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電子政府とはいったい何か?――“電子政府確立への最新事情”より(前編)

1999年12月16日 00時00分更新

文● 福冨忠和

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9日、東京国際フォーラムにおいて、日本経済新聞電子メディア局と(社)行政情報システム研究所の共催による“電子政府確立への最新事情”というセミナーが開催された。本稿では、イベントイの概要を紹介する。

行政の情報化への取り組み姿勢を表明する“電子政府”

“電子政府”という言葉には、どこかサイバーパンクSFのようなコンピューターが支配する国家のイメージもあり、聞き慣れないうちは尋常ではない印象を与えるかもしれない。だが、国内のインターネット人口が2000万人に届こうとする中、広く民間に普及したネットワークとコンピューターに、行政も対応せざるを得ないという背景があり、“電子政府”という言葉はいわば、こうした行政の情報化への取り組み姿勢を表明したものだ。

国内では、'95年の“行政情報化推進基本計画”において、LAN接続されたパソコンの1人1台体制と、省庁間ネットワークの整備が表明され、以後推進されてきた。'98年の同計画の改定では、21世紀の初頭に“電子政府の実現”を目指すことがうたわれた。具体的には2003年までに重点的な技術開発を行ない、電子政府の基盤を構築する、としている。

しかし、この“電子政府”という概念は、もともと米国クリントン政権のNII(全米情報基盤整備)、情報スーパーハイウェー、GII(地球情報基盤整備)などの目玉政策をうけて、政権第2期の'97年の7月に“グローバルフレームワーク”の中ではじめて登場したものである。

実際には、英語でいう“Electronic Governance(電子統治)”にある、国民とのインタラクティビティーを含む微妙なニュアンスが、日本政府のいう“Electronic Government(電子政府)”と若干異なっている点も気にならないではない。

WTOシアトル会議の交渉決裂で、基調講演は中止

米国では政府機関の情報化やEC対応政策に並行して、日本の情報公開法にあたるFOIA(情報自由法)が、EFOIA(電子情報自由法)として、政府文書の電子テキストによる公開をいち早く義務づけたことや、政府が保有する個人情報の扱いをめぐるプライバシー保護と、認証や通信の秘匿に必要な暗号技術を規制することなどに関して、議会、市民を交えての熱い議論が継続している。この点で日本での“電子政府”の動向とは、周辺の様相もかなり異なっている。

そういう意味で、“電子政府”を推進するホワイトハウスから、ECワーキンググループのシニアアドバイザー、ロン・カハーン氏が来日し、基調講演を行なうことへの期待は大きかった。しかし、前日までのWTOシアトル会議の交渉決裂をうけた政府の国外渡航禁止措置により、本人が急遽来日できなくなるという事態が発生。セミナーは基調講演を欠いたまま行なわれることになった。

このほかの講演と講演者は以下の通り。

・特別講演“日本における電子政府の実現にむけて”(東京工業大学工学部付属情報工学研究施設教授 大山永昭氏)
・セッション1“行政情報化の現状と課題”(行政情報システム研究所 理事長 百崎英氏)
・セッション2“情報化政策と電子政府への取組み”(通産省機械情報産業局 情報経済室長 木村雅昭氏)
・セッション3“東芝が提案する電子政府ソリューションについて”(東芝 情報・社会システム社 官公システム事業部官公情報システム技術第一部長 江口喜己男氏)
・セッション4“商業登記所における電子認証事務について”(法務省 民事局第四補佐官 太田健治氏)
・セッション5“諸外国におけるSunの電子政府システム事例”
(サン・マイクロシステムズ コンピュータシステムズ国際マーケット開発担当マネージャー スティーブン・G・ハフ氏)
・セッション6“電子政府に対するデータベースシステムの要件”(日本オラクル マーケティング統括本部システム製品統括部 バイスプレジデント 佐藤聡俊氏)
・セッション7“電子政府の実現に期待すること”(衆議院議員 谷垣禎一)

また、講演にあわせ、展示・デモンストレーションも行なわれた。出展製品には、電子申請・届出システム、電子審査システム、電子印紙システム、情報公開対応行政文書管理システム、電子調達システム(建設CALS)、電子納品システム、間接材電子調達システム、位置情報システム、電子認証局サービス、情報提供システム、情報提供システム(道の駅)、経済白書DVD、リモート監視システム、アウトソーシングサービスなどがあった。

東芝のブース。情報提供システム(道の駅)東芝のブース。情報提供システム(道の駅)



東芝のブース。リモート監視システム
東芝のブース。リモート監視システム



 東芝のブース。電子申請・届出システム
東芝のブース。電子申請・届出システム



講演内容の詳細は“電子政府確立への最新事情”(後編)で紹介する。

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