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DTP/印刷業界に一石を投ずる帆風の新サービス

1999年12月22日 00時00分更新

文● 山木大志

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DTP出力ショップ大手の(株)帆風は、21日、新しいサービスを発表した。DTPデータの出力を代行する出力ショップは、印刷需要の低迷を受けて、統廃合、隣接他分野への進出などを模索している。その中で、同社の打ち出したサービスはこうした“後ろ向き”の転進というよりは、新たな印刷業業のありようを模索するものということができる。同社が新しいサービスは以下の通り。新サービスは2000年1月5日より開始される。

(1)インターネット受付サービス
(2)PSチェッカー無料貸し出し
(3)CTP出力サービス
(4)印刷物自動見積もりソフト
(5)名詞、封筒ドキュメントサービス
(6)色補正スキャンニングサービス
(7)デジタルコンセンサスサービス
(8)DocuColor 1255出力サービス
(9)パッケージカンプ出力サービス
(10)本機校正刷りサービス

データチェックで割引など10種類のサービス

以下、帆風の新サービスの概略を説明する。
(1)の“インターネット受付サービス”は単なるインターネット入稿ではなく、ウェブブラウザー上で入稿したデータが現在どの工程に入っているかをリアルタイムに表示するものだ。帆風には5つの店舗があるが、「各店舗では毎日50~100件の進行状況に関する問い合わせがある」(犬養氏。以下かっこ内は同氏)という。現在は「このために多くの人手をとられているが、このサービスによってこれらのスタッフを生産に当てられる」という狙いだ。

(2)の“PSチェッカー無料貸し出し”は、DTPソフトで制作されたデータが出力可能かどうかのチェックを行なう同社のオリジナルソフトソフト=PS(PostScript)チェッカーを無料で貸し出すものだ。PSチェッカーでチェックされたデータは、通常の出力料金よりも 10パーセント安くする。

(3)の“CTP出力サービス”は、Computer to Plate(製版フィルム出力を行わずに刷版を出力する仕組み)の出力を代行するものだ。刷版は傷つきやすいので、印刷工場内またはその至近に配置するべきものと一般的に考えられているが、「こうした出力代行需要も今後増えてくる」と同社では見ている。

(4)の“印刷物自動見積もりソフト”はウェブ上に置かれ、顧客がブラウザー上で紙の種類/サイズなどを入力するだけで見積もりが自動的に計算される。ここで表示される見積もりには製本は含まれない。印刷の見積もりは、一般の人には非常に分かりにくいといわれている。これは極論すると合計金額が先にあり、個々の要素、単価は結論に合わせて調整しているのが現状だからだ。帆風では「常識的な単価に基づき、積算することで見積もりに信頼感を得るようにしたい」という。

(5)の名刺、封筒ドキュメントサービス”は、過去の名刺、封筒のデザインをウェブサーバーに登録しておき、顧客がこれを閲覧し、必要なテキストデータを送信して、名詞、封筒を作成するもの。(6)の“色補正スキャンニングサービス”は、写真の明るさ、シャープさなどを適宜補正して入力するものだ。従来のスキャニング(色分解)は、解像度など入力条件を固定して受発注が行なわれてきたが、このサービスでは制作者の意図に沿った補正が行なわれる。

(7)の“デジタルコンセンサスサービス”と(8)の“DocuColor 1255出力サービス”は、いずれもカラーカンプ/校正出力サービスである。“デジタルコンセンサス”は精度の高いデジタルプルーファ(校正機)、『DocuColor 1255』はカンプ出力、簡易カラー校正用途で広く使われているA-Colorよりも高品質の出力が可能。(9)の”パッケージカンプ出力サービス”は、パッケージなどこれまで多くの労力と時間が必要であった実物見本を、インクジェットプリンターなどを利用することで簡易に制作するサービスである。

高度な技能が必要な印刷機で校正刷りを作成

(8)の“本機校正刷りサービス”は、ハイデルベルグ・ジャパンの印刷機『SpeedMaster 102』を使って校正刷りを行なうサービスである。校正刷りは、製版行程がデジタル化した現在でも専用の校正機(平台校正機)が主流である。しかし、前述のCTPが普及するとフィルムが必要な平台校正機は利用できなくなる。CTPが徐々に普及しつつある現在、校正プロセスをどのようにするか大きな課題となっている。これは帆風が出した1つの回答である。

平台校正機はインキ、紙ともに専用のものを使い、印刷機とは印刷の原理が異なりながら、印刷に最も近いものを作り出せるとして長年にわたって使い続けられている。その結果、平台校正紙の仕上がりに印刷を合わせるという形で実務が行なわれることになってしまった。原理的に異なるもので色、風合いを合わせるために、客観的な方法は成り立たず、印刷行程が経験とカンに依存せざるを得なくなっている大きな理由なのである。

印刷機そのもので校正紙を出力するには、色を厳密な数値で管理し、それを印刷に実現する高い技能が必要となる。「印刷機のオペレータは、ドイツ、アメリカでは非常に高い技能職です。それに対して日本では残念ながら非常に低くみられています。数値管理による厳密な発色など高い技能によってスタッフにプライドを持たせたい」。帆風代表取締役犬養氏は、このサービスを始めた理由をこのように語る。さらに「本機校正を‘業’として確立したい」と、このサービスの将来性、拡張性も強調した。

帆風は、出力サービスのほかに、CD-ROM作成やインターネットプロバイダ、マルチメディア制作、データベースなど、印刷に隣接する他分野への拡張を行ってきた。今回は、一転して本業のプリプレス(印刷前工程)の革新を図るサービスを投入してきた。印刷業界は、従来多くの人手を費やし、肝心な部分では経験とカンという客観化できない技術に依存してきている。帆風の新しいサービスは、いずれも機械化、省力化、さらには高度で客観的な技能など、従来の印刷業のあり方を問い直すものとして注目に値するだろう。

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