に関わるマザーボードのトラブルが伝えられましたが、比較的短期間のうちに収まりましたね」

AMD Athlon
AMD Athlon



後藤「まあ、AMDにとって痛かったのは、あのトラブル自体よりも、多くのマザーボードメーカーが“様子見”の状態で、なんとかAthlon対応のマザーボードを作ってもらおうとしていた時に起こったということですね。いまはまったく状況が違いますが。

なんといっても、AMDはAthlonによってインテルから最速のx86プロセッサーの称号を取り上げたわけだし、インテルがなにもできなかったということが大きいですね。

ただ、インテルのAthlonに対する焦りのようなものは、この夏の時点よりも今のほうが強いです。今のほうが焦っていますね」

編集部「では、なぜマザーボードメーカーは一気にAthlon対応製品を出荷するようになったのでしょう? きっかけは何だったのでしょうか」

後藤「その理由で一番大きいのは“Spitfire”*の発表ですね。マザーボードメーカーにしてみれば、数が出てなんぼの世界なわけですよ。ですから、あまり数が望めないハイエンド製品じゃなくて、ボリュームゾーンに投入するプロセッサーが出るということが大きいわけです」

*Spitfire:AMDが2000年に投入する予定の、Athlonコアを使ったバリューPC向けプロセッサー。2次キャッシュメモリーがオンダイとなり、CeleronのSocket 370に似た、“Socket A”と呼ばれるパッケージになるとされている

編集部「先ほど、インテルは夏の時点よりも現在のほうがAthlonに対して焦っているというお話がありましたが」

後藤「夏の時点ではAthlonよりも自分たち内部の(Coppermineの)問題で手一杯だったという感じですね。Athlonが出てきて、対抗しないといけないんだけど、まずはCoppermineと、Intel 820チップセットを何とかちゃんとした製品にしないと、と必死だったのです。必死になってがんばったおかげで、11月までずれ込みそうだったCoppermineの発表もなんとか10月末にできた。'99年内はクロックも667MHzまでのはずだったものを、2000年第1四半期の予定だった733MHzを前倒しして発表した。これは明らかにAthlon対策ですね。

これでインテルとしては、何とかなったというところです。0.18μmプロセスでの製造もうまく立ち上がって一安心だし、733MHzも最初は数が少ないけれど、これで出荷が増えてくれば問題ない。Intel 820はさらに遅れたけど、Coppermineはなんとか年末商戦に間に合って良かったね、という状況になったわけです」

編集部注:インテルでいう“出荷数の少なさ”とAMDがいう“出荷数の少なさ”では、同じ“少ない”というニュアンスでも実数は大きく違うことに注意(実際にはインテルのほうがはるかに多い)。

編集部「Intel 820チップセットは、なぜああまでモタついてしまったのでしょう?」

Intel 820チップセットIntel 820チップセット



後藤「チップセットを開発する部門とプロセッサーを開発する部門が分かれていて、まったく別のところで開発しているからという説もあるのですが、真相は分かりません。

そもそもIntel 820はPentium III用のチップセットとして、Katmaiの時点、つまり2月に発表されるはずだったのですが、それが6月、いや9月、11月という風に、ずるずると遅れてしまったんです。FSB133MHzへの対応は特に問題にはなっていなかったようですが、ダイレクトRDRAM(RambusDRAM)関連の部分がなかなかうまくいかなかったようです」

RDRAMはなぜ供給が少ないか

編集部「結局、Intel 820チップセットは11月16日に発表されるわけですが、発表されたときに、ダイレクトRDRAMの供給が少なかったのですが、これはどうしてでしょうか。量産出荷が可能と思われるNEC、東芝、サムスン、現代(ヒュンダイ)ともあまり出荷していなかったようですが」

後藤「それは820の遅れの影響です。いま名前が出た主要DRAMメーカー4社のうち、ヒュンダイは、LGから生産設備などを買収した関係でそもそもRDRAM製造が少し遅れていました。そういう意味では3社が、9月に向けて製造ラインの一部をダイレクトRDRAMの生産に回していたわけです。3社合計で、99年末までに最低でも月産500~600万個はパソコン向けに出てくるようになるはずでした。

3社でRambusに対する温度差はあるのですが、それでもハイエンドのニーズは満たす生産量は一応あったわけです。3社のなかでも、東芝はRambusメモリーの生産比率が大きいのですが、それはPlayStation2向けがあるからです。東芝はRambusメモリーに一番賭けている企業と言っていいでしょう。サムスンはいろいろな方式のメモリーを生産していますが、ファーストプライオリティーはRambusメモリーです。NECも迷いはあるけれども、以前から開発してきているし、やる気はあるといったところです。

ところがIntel 820がドタキャンとなってしまい、東芝以外はラインを止めてしまった。仕掛かり品と呼ばれる、加工途中のDRAMチップをそのままストップさせて、生産ラインをSDRAMに振り当てたんです。つまり、820が登場するはずだった9月末までに前もって生産しておいた在庫分以外は、RDRAMの生産がほぼ止まってしまった。今出ているRDRAMは、その在庫分なので、量が極めて限られているのです。

そして、それと同時に、SDRAMの価格が高騰しました。SDRAMでは儲からないからダイレクトRDRAMに移行しようと思っていたところにこの価格の上昇で、まだもう少しSDRAMでも商売ができるということになってしまった。RDRAMへのモチベーションはさらに落ちてしまったわけです。

ではIntel 820がどんどん出荷されるようになれば、ダイレクトRDRAMもどんどん出荷されるかというと、そう簡単にもいきません。現在のRDRAMは0.20μmから0.22μmプロセスで製造されているのですが、これだとRDRAMのフル性能となるPC800、PC700*の製品だけでなく、スペックの低いPC600製品がどうしても生産されてしまうわけです。

PC600ではSDRAMに比べてさほど性能がいいわけではなく、パソコンメーカーも欲しがらない。するとPC600が売れ残るので、その分製造コストが上がってしまう。そのため、後続のDRAMメーカーは、高クロック品が多くとれるようになる0.17μmや0.18μmプロセス製品から本格的な生産を始めようとしています。

RDRAMの問題は、はたしてDRAMの主流になれるかどうかという点にあります。DRAMという製品は、量を作らないと質が上がらないといった性質のもので、大規模なほうが有利なんです。それがNECと日立がDRAM事業の統合をしたりする理由ですね。そして、大規模に作られる品種がコストダウンされて安くなる。つまり、RDRAMはSDRAMに代わってDRAMの主流にならないと、本格的に安くなってこない、そこが問題なんです」

*PC800/700/600:RDRAMにはメモリークロックにより、400MHzの“PC800”、356MHzの“PC700”、266MHzの“PC600”の3つのグレードに分けられる(いずれもFSBが133MHzの場合)。ダイレクトRDRAMの理論上のピーク性能であるメモリー帯域毎秒1.6GBは、PC800のRDRAMを使ったときのもの。PC700では毎秒1.4GB、PC600では毎秒1.06GBとなってしまう。

編集部「DRAMメーカーというと、マイクロンテクノロジーの名前が出ないのが不思議ですが?」

後藤「マイクロンは同じプロセス技術を使っても、ほかのメーカーより小さなダイを作って、それで一気に低価格攻勢をかける。そうして他を一掃してしまって利益を出すという会社です。マイクロンのRDRAM生産計画はわかりませんが、マイクロンがやらなければPCのRDRAMの市場は本当には動いてこないのではないでしょうか」

(Vol.3に続く)

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