このページの本文へ

Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference '99”が開催

1999年12月17日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

日本Linux協会(JLA)は、現在パシフィコ横浜で行なわれている“Internet Week 99”の関連イベントとして、Linuxユーザーを対象としたイベント“Linux Conference '99”を開催した。

“Linux Conference '99”は、'98年12月に日本Linuxユーザ会が主催した“Linux Conference '98 in Kyoto”を継承したもの。“Linuxに関わるすべてのコミュニティ結集の場”というスタンスで、Linux関連プロジェクトの紹介やユーザーグループからの活動報告、パネルディスカッションなどが行なわれる。

初日の今日は、ビジネスユーザー向けにLinux製品や導入事例などを紹介するセミナーを実施、“Samba Team”のJeremy Allison(ジェレミー・アリソン)氏や、独SuSE Linux社のDirk Hohndel(ダーク・ホーネル)氏による特別講演が行なわれた。

Allison氏は、“Open Source Development of a Closed Protocol”と題し、『Samba』に関する説明を行なった。

Sambaは、UNIXおよびUNIX互換マシンを、Windows 95/98/NTのファイルサーバーやプリントサーバーにできるオープンソースソフト。ソフトウェアライセンス規約“GPL(GNU General Public License)”のもと、国内外のサイトで無償配布されている。

Allison氏が来場者に、「この中でSambaをLinux環境で使っている人は?」と問うと、約半数が挙手。同氏は「年々Linux環境で使っているユーザーが増えている」と語った。また、Sambaのロードマップについて、WindowsドメインコントローラーやLDAPに対応する3.0が年内にリリースされると言われていたが、同氏は「スケジュールは少しのびている」と説明、「スケジュール通りにリリースしなくてもいいのがオープンソースだ」とジョークを飛ばした
Allison氏が来場者に、「この中でSambaをLinux環境で使っている人は?」と問うと、約半数が挙手。同氏は「年々Linux環境で使っているユーザーが増えている」と語った。また、Sambaのロードマップについて、WindowsドメインコントローラーやLDAPに対応する3.0が年内にリリースされると言われていたが、同氏は「スケジュールは少しのびている」と説明、「スケジュール通りにリリースしなくてもいいのがオープンソースだ」とジョークを飛ばした



Sambaは、Windowsのネットワークプロトコルである“Server Message Block(SMB)”* を実装する。同氏は「マイクロソフトがプロトコルをオープンにしたのはめずらしい。プロトコルのディテールをオープンにするのは賢いやり方だ。これによってプロトコルがユーザーに普及していく。マイクロソフトがSMBをオープンにしてくれたから、SambaがSMBを使えるのだ」。

*現在、マイクロソフトで使われている名称は“CIFS(Common Internet File System)”

しかし同氏は、SMBプロトコルはひどいものだと言い、「なぜSMBサーバーを開発するのが難しいのか、それはWindows上にあるすべてのバグのことを考えなくてはならないからだ」と、Samba開発において苦労したと語った。同氏は「SambaはSamba Team所有の元にあるのではない。オープンソースメソッドは、協力して開発、改良を行なうことで、より強力な製品を入手できるようになるのだ」と締めくくった。

来場者からの「Windows内部のオープンになっていない部分についても中身を見ているようだが、法律上問題があるのでは?」との問いに対しては、「確かにリバースエンジニアリングはやっている。米国では問題があるかもしれないが、英国ではインターオペラビリティー(相互運用)の目的でリバースエンジニアリングを行なうことは法律的に許されている。Samba開発は英国の法律に基づくオーストラリアで行なわれており、われわれの行為は違法ではない」としている。

続いて、Dirk Hohndel氏が“XFree86:Past-Present-Future”と題し、XFree86に関する講演を行なった。

XFree86は、フリーソフトウェアのXサーバー。現在はほとんどのLinuxに付属している。現バージョンは、'99年8月にリリースされたXFree86 3.3.5。3.3.5の次に提供される3.3.6はメンテナンスリリースで、S3 Savage2000、ATI Rage 128、nVIDIA GeForce、Intel i810をサポートするという。

