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「ストリーミングが新しいメディア体験を生み出す」――リアルネットワークスCEOが講演、音楽ポータルも開設

1999年12月17日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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リアルネットワーク(株)は17日、デベロッパー向けカンファレンス“RealNetworks Conference & Exhibition'99/Tokyo”を都内で開催した。来日した米リアルネットワークス社会長兼CEOであるロブ・グレイサー(Rob Glaser)氏が基調講演を行ない、「ストリーミングにはチャンスがある」として、広帯域インフラを活用したデジタル音楽配信にも力を入れていくとした。また住友商事(株)との共同運営による音楽情報ポータルサイト“PM PROJECT”を同日開設したことを発表。2000年2月に合弁会社を設立し、音楽コンテンツプロバイダーとユーザーを結ぶ事業を本格的に開始するという。

東京国際フォーラムで開かれた“RealNetworks Conference & Exhibition'99/Tokyo”
東京国際フォーラムで開かれた“RealNetworks Conference & Exhibition'99/Tokyo”



グレイサー氏はまず、「'95年4月に『RealAudio』をリリースし、インターネットに音声のストリーミング配信という革命が起きた。'97年の『RealVideo』で同じように動画を手に入れることが可能になり、翌年の『RealPlayerG2』ではインタラクティブなビデオを、今年リリースした『RealJukebox』で音楽をハードウェアに格納して好きな時に楽しむことができるようになった」と同社の過去を振り返り、リアルネットワークス社はインターネットで新しい体験を可能にするツールを提供してきたことを強調した。

グレイサー氏は高校生時代、学校の食堂にスピーカーを置いてミニ放送局を運営していたという
グレイサー氏は高校生時代、学校の食堂にスピーカーを置いてミニ放送局を運営していたという



グレイサー氏によると、RealPlayerの登録ユーザーは現在、世界9200万人に上り、11月に公開されたバージョン7.0は、10日間で400万回ダウンロードされ、RealJukeboxは半年で1800万ユーザーを獲得したという。これは「インターネットの急速な発展に合わせて、ストリーミング配信がクリティカルマスを超え、新しいビジネスモデルが生まれたということ」(グレイサー氏)だという。

「ストリーミングにはまだまだビジネスチャンスがある」としてグレイサー氏が目指すのは、同社のツールをコアにした“ストリーミングメディアのエコシステム”だという。リアルネットワークス社はツールを提供し、コンシューマーはストリーミングによる配信を楽しむ。これに対し、広告主は新たなメディアに対し広告を配信する。エコシステムとは、この3者がそれぞれ成長しながら、相互作用で強化されていくというモデルを生態系になぞらえたものだ。



このモデルを成功させるために、グレイサー氏が掲げる課題は3点ある。1つは「今後は100万を超えるストリーミング番組が誕生するだろう。そうなるとコンシューマーが番組に簡単にアクセスできる検索システムが必要になる」。2つ目は「番組提供者のためにビジネスモデルを定義したい。ハイクオリティーな動画など、素晴らしい番組作りが促すような環境を整える」。最後に、「広帯域の環境は近い将来に実現する。日本やアジアを含む世界各地で、衛星を使ったシステムの展開を進める予定だ。広帯域によるストリーミングを1日でも早く楽しめるよう、経済的な援助も行なっていく」と述べ、ストリーミングビジネスを成功する鍵として、広帯域なインフラの整備に積極的に関わっていく姿勢を示した。

最後にグレイサー氏は、「'99年はインターネットによるメディア配信にとっていい年だった。リアルネットワークスの最初の5年間と同じように、今後もイノベーションに力を注ぎ、ビジネスの成功を実現したい」と締めくくった。

「'95年にRealAudioでラジオを聴いた時は、ここまでストリーミングが伸びるとは思わなかった」と語るリアルネットワークス日本法人社長の比嘉ジェームス氏 「'95年にRealAudioでラジオを聴いた時は、ここまでストリーミングが伸びるとは思わなかった」と語るリアルネットワークス日本法人社長の比嘉ジェームス氏



日本法人のリアルネットワークス社長を務める比嘉ジェームス氏は、住友商事と共同運営する音楽情報ポータルサイト“PM(Personal Music)PROJECT”を17日に開設したことを明らかにした。

PM PROJECTのトップページ PM PROJECTのトップページ



同サイトは、ユーザーが視聴したストリーミングやダウンロードした音楽の履歴を記録し、サイトを訪れる各ユーザーに適したコンテンツをカスタマイズして提供するサービス。あるアーティストのライブ中継を見たユーザーに、そのアーティストの新譜情報などを提供するといったケースが考えられ、レコード会社とユーザーをOne to Oneでつなぐ新たなマーケティングの場になる。

米リアルネットワークス社と住友商事は2000年2月に合弁会社を設立し、本格的なサービスを開始する。資本金4億8000万円のうち、51パーセントをリアルネットワークス社、49パーセントを住友商事が引き受ける予定。将来はアジア各国への展開を視野に入れ、映画など動画メディアへのサービス拡大も予定しているという。

17日はプレオープンだが、りんけんバンドの曲の無料ダウンロードが可能になっている(17日のみ)。これを記念し、りんけんバンドの上原知子氏がカンファレンス会場のステージに登場し、2曲を生で披露。同バンドのリーダーである照屋林賢氏も現われ、「インターネットでの展開にも力を入れたい」と語った。

りんけんバンドのボーカル・上原知子氏 りんけんバンドのボーカル・上原知子氏



照屋林賢氏は、「沖縄は遠いから、インターネットをうまく活用できれば」と語る 照屋林賢氏は、「沖縄は遠いから、インターネットをうまく活用できれば」と語る



比嘉氏はまた、音楽配信にも力を入れていく方針を述べ、realjukeboxをソニー(株)の“ATRAC3”“OpenMG”に対応させることを明らかにした。また富士ゼロックス(株)の電子チケットシステム『アクセスチケットシステム』を使ったコンテンツ販売のデモも行なった。

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