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【年末特別対談モバイル編Vol.1】メールもウェブも携帯電話の時代到来か

1999年12月24日 00時00分更新

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年末年始特別企画対談モバイル編では、日刊のモバイル関連メールニュース/ウェブマガジン“モバイル・ニュース(http://www.mobilenews.ne.jp/)”の編集長を務められる山田道夫氏と、Palm関連書籍の執筆をされ、携帯電話の事情、特に関東と関西の違いにも詳しい、ライターの中島和則氏に、1999年のモバイル事情についてお話しいただいた。

編集部佐々木(以下編集部)「1999年は携帯情報端末の浸透と多様化の年であったように思えるのですが、いかがでしょうか。携帯情報端末という言葉については、厳密に規定するつもりはありませんので、広くお考えください」

iモード、iモード

山田道夫氏(以下山田)「こういったジャンルのものは、どんどん多様化してくるし、細かな切り分け自体は意味がなくなってきていると思います」

編集部「OSに何を使っているかとか、電話がどうなっているかとかそういった機能ではなくて、メールに使うのか、ウェブのブラウジングもするのかという、使い道が広がり、あるいは分化することによって、細かい分類は意味がなくなっているということでしょうか。それでは、今年印象に残った製品やサービスをあげるとすると何になるでしょう?」

山田「そういった細かな区別をせずに、印象に残ったというのは“iモード”でしょう」

iモード:'99年2月に、NTT移動通信網(ドコモ)が始めたインターネットアクセスサービス。メール、メッセージ、iモード対応サイトへの接続が行なえる。課金はパケット単位で行なわれ、時間ではなくデータ量による。

中島和則(以下中島)「そうですね。私もiモードですね。あそこまでヒットするとは思いませんでした」

山田「去年の今頃は1台もなかったものが、200万台以上(http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/
99/whatnew1019.html)ですからね。もうほとんど300万台でしょう」

編集部「iモードの発表日にNTTドコモが、「1年で契約数300万を目指す」とぶちあげて、それに対してほんとうにそんなに普及するのかという疑問も多く投げかけられたのですが、NTTドコモは秋に400万に目標を上方修正しましたね。数年後には1000万とも言っています。お2人の最初にiモードを見たときの印象はいかがでしたか?」

山田「僕も発表会のときにiモードを見たり触ったりしたのですが、よく携帯電話にこんな機能つけるなと、正直思いましたよ」


山田道夫 Mobile News編集長――大きな体のコンプレックスの裏返しか小さなマシンに心惹かれる。東芝の初代DynaBook“J-3100SS”を発売日に購入してからモバイル人生を歩む。J-3100SSがとても丈夫だったため、丈夫なのが当たり前という誤った先入観をもってしまった。今のメインマシンはJornada 680。ウェブマガジン、メールニュースMobile News(http://www.mobilenews.ne.jp/)

中島「(携帯電話のように)画面も小さくて文字数もろくに出ない、横幅も縦も限定されている。これはどうやって使っていくんだろうと思いましたね。フォントの見やすさなども考えると、本当にこれでメールやウェブを見ていけるのかなという思いがすごくあったのですが」

編集部「iモードのTVCMでは、ページャー(ポケベル)のマスコット的存在だった広末涼子が、メークの最中にiモードのサービスを使って振り込みしたりして見せていましたが、そんなニーズはそれほどないんじゃないか、などという疑問もありました」

山田「本当にiモードサービスをみんなが必要とするのかな、とは思いましたね。例えばそんなにみんな頻繁にお金を振り込む用事なんてあるのかな、というような疑問ですね」

編集部「そうすると、iモードがこれだけ普及した理由についてはどうお考えですか? 何がきっかけだったと思われますか?」

山田「いろいろあるとは思うのですが、iモード対応のコンテンツが簡単に作れるというのが1つ大きな理由ではなかったかと」

関東と関西のドコモはこんなに違う!?