メジャーバージョンアップとなるVersion 4は、X11R6.4を統合している。次世代XFree86 Acceleration Architecture(XAA)のサポートや、新チップセット対応、OpenGL/Mesaのサポート、TrueTypeフォントのサポートなどが行なわれる。また、アーキテクチャーを変え、サーバーバイナリーが単一のものとなり、コアのサーバー以外はモジュール化するという。

Dirk Hohndel氏
Dirk Hohndel氏



同氏は「開発チームのメンバーは、個々の細かい目的は異なるが、Xの開発という大きな共通の目的をもって仕事をしている。オープンソースは、OSやインフラ開発にいい方法。問題が生じたときに誰でも解決できるのはいいことだ。企業にとっては、例えば競争相手に自分たちのシステム内容を知られてしまうという懸念もあるだろうが、それを上回るオープンソースの数々の利点を企業に説明することが重要だ」と語った。

特別講演会場には、150人ほどの来場者が詰めかけた
特別講演会場には、150人ほどの来場者が詰めかけた



午後からは、Linux関連製品メーカーの担当者による各社の取り組みや、事例などを紹介するセミナーが行なわれた。

東京大学大学院の大谷卓史氏による“Linuxと知的所有権”では、著作権やソフトウェアの知的所有権などについて説明された。「オープンソースの定義は、ソースコードを含むプログラムを自由に修正、再配布してよい、再配布や利用に当たって制限を設けてはならないといったもの。オープンソースは著作権を放棄していない」



「オープンソースをビジネスとする場合、コアとなる技術はオープンなので、付加価値やサポートを販売してビジネスを行なうことになる。従来よりカスタマイズや保守サポートなど製品に付加価値をつけてきた日本のソフトウェア産業にとっては、比較的なじみのあるビジネスモデルと言えるだろう。Linuxビジネスに必要なものはブランドの確立。ユーザーの信頼を勝ち取るかがポイントだ。ライセンスは製品の独占権を守るものではなく、企業はタダ乗りは不可能、結局自力でがんばるしかないだろう」

(株)ナムコの第一開発部門は、同社のディスクレスLinux環境の事例について紹介した。

「ビデオゲーム開発を、ネットワークを利用したHDDのないLinux環境で構築している。もともとは、ディスクレスのHP-UXを使っていたのだが、HP-UXがバージョン11.0になってディスクレスシステムがサポートされなくなってしまったことと、PlaySation2の開発環境がLinuxになったことから、ディスクレスLinuxの導入に踏み切った。インフラは既存のままで、HP-UXとLinuxのクラスターサーバーを共存させた。システム運用には、PlayStation2の開発ツールがredhat 5.2対応のため、安定した日本語環境として定評のあるVine Linuxを採用した」



「無停止運転が基本なので、使用するPCのパーツも安定性、入手の容易さなどを考慮し厳選した。特に重要なNICとスイッチングハブは、100BASE-TXの全二重で確実に操作することが必須条件。また、エンドユーザーのソフトウェア管理に、ソフトウェアパッケージ管理ツール『RPM(RedHat Package Manager)』を採用した。これによりわれわれ管理者側はユーザー側のソフトウェア間の依存関係を正しく保つことが可能となり、インストール/アンインストール、更新などの作業が容易になった」

「ディスクレスLinuxを導入しなければ、“(現体制+HP-UXとLinuxの管理者)×プロジェクト数”の人件費がかかったはずだが、導入したおかげで現体制のままとなり、大幅な人件費増加の危機を回避できたと思う。また、一元管理により、複数のエンドユーザーが同じデータを共有できるメリットは大きい。アプリケーションの速度は、ローカルのHDDで動作するより若干を遅めだが、気になるレベルではなく、使用用途としてはまったく問題ない」

“Linux Conference '99”は17日と18日に開催。18日は、Linux関連プロジェクトなど、現在のLinuxに関わる技術的な話題を中心とした“テクニカルカンファレンス”が行なわれる。また、来場できないユーザーのために、各セッションをインターネットで中継、RealPlayer 5.0以上で閲覧できる。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン