シトリックス、iForum'99 Japanを開催--あらゆるクライアントからあらゆるアプリを利用する“Digital Independence”をアピール
1999年12月09日 00時00分更新
シトリックス・システムズ・ジャパン(株)は、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜において、“iForum'99
Japan”を開催した。このフォーラムは、シトリックス製品のユーザーや同社のパートナー企業を対象に、“Server-based
Computing”を中心とした同社の製品や戦略を紹介するというもの。9月には米国のオーランドで“Citrix
iForum'99”が開催されており、今回の開催はその日本版にあたる。
キーワードは“Digital Independence”
iForum'99 Japanでは、“Digital Independence”という言葉がキーワードとして紹介された。これは、旧来の複雑で制約の多いコンピューティング環境からの独立(Independence)を意味するもの。具体的には、あらゆるデバイスやサーバーからネットワークを通じてアプリケーションにアクセスし、ユーザーが自由に利用できるようにするというものだ。いわゆる“レガシーフリー”のコンセプトと通じるものがある。会場では、ロゴマークとともに“Digital Independence”の言葉が紹介されていた |
Digital Independenceは、9月のCitrix iForum'99において、同社社長兼CEOのマーク・テンプルトン(Mark
Templeton)氏が紹介したコンセプト。同社が提唱するServer-based Computingの核ともいえるもので、最近よく耳にするようになったASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)にも求められるものだ。
Server-based Computingは、クライアント/サーバー型の環境を、単一のサーバーで一元的に管理するというもの。クライアント側のOSやアーキテクチャーに関わらず、同一のアプリケーションをネットワーク越しに利用できるというもので、まさしくDigital
Independenceの本質に沿ったコンセプトだといえる。
クライアント/サーバー環境の核となる“ICA”
今回のフォーラムには米国本社から会長や副社長が来日し、同社の戦略や今後の見通しについて講演を行なった。基調講演に登壇したのは、米シトリックス・システムズ社の会長兼最高技術責任者(CTO)を務めるエドワード・ヤコブッチ(Edward Iacobucci)氏。シトリックスの創立者で、Server-based Computing推進の立役者でもあるヤコブッチ氏は、“新世代のコンピューティング環境とは?”と題した講演を行なった。
米シトリックス・システムズ社の創立者で現会長のエドワード・ヤコブッチ氏 |
ヤコブッチ氏の講演は、やはり“Digital Independence”に力点を置いたもの。なかでも、同社の“ICA”技術と、ASPについて多くを語った。
ICA(Independent Computing Architecture)とは、Windowsに対応したプロトコルの一種。Windows対応アプリケーションをクライアント上で利用するためのプロトコルで、アプリケーション自体はサーバー上で実行される。言いかえれば、アプリケーションのインターフェースだけをクライアントに表示させる機能を持つ。
ICAは同社の『MetaFrame』や『WinFrame』に実装されているほか、シンクライアント製品を開発するベンダー100社以上にOEM供与されているという。現在、ICAの利用ライセンスは全世界で1500万ライセンス以上に及び、全米トップ100企業のうち、99社で採用されているとのことだ。
また、ヤコブッチ氏はICAの機能をワンチップに搭載した“ICA on Chip”について言及し、今後はICA
on Chipの普及を推進する方針を表明した。
iForum'99 Japanの基調講演は、パシフィコ横浜の国立大ホールで開催、多くの聴衆を集めていた |
ASPについては、ISP(インターネット接続業者)との違いについて説明し、今後急進する分野であると紹介。また、サービスの提供に関してはISP経由の接続ばかりでなく、CATV業者や移動体通信業者も参入してくるという見通しを語った。
同社のASP分野に対する関わりについては、“アプリケーション・サーバー・コンピューティング”の分野にフォーカスするとし、ASPを提供するサーバー製品を中心に展開すると述べた。