中島「私は、1つはCMがうまかったというか、NTTドコモの戦略がうまかった。iモードのコンテンツ作るのも、「講習会を開きます、無料ですから参加してください」というふうに。特に関西圏はセルラー系がすごい勢力なので、積極的なんですよ、関東みたいにタカビーじゃない、もう、うちはNTTドコモだからいいんだよ、みたいなふりはしない(笑)」

ドコモ関西では、“セルラーグループになんか負けちゃならない”というような雰囲気があって、例えばPHSの64kbps PIAFSの拡販にしても、「お宅までうかがって電波を計測します。それで64kbps対応かどうかを調べさせていただきます」という“ドコモ関西 64kエリアリクエストキャンペーン”をやっている。姿を隠して(笑)一般ユーザーのふりをして応募してみたら、本当に家までチェックにきてくれて、「あなたはどちらの部屋で主に使いますか? ここで利用できる基地局が2つあって、まだどちらも32kbpsまでなんですが、よく使われる部屋に近い方を64kbps対応しましょう」という。そうして対応した上で、確認の電話が入るくらいドコモ関西は必死なんです。こっち(ドコモ中央)はそういう姿勢は見えないんですけれど」



中島和則――1968年生まれ。有限会社手國堂(http://www.technido.co.jp/)取締役。工学部通信工学科を卒業後、東京で通信・パソコン関係の雑誌および書籍の編集者として勤務。1999年6月、(有)手國堂の設立と共に関西へ戻る。ネットワーク関係の原稿を書く関係からパソコンが15台にも膨れ上がり、所有するパソコンはデスクトップとノートがほぼ同数


山田「いや、関東ではそういうのは全然ないですね。(関西と比べると)殿様商売というか。なにかそういう関西の話が信じられない、という感じです」

中島「iモードについても、企業イントラネット向けセミナーを開催するなど、関西ではすごく一生懸命やっていて、一生懸命やりすぎて(?) アクセスが集中したせいで、システムが不安定になったこともあったけれど(笑)」

山田「関西でそういうことがありましたね」

中島「本当にiモードに関してNTTドコモは、戦略的な部分がうまかったというか、若い女性のユーザーをうまくつかみましたね。昔のホンダのプレリュードみたいな、若い女性に売って、女性に人気を出して、男に買わせようというような(笑)。ちょっとそういう作戦が見えますね。あとはやはりメールでしょうか」

山田「メールだと思いますね」

編集部「NTTドコモが、あるフォーラムで面白い数字を挙げていました。携帯電話の通信量全体に対するデータ通信の割合が、PHSでは30パーセント強にもなるということです。携帯電話では1パーセント強。それが、通話回数に対するデータ通話回数の割合ということになると、PHSは3割弱とさほど変わらないのですが、携帯電話では5、6パーセントに上がるんです

つまりこれは、携帯電話では10円メールサービスなどの、1回接続するごとに1メッセージを送るようなものを利用しているということだというのです。そして、さらに驚くのが、10円メールの契約数40数万契約のうち、女性が6割もいるのだそうです。この数字はもちろん“ポケットボード”のヒットによるものが大きいと。ポケットボードはとにかく女性をターゲットにしてデザインされた製品で、そういう意味では、NTTドコモが女性から攻める作戦はiモード以前からあるわけですね」

山田「ちょっと話が戻りますが、前にポケベルでメッセージのやりとりがはやりましたよね。その流れの延長として、携帯電話やPHSに進んだ人、ポケットボードタイプの製品に進んだ人、さらにその上のパソコンなんかに進んだ人がいるようなんですね。メールのやりとりの楽しさを知った人たちが、そこからいつでもどこでも短くて良いからメールをやりとりしたいという人と、長文のメールをやりとりしたい人に分かれてきたみたいです。その前者がiモードなんじゃないでしょうか」

中島「いいポジションのところにスコンと収まった感じですね」

編集部「NTTドコモが実際のところ、どこまで考えていたのかはわかりませんが。まずポケットボードで、メールを会社だけでなくプライベートでも使えます、と女性ユーザーをつかんでおいて、そこにiモードを投入するというのは筋道としてうまいように思います。ポケットボードは、あの時点でできる技術を安く提供するということで、パソコンなどにくらべれば、それは限定されたサービスだったけれども、まずはメールの楽しさを教えるというものだったのではなかったかと」

山田「iモードでは、対応サービスが急激に増えてきて、思いがけない「こんなサービスができるのか」というようなものが出てきましたね。そして、そこからまた新しいユーザーが開拓されている気がします。iモードのメールにしても制限はあるわけだけれど、あるサイトにメールを転送すると、そこでフィルターをかけて長いメールもいくつかに分けて転送してくれるとか、制限に対応したサービスが出てくる。こんなものも! と驚いたサービスとしては、ゲームですね。つまり、いずれは登場すると思っていましたけれども、Javaのサポートもされていない今の段階で始めるとは正直思ってなかったですね」

