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【伊藤博の米国Eコマース企業訪問記 Vol.3】あるものを勧めるのがカタログ通販、ないものを探すのがインターネット通販--バーゲンアメリカ

1999年12月06日 00時00分更新

文● スユアデジタルパブリッシング研究会、有限会社スユア代表  伊藤博

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EC研究会とスユアDP研究会は、サンノゼのビジネスカフェ・インク、奥山氏らの協力のもと、11月中旬、合同で、米国のベンチャー企業への交流訪問を実施した。スユアDP研究会代表の伊藤博氏が、3回に渡って、その模様を報告する。第3回の本稿は、オンラインショッピング事業を営むバーゲンアメリカについて。代表者のトム・佐藤氏は、現在日本に在住し、米国で会社を経営している。

晩秋でも緑したたるシリコンバレー
晩秋でも緑したたるシリコンバレー



日本にいながら米国でオンラインショッピング事業

トム・佐藤氏は現在日本に在住し、米国で会社を経営している。今回、たまたま帰米中とのことで我々を迎えてくれた。バーゲンアメリカは、米国の通信販売会社やオンラインショップと契約しているショッピングモール、Eコマースサイトによるオンラインショッピング事業を主な業務としている。

同社では、電子メールマガジン、『バーゲンアメリカ・マガジン』を発行している。現在、10万人の読者を擁する媒体に成長させた。バーゲンアメリカのオンラインショッピング事業の広告および販売促進媒体として大きな力を発揮している。

バーゲンアメリカの社屋
バーゲンアメリカの社屋



同社の主催する“e-shop”は、次の3つのカテゴリーで構成されている。

第1が、サプリメント、すなわち、健康補助食品である。

第2が、スキンケア関連である。化粧品、話題の発毛剤もこの中にある。

第3が、音楽CDの『music.bamerica.com』である。30万件のデータベースを備える。顧客は米国人中心である。

米国郵便局とタイアップし、低コストで“ドア・トゥー・ドア”を実現している。当初は、サイバーモール型のビジネスだったが、そこから、直販あるいは販売代行へ転換中である。

理由の第1は、モールではモール全体の売り上げは上がるが、1店舗当たりの売り上げに限りがあること。出店側の期待に答えられないのだという。また、第2には、売って欲しいとの売り込みも多く、自社のマーケティングサイトに発展させたいからである。

電子メールマガジンが原動力

力を入れているのは、ショッピングガイドとなる電子メールマガジン『バーゲンアメリカ・マガジン』である。バーゲン情報やトレンド情報を、週刊で配信している。読者は無料で、ウェブページから登録できる。ニュースは追わず、読み物中心で構成している。

自社媒体である『バーゲンアメリカ・マガジン』中の商品広告からのレスポンス率は高く、リピート率も高い。コンテンツにはお金を掛けている。専門のライターに執筆を依頼している。また、専任編集者が4名、総勢30名という体制である。10月からは、こうした経験を生かして、ミュージック、ライフ、グルメ、ソフトウェア、SOHOなど多彩なテーマのメールマガジンを創刊し始めた。

インタビューに応じるバーゲンアメリカの佐藤社長(左)
インタビューに応じるバーゲンアメリカの佐藤社長(左)



従来から実施している“ジャパン・カタログ・エクスプレス”と、“カタログ・リクエスト・システム”の事業も継続しているが、インターネットでのオンラインショッピングに比重が移っているようだ。“ジャパン・カタログ・エクスプレス”は、従来から紹介していた米国の通信販売会社のカタログに関するサービス。カタログの請求を、ウェブページで受け付て代行発送し、平均4日で届ける。“カタログ・リクエスト・システム”は、複数の通信販売会社に、直接、カタログが請求できるシステムである。

現在の月商は1億円近く。日米で半々くらいで、好景気のため、米国分が伸びている。バーゲンアメリカの在庫は少ない。ジャスト・イン・タイムの仕入れを行なっているからである。社員は20名である。増資を重ねているが、さらに、2000万ドルを予定している。資金の多くの部分が、Eコマースシステムやデータベース・マーケティング・システムに注ぎ込まれており、今後も必要になるからだ。NASDACへの株式公開を目指し、監査法人に依頼しているそうである。

“ある”で始まるカタログ通販、“ない”で始まるインターネット通販

佐藤氏のところには、日本の通信販売団体の視察も来ている。サンフランシスコでセミナーを行なったこともある。日本の通信販売専業会社のインターネットショップが成功しない理由について質問してみた。「インターネットで、顧客にとって利便性があるのは、ないものを探す検索機能である。一方、カタログ通販では、いいものを勧める。ここに、違いがある。この2つを一緒にしているのではないか。ダイレクトマーケティングという点で、カタログ通販とインターネット通販は同じに見えるが、実は同じではない」との答えだった。

バーゲンアメリカの佐藤社長(向かって左から3番目)と視察団。本稿の筆者の伊藤氏は、左から5番目
バーゲンアメリカの佐藤社長(向かって左から3番目)と視察団。本稿の筆者の伊藤氏は、左から5番目



日本での別の問題として、通信コストがある。常時接続通信料込みで50ドルという、米国並みのレベルが普及点といえる。手はいろいろありうるが、ケーブルTVなどに、もっと期待してもいいのではないかとのことである。

最後に、日本に住んでいながら、なぜ日本に会社を作らないのか聞いてみた。「日本法人を作ると、個人輸入による免税という当社のメリットがなくなり、差異化できなくなるから」との答えであった。

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