最後にヤコブッチ氏は、“Welcome to the Edge of Digital Independence”という言葉を紹介し、同社のDigital
Independenceを改めて強調して、講演を締めくくった。
今後はサーバー利用ライセンスの分野が成長
続いて登壇したのは、米シトリックス・システムズ社でワールドワイドセールス担当の上級副社長を務めるデイビッド・ジョーンズ(David Jones)氏。“シトリック社の現状と今後”と題し、同社の概要を紹介した。米シトリックス・システムズ社上級副社長のデイビッド・ジョーンズ氏 |
ジョーンズ氏はまずICAについて触れ、ICA環境を導入することで、より簡便なIT環境や、低額で予測可能なコスト削減が実現できるというメリットについて語った。
シトリック社のビジネスモデルについては、代理店などを通じたチャンネルセールスが全体の80パーセントを占めるという現状を紹介。また、これから伸びる分野として、ASPと並んでエンタープライズセールス分野を挙げた。これは大企業への直販のことで、なかでもサーバー製品の利用契約を結ぶ“ELA(エンタープライズ・ライセンス・アグリーメント)”が急進するという見通しについて言及した。
この見通しについてジョーンズ氏は、最近の企業はサーバーやソフトを自社で購入したがらない傾向にあると指摘。ELAやASPのようなライセンス契約が市場で求められていると語り、すでにアーサー・アンダーセンやプライス・ウォーターハウスといった大手会計事務所とELAを結んでいることを紹介した。
製品の変遷については、'96年ごろまでは1台のサーバーだけを導入する企業が多かったが、'98年までにはマルチプルサーバーが多くなり、現在では並列分散処理を行なうエンタープライズレベルでの製品が主流になっていると指摘。今後はASPを利用する企業が増えるほか、世界中のサーバーを接続するグローバルなサーバー環境が普及するという見通しを見せた。
そのASPについては、2003年までに市場が220億ドル(約2兆3000億円)レベルにまで成長するという予測を紹介。米国だけでも'98年から2000年までの3年間で市場が20倍以上に拡大するとし、同社にとって大きなチャンスであると強調した。
2000年に向けての展望としては、アプリケーションをインターネット越しに提供する“Webification”を強化していくという。また、現在はWindowsアプリケーションに特化した同社のサービスを他のアプリケーションにも拡大しつつ、マイクロソフトとの関係も深めていくと語った。
講演の最後には、日本市場が同社にとっての第3フェーズであると指摘。英米などの英語圏では過去2~3年に、独仏などヨーロッパの非英語圏では過去12~18ヵ月にシトリックスの業績が急成長したとし、それらの第1・第2フェーズに続く成長が、日本市場で見こまれると期待を込めて語った。そして、同社の“Server-based
Computing”を、より広く日本に紹介していきたいとの意気込みを見せた。
ASPが実現する“国境なきネットワーク”
ジョーンズ氏の講演の途中には、米シトリックス・システムズ社の社長兼CEOであるマーク・テンプルトン(Mark B. Templeton)氏が、聴衆にビデオメッセージを送るという場面もあった。米シトリックス・システムズ社のマーク・テンプルトン社長兼CEOはビデオで出演 |
テンプルトン社長は、富士通やNECといった社名を挙げて日本市場との強い結びつきをアピール。同社の製品が広く利用されていることについて語り、その上で同社の提供するICA環境が、世界中からの柔軟なアクセスを可能にする初めてのものであると強調した。また、2000年初頭には来日するという予定を示し、各ユーザーやパートナーとの対面を楽しみにしていると語った。
講演の合間には、シトリックス・システムズ・ジャパンの田中正利社長がステージに立ち講演者の補足を行なうなど、シトリックスの概要についてきめ細かい説明を行なった。
シトリックス・システムズ・ジャパン(株)の代表取締役を務める田中正利氏 |
田中氏は、11月1日に発足したASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパンにおいて専務理事を務めており、日本におけるASPの推進役的な存在だ。その田中氏は、「“Server-based
Computing”とASPが立ち上がると、国境のないネットワークができあがる」と指摘。これは、IT関連企業がサービスを提供するにあたって国境がなくなることを意味し、競争力のある企業が世界的にマーケットを握ることとなる。
その状況を田中氏は歓迎しつつも、「日本の企業は頑張らなくてはならない」と語り、国境なき市場に進出するための製品と技術をシトリックスが提供するとアピールした。