中島「こんなサービスが、ということなら、新譜が聴けるというサービスですかね。あの音質の悪いデジタル電話でどうするんだ? と思っていたのですが。例えばP208シリーズのような端末で、都心のような通話の多いところではもちろんひどい音質なのですが、地方の通話が少ないところでは、cdmaOneレベルくらいのには聴こえるんです。まあ、このサービスを利用するコギャルの人たちは、渋谷のうるさい街中で友達と聴いたりするのでしょうから、音質云々ということではないのでしょうけれど

話が飛びますが、関東のcdmaOneの音質よりも、関西のcdmaOneのほうが音が良いんですよ。公にはシステムは同じだといってるんですが、おそらく関西は第2世代の基地局に変えているんじゃないかと思います」

編集部「cdmaOneの音質の話題が出ましたが、cdmaOne登場の時は、CMでかなり音質の良さを強調していましたね」

山田「あそこまで言うからには、もっといいのかと思ったら(笑)」

中島「それほどでもなかったですね」

山田「それはもちろん、NTTドコモの端末と比較してどう聞こえるか、ということが大事ですから、それよりは良い、というのも理解はできます。ターゲットをうまく絞ってユーザーがどう思うかを考えた戦略です。が、僕なんかよく街頭でcdmaOneのキャンペーンガールに聞かれて「いや、全然PHSの方がいいですね」っていつも答えてたんです(笑)」

電子メールになじんだ世代に受けたiモード

中島「かつてポケベルを使って、数字の語呂合わせで“オヤスミ”なんてやっていた人たちから発展したのと、パソコンを会社で使っていたOLからポケットボードに発展したものの、うまく一致したところがiモードだったのかなと思います。文が語呂合わせじゃない文字で送れるようになり、わざわざポケットボードを持ち歩かなくても、携帯電話1台ですむようになったというところが、iモードのヒットの秘訣だったかもしれません」

山田「まあ、iモードのメールも、どのくらい利用しているかというと、iモード対応端末を持っていても、1回も使ったことのない人も多いのでは? 売れてる機種で話題になってるからって買って、ちょっとめんどくさいと思ってそのまま使わないという人もいると思うんです」

中島「友人、知人に聞いてみたところでは、メールの着信はさせるけど発信はしない、「あんなもんで文字打てるかよ」なんて(笑)。工業系の大学出身だから、一般にそうだとはいえませんけれど。もちろん、あのキーで信じがたいスピードで入力する人もいるわけですが」

ともかく、iモードのメールは受けるには便利です。圏外になっていても、圏内になればまた入ってくる。通話が多くて話し中になってしまう時でもメールで送っておけばいい」

山田「別に、そんなに長い文章を入力しなくても、1、2行でも、感謝したり、時間変更したりっていうのなら十分伝わる」

編集部「それは、普通の電子メールと、*ショートメールを使い分けているのでしょうか?」

*
ショートメールサービス:NTTドコモがデジタル携帯電話向けに提供しているサービスで、携帯電話同士で、全角25文字までの短いメッセージを送受信することができるサービス。なお、同様のサービスはPHSやほかの携帯電話キャリアーも行なっている。

中島「ユーザーによってそれは分かれるんじゃないでしょうか。例えばショートメールから始めた女の子たちは、文字制限があったので、少ない文字数でいかに伝えるかということには長けていたと思うんですね。でも会社でカチャカチャメールを書いているOLたちだと、「iモードって改行どこでやるんだろう」とか、そんなことは絶対考えないと思う。カチャカチャ書いて送って、なんか地球のアイコンみたいなものがちょこんとついているようなノーツの変な添付ファイルが付いていても(笑)、気にしないでしょうし。やはり、そのユーザーが入った道によって違うなという気がしますね」

山田「誰宛てにメールするかっていうところで違ってくると思います。頻繁にコミュニケーション取りたいのか、あるいは情報を読みたいのか、多様なユーザーがいると思うので、その中でコミュニケーション主体の人は、とにかく短くても何でも、いつでも打ちたい。あるいはいつでも読みたいっていう人もいるだろうし、ある程度まとめて情報として知りたい、ページャーみたいな使い方をしたいっていう人もいるだろうし。いろんな使い方をやっているところかなっていう気がするんですけどね」

編集部「ある一時期にiモードへの批判として、なぜ*WAP対応ではない、独自方式でやったんだろうかというものがありましたが」

*
WAP(Wireless Application Protocol:フィンランドのノキア社、スウェーデンのエリクソン社、米モトローラ社、米Unwired Planet社が中心となって'97年に発表した、携帯端末用ネットワークプロトコル。ウェブを始めとした各種の情報を、携帯電話にとどまらない、各種の携帯端末で利用できるように設計されている。WAP Forum(http://www.wapforum.org/)で仕様の検討が行なわれている。現在のバージョンは1.0。

