このページの本文へ

【Internet World Japan'99 レポート Vol.4】「ユーザーの幸せなくして成功はありえない」--“渋谷系”ネットベンチャー経営者が夢を語り合うパネルセッション

1999年12月09日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

“Internet World Japan'99”では、若手ネットベンチャー経営者4人によるパネルセッションが行なわれた。テーマは“Japan.com 日本のネットビジネスの胎動”。米国では株式公開で一挙に大富豪になるベンチャーも続出しているが、「ユーザーの幸せを優先しつつ、グローバルな視野も持つべき」などと成功の秘けつを語り合った。



パネルセッションを企画したのは、起業家や学生、ベンチャーキャピタルなど、ベンチャー企業に関わる人たちで作るBit Valley Association。東京・渋谷を中心としたデジタル関係者のコミュニティー“ビットバレー”の活性化を目的として発足した非営利団体で、ベンチャーの立ち上げと投資家の呼び込みを図ってさまざまな活動を展開している。

パネルセッションに参加したのは、(株)コミュニケーションオンラインとインターネットコム(株)代表取締役の小林祐介氏、(株)ジョブウェブジャパンCEOの佐藤孝治氏、トライコーン(株)代表取締役の波木井卓氏。またBit Valley Associationディレクターで、eグループ(株)取締役の松山太河氏がコーディネーターを務めた。

小林祐介氏(左)と佐藤孝治氏
小林祐介氏(左)と佐藤孝治氏



セッションではまず、出席者が各自の事業を紹介した。小林氏は無料ホームページ提供サイト“クールオンライン”と、インターネットニュースサイト“Internet.com”を運営している。佐藤氏は就職活動専門のメーリングリスト“JobWeb”を運営しており、きっかけは「自分が就職活動中にメーリングリストを使ったら面白かったから」だという。

波木井氏は新着サイトのURLをメールマガジンで提供する“ファーストニューズ”を発行し、部数は6万4000部。オンラインショッピングサイトも手掛けている。松山氏は現在、無料メーリングリスト開設サービス“eグループ”に関わっている。4人とも20歳代ながら、ネットベンチャーの第一線で活躍する経営者だ。

波木井氏(左)と松山氏
波木井氏(左)と松山氏



事業拡大と成功を求め、ベンチャーが夢見るのが株式の公開だ。「今の日本の状況はやや過熱気味だが、資金循環という視点で見ると、株式公開で大金持ちが生まれるのは悪くない」(小林氏)と、各出席者とも自社の株式を公開する方針は持っている。その一方で、「公開した後に、何十億何百億と資金が入ってきたとしても、その後どんなビジネスプランがあるのだろうかと社内で議論になった。今は注目されて浮かれ気分でいるけれど、必ずしも株式公開すればいいのかは疑問、という状況になっている」(波木井氏)との声も出た。

それに対し、松山氏は「インターネットサービスでは、ユーザーが会社の所有者となるべき。株式公開は短期の資金注入ではなく、会社をパブリックにしてユーザーに公開していくという面もある」とネットビジネスならではの意見を述べた。

議論はネットビジネスの成功の秘けつに及んだ。松山氏は「成功している人を見ると、仕事仲間ときちんと精神的なパートナーシップを結んでいる。大企業の人と会うと、『君ら外注ね』という意識で、それではパートナーシップは築けない。米国ではMBAを取った若者がベンチャーキャピタルにアイデアを売り込んで成功する、といったパターンが多いが、日本の場合はユーザーに奉仕するボランティアに近い人が成功している。資金調達の方法の違いが理由だろうが、ユーザーの幸せを最優先し、ユーザーに経営者が支えられる、といった関係が必要だ」と語った。

これに対し佐藤氏は、「他の社員が会社作りに苦労していたころ、私は全国を飛び回って、メーリングリストに参加している学生たちと酒を飲んでばかりいた。集まった学生と飲み明かし、『JobWebのおかげで助かっている』と応援されて元気をもらった。サーバーがダウンした時、カンパが30万円も集まって新しく1台購入したこともあった」とのエピソードを披露。インターネットビジネスの場合、ユーザーとの良好な関係作りが必要との認識で意見は一致した。

最後に松山氏は、「資金も十分に増え、国民の教育水準も高く、日本のネットビジネスはきっと大丈夫だとはいえる。しかし世界には電話を1度も使わないで死んでいく人がいる。そんな人たちのために何ができるのか。世界全体が幸せになることを視野に入れれば、ビジネスもグローバルになる。世界のどこへ行っても通用するようなサービスになるだろう」と語り、国境を越えるインターネットならではの新しいビジネススタイルを提唱して締め括った。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン