【京都合宿セミナー Vol.2】米国のベンチャーにおける、成功するための8つの秘訣――“情報革命の衝撃:台頭する21世紀型ベンチャーとNPO”より
1999年12月09日 00時00分更新
3日、京都を舞台になんともユニークなセミナーが開催された。タイトルは、“情報革命の衝撃:台頭する21世紀型ベンチャーとNPO”。NPO研究フォーラム、関西ベンチャービジネス研究会、日本サスティナブルコミュニティセンターという、3つの団体がほとんど横並びで共催、運営している。そういうスタイルも珍しいが、なんといっても会場に使われているのが京都の本願寺で、しかも合宿形式で朝まで続くというのである。本稿では、3日、京都を舞台に開催された京都合宿セミナー“情報革命の衝撃:台頭する21世紀型ベンチャーとNPO”で行なわれた講演内容を紹介していく。
会場には軽く100名を越える参加者が集まった |
会場提供と一部進行の部分でも本願寺が協力してくれた |
第一部の司会進行役をつとめるのは現役の立命館大学生。その他にも運営スタッフには現役大学生が多く関わっていた |
まずは、初日のオープニングに行なわれたシリコンバレー在住のベンチャーコンサルタント、山本貴士氏による、アメリカのベンチャービジネス事情報告を中心とした“台頭する21世紀ベンチャーとNPO”を紹介する。
グローバル化で変わる価値観。時代に自分の価値を合わせていく
シリコンバレー在住のベンチャーコンサルタント、山本氏 |
「シュンペーターという人物は、資本主義の経済原動力がイノベーション(技術)にあるとしています。現代においてイノベーションは大企業組織体が推進しているという錯覚があります。しかし、実際は零細企業組織体、あるいは個人から生まれるアイデアのほうが重要なのです。しかも、その中心には卵の黄身のように、黄色人種が中心にいることをご存知の方は少ないようです。たとえば、アメリカでは見えないところで小さなエンジニアリングが動いていますが、その根っこは台湾にあったりします」
「これから大切なのは、グローバル化によって本当に価値観が変わっていくということ。たとえば、Linuxのようなオープンソースが受け入れられるようになったのは、これまでの資本主義経済からは考えにくい現象と言えます。また、名誉のために働くというボランティアパワーに従来の企業形態では勝てません。ではどうするかといえば、そうした人達が力を発揮できるような環境を築いていくことが必要なのです。また、逆に変化していく環境に対応することも必要です。そのポイントは3つあり、1つは能動的になること、2つ目は他意にうまくのること、そして3つ目はタイミングです。つまりは、時代に自分の価値を合わせていくということです」
Eビジネスを自分でするか、でき上がったEビジネスに乗るか
「新しいこと始める場合、必要なのはバランス感覚を持つことです。ベンチャーで失敗するのは、あるビジネスモデルを作った後に利益を守るため、参入を拒否してしまうことです。こうした態度が社会的な反発につながり、最後は市場破壊に至ってしまうのです。先行者のエゴを捨てることも成功への道なのです」「いま、世界中で新しい技術が次々と生まれています。守秘義務の関係で詳しくはご紹介できませんが、ネットワークプリンティングの新しい技術や携帯電話、そうした身近な技術が大きな変革を起こしていくでしょう。そうした新しい産業が登場した時に見極めなければならないのが、Eビジネスを自分でするのか、でき上がったEビジネスの周辺でビジネスをしていくのかという点です」
「たとえば、画期的な医療検査機械が開発された場合、その機械を売ることはできませんが、検査で使う試薬を売ることはできます。結果的にはそのほうが儲かるのです。ソニーがAV機器のほとんどをメモリースティック対応にして、他社へも技術供給を始めたのもこのあたりにヒントがあるのです」
Know HowよりもKnow Who
最後に、山本氏は米国のベンチャーにおける、以下のような8つの秘訣を紹介した。1.何事も失敗を恐れぬこと
2.常に新しいアイデアを軽視しないこと
3.自分の独走品や技術を市場独占につなげること
4.会社経営は永続性よりキャッシュアウト(EXIT)体質にして資産を共有すること
5.人員配置は重点主義でいくこと
6.優秀かつ必要な人材と常にコンタクトすること
7.IPOの時にはお世話になった人達へのお礼を忘れないこと
8.IPO以外にも大企業への売却への道は残しておくこと
「一部、矛盾すると感じられることもあるかもしれませんが、これが私がシリコンバレーをはじめとして、ベンチャーの方々とおつきあいして得られたものです。最後に、これが1番大切だと思うのですが、これからはKnow HowよりもKnow Who、つまり、人脈を広く持つほうが重要になっていきます。ここでの出会いがまさしくそうで、第二部のディスカッションにも期待しています」と、人脈の重要性について語り、話を締めくくった。
第一部終了後は会場を宿泊施設に移して、NPO、経営戦略、キャピタル、ベンチャーというそれぞれのテーマが付けられた部屋ごとでひざ詰めディスカッションが、まさしく朝まで続けられた |