山田「逆に言うと、ワールドワイド指向になったって、日本で使うものだから日本語が読めていくら、というものですから、国内だけで閉じていても、コストが変わらなければ同じだと思うんです。それはいわば批判のための批判で、僕もよく言ってたんです、こんなにはやる前は(笑)」

編集部「NTTドコモに言わせると、「うちは自分でコンテンツビジネスは絶対やらない」と、じゃあコンテンツを作ってもらうにはどうしたらいいか考えた。新しく覚えないといけないWAPではなくて、今すぐにできる、みんながわかっているHTMLで書けるようにしないと、わざわざNTTドコモの携帯電話のためのiモード専用の言語だと、誰も作ってはくれない、という発想だったのだそうです。そこはNTTドコモのうまいところかなと」

山田「うまいと思いましたよ。iモード対応ページはどんどん増えてますからね。iモード対応のHTMLファイルを書くこと自体はそんなに難しくないことで、制限の中でどうやって表現するかだけ気をつければいいので」

中島「これは気のせいかも知れないですが、iモードが普及し始めてから、テキストで構成されるウェブページが増えてきたような感じがするんです。まあ、大企業はモバイル用にテキストのものを用意するというのはありますが、個人で情報を発信している人たちにもiモードに限らず、テキストで見ることを考えて作る人が増えてきたんじゃないかな。例えば“これはSVGAやVGAでも最適化されてます”っていう注意を入れる人たちが増えてきた」

山田「見られることを意識してきた。そこで、いろんな人がいるんだってことに気づいてきたというか、みんな自分と同じ環境じゃないし、もしかしたらモバイルしている人たちもいるし、iモードの人もいる。iモードに対応しておけば、まあその上は何とかなる。そういう意味で、いろんな人たちが楽しめる環境になったのは、iモードのおかげで、良かったなと」

中島「そうですね。良いことだと思います」

山田「*“駅前探検倶楽部”とかよく利用させていただくんですけど、やっぱり普通のページってどうしても重いじゃないですか。専用線使ってたって、重い時はほんとに開かない。それに対してテキストだけで、きちんと見えるようにできてて、サービスとして利用できるというのはすごくありがたいです。1回ちゃんと調べてみようと思っていて、まだやってないんですけど、どのぐらいの時間で調べられるかっていうのを考えたら、iモードきっと一番早いと思います。確かに文字の入力のしにくさはあるにしても、例えば終電が知りたいときにさっと調べられるというのは大事ですよ」

*
駅前探検倶楽部:東芝が、'97年の4月からインターネットを使って提供しているサービス。駅周辺の店の地図や乗り換え案内、終電時刻などの情報が提供されている。現在、首都圏版、東海版、関西版が用意されている。http://ekimae.toshiba.co.jp/

中島「駅前探検倶楽部は終電間近になると、テキストベースじゃない方はすごく重たくなるんです。それがテキストだと結構速い。これからもう一歩普及が必要な部分ではあるでしょうけれど、テキストで見るという選択肢ができたってことは良いですよね。Windows CEマシンやWorkPadでも見られるということですし」

山田「画像もあるページで、画像を表示させないでテキストだけで見たいというときもあるんですが、画像がないとリンクがなくなってしまうときがあるんです。それはやはり作る方が考えていない。自分で使ってみないとわかんないですよね。みんな重たいページというのはやはりだんだん行かなくなるんじゃないでしょうか。よっぽど必要があれば別だけど。そのために何十秒も待たされるのはやっぱりいやだなと思います。

作っている方の中では、かっこよくすればという認識のほうが以前は多かったと思いますけど、やっぱり来てくれないというのは大きいでしょう。そう考えたとき、ユーザーのニーズはどのあたりかを考えると、iモードのようなはっきり想定できるものがあるのは、すごくいいと思いますね」

中島「メーカーのウェブコンテンツなんか、お偉いさんとかが見て、これじゃあ物足りないじゃないかっていうのもあったでしょうけど、今度は「iモードが 300万台出てますよ。それに対応したウェブですから軽くしなければいけないんです」っていう、作る側の意見が言えるようになるから、そういう意味ではもっと発展していくと思います」

(Vol.2に続く)

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【年末特別対談モバイル編Vol.2】IDOやJ-フォンのiモードへの対抗策は
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/
1999/1227/topi10.html

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