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【Content Janan1999 Vol.3】データ放送を見るとスポンサーの広告がつぶれてしまう――セミナープログラム“デジタル放送とコンテンツ”より(下)

1999年12月07日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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1日から3日まで、東京・北青山のTEPIAにおいて、(財)マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)の主催により“Content Janan1999”が開催された。本稿では、3日に行なわれたセミナープログラム“デジタル放送とコンテンツ”の模様の後編を報告する。

メディアに見合うだけのコンテンツがないという現状

フジテレビ技術本部の上瀬氏は、本当に儲かるコンテンツがあるのか? という観点からデジタル放送時代の問題点を民間放送の立場から語った。

フジテレビ技術本部の上瀬氏。デジタル放送時代に向け、その問題点を指摘
フジテレビ技術本部の上瀬氏。デジタル放送時代に向け、その問題点を指摘



まず上瀬氏は、デジタル放送時代に向け、放送メディアはたくさんあるが、メディアに見合うだけのコンテンツがないという問題点を指摘。

「番組の2次、3次利用が必要になってくる」と提言し、デジタル放送時代の映像コンテンツの条件として、「とにかく面白いものでなければならない」ことを強調した。

実際に、CSなどの専門放送では、多チャンネル化によるコンテンツ不足で苦しい状況にあり、懐かしのヒット番組などを流す放送局が多いという現状がある。

データ放送を見ると、スポンサーの広告がつぶれてしまう

デジタル化による機能の向上という点に関しては、付加価値のある番組や、インタラクティブTV、EC(エレクトロニックコマース)の分野がある、とした。

現在、フジテレビは、データ放送サービスとして“ビットキャスト”を開始している。データ放送の問題点には、視聴者がデータ放送を見ると、スポンサーの広告がつぶれてしまうというデメリットがある。また、インタラクティブTVでは、リンクを張ると、視聴者が番組の外へ出てしまうので、また必ず元の番組へ戻るような仕組みを考えなければならないと考えている。

EC については、TVショッピングなどが考えられるが、有形のもの(物品)は、返品に対応できるような流通システムを確立していないとうまくいかない。また、無形のもの(デジタルデータなど)でも、今のところ課金システムが面倒で、お金が掛かるといった障壁があると指摘した。

デジタル放送によって、テレビは多機能化し、利用者側では便利になるが、放送事業者の立場では、実際に儲かるようなビジネスにすぐにはつながらない、というのがどの民放も本音のようである。

ホームサーバーテレビの分野にもスポンサーが乗り込む

デジタル放送時代では、コンテンツだけでなく、メディア自体も変化してきている。テレビというメディアだけでなく、TiVOやReplay Networksのような、テレビ放送をHDDで自由に録画できるセットトップボックスも登場した。ユーザ側から見れば、テレビとインターネットの間の境界線はどんどん意味を失いつつある。

上瀬氏はこの点について、「将来は、パソコンが、iモードのような携帯電話や、簡易動画を流せるIMT2000、ホームサーバーテレビへと移行していくのではないか」と予測、「デジタル化により広告形態も変化し、このようなホームサーバーテレビの分野にもスポンサーが乗り込んでくるだろう」と述べ、講演を終えた。

地上波デジタルのメディア展開は、メディアの統合力を発揮した売り方で

最後のディスカッションでは、BSデジタル放送と地上波デジタル放送の相違について、コーディネーターの為ヶ谷氏から質問があった。

上瀬氏は、「現段階ではまったく予想がつかない。サービスが始まった段階で徐々に分かってくるのでは?」と答えた。日本の地上放送では年間5万本もの番組が制作されているが、1度放送したらお蔵入りになっているものがたくさんある。

地上波デジタルのメディア展開としては、「2次3次利用が必要になってくる。たとえば、映画に使ったり、DVDに使ったりというように、メディアの統合力を発揮した売り方をしていかなければならないだろう」とした。

また、ローカルサービスはどうなるのか? という質問に対しては、より密接な地域情報サービスが必要になるという。上瀬氏は、さらにもっとローカルな“超ローカル”番組があってもいいのではないか? と考えている。たとえば、ある地域の学校の運動会が雨で中止になりました、といった木目細かなサービスが必要になってくるだろうという。この点については、福井氏も同じ意見だった。

フジテレビ技術本部の上瀬氏(左)とNHK放送技術研究所の福井氏(右)
フジテレビ技術本部の上瀬氏(左)とNHK放送技術研究所の福井氏(右)

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