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「電話周りをIP網に統合してPBXをなくそう」--日本シスコの記者説明会から

1999年12月03日 00時00分更新

文● 編集部 中野潔

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日本シスコシステムズ(株)は、1日、東京都内で、プレス向け説明会を開催した。その内容を紹介する。データ通信、電話、ファクシミリ、ビデオ会議といった、パソコンおよびLANの系統と、電話機およびPBXの系統とに分かれていたアプリケーションが、IP(Internet Protocol)で統合されることを強調していた。

説明会は、以下の6つのセッションにより、構成された(講演者はすべて、日本シスコシステムズ(株)の社員)。(1)SMBマーケティング部、大西一朗部長による“SMBにおけるシスコ・ソリューション”、(2)ソリューションマーケティング部の篠浦文彦部長による“2000年のエンタープライズ環境”、(3)サービスプロパイダ・マーケティング部の木下剛部長による“New World Serviceの方向性”、(4)教育マーケティング本部の前田信一本部長による“シスコが提供するE-Learning Solution”、(5)ソリューションマーケティング部の西澤伸樹本部長による“ソリューション・マーケティングの展望”、(6)黒澤保樹社長による“2000年に向けてシスコのディレクション”--である。

Internet Protocolで電話、テレビ電話もコンピューターシステムに統合

(1)で大西氏は、セキュリティー対策の必要性とVPN(Virtual Private Network)について中心に説明した。大西氏によると、東京・渋谷区に本拠を置く中堅デザイン会社、A社のSMTPサーバーが、不法侵入にあった。ある土曜日と日曜日の2日間に、ベルギーを中心にした地域に(不法侵入者が)35万通のスパムメールを、A社を発信者として送出した。宛先不明で2万5000通のメールがA社に戻ってきた。このため、サーバーがダウンし、数日間に渡って業務停止。業務上のデータもかなりの程度、壊れてしまった。

米国での調査では、不法侵入などは、フォーチュン誌ランキングの上位500社の99パーセントが経験し、50パーセント以上が、財務上の損害を被っている。損失の総計は、年間50億ドルにのぼると推計されている。

大西氏は、こうした被害の大きさについて述べた後、シスコのファイヤウォール関連製品、VPN製品の意義、仕組み、セキュリティーの高さについて説明した。

(2)で篠浦氏は、現在、企業内の多くの業務が、コンピューター、LAN、IPの技術で構成された仕組みの中で、統合されていっているのに、電話、ファクシミリ、テレビ電話会議だけが別の体系になっていることの、不経済性を強調した。たとえば、席1つあたりのコストが、PBXでは、'95年から2001年に掛けて約700ドルでほとんど下がらないのに対し、10/100スイッチでは、'95年から2001年に掛けて約1000ドルから約150ドルに劇的に減少する('99年には約300ドル)。

シスコが9月に発表したコンセプト、“AVVIDアーキテクチャ”では、IP電話機、IPビデオ会議端末を採用して、これらのアプリケーションを、IP網に取り込む。PBXの役割は、IP PBXが担う。それにより、セキュリティー技術を組み込んだ形で、他のビジネスアプリケーションとダイナミックに連動させることができる。

文章メッセージ、音声メッセージ、ファクシミリメッセージを、ほぼ同じ形で扱い、一覧表示、検索/並べ替え、転送、返答なども同じ作法で指示できるユニファイドメッセージングが実現できる。また、メールアドレスと電話番号との2本立てでなく、IP上のユーザー名だけで宛先を指定することができ、受信者はIP網にログインしさえすれば、どこにいてもそれらのメッセージを受け取り、処理できる。

買収の連続で光通信技術を確立

(3)で、木下部長は、次世代IP網は第3世代である“インテリジェントインターネットワーキング”になると説明した。第1世代が、通常のインターネットである。ベストエフォート型であり、リアルタイムの音や画像のような緊急性を要するデータのパケットも、電子メールのパケットも、同じ優先度で送られる。第2世代では、サービス優先度という概念が導入される。第3世代では、サービス優先度の考えを推し進めて、仮想的には、そのときどきで専用線でつながれているように、利用できるようになる。

シスコでは、'99年8月にMontereyとCerentを買収し、光通信の技術を手に入れた。9月には、Cocom A/Sを買収してDAVIC関連の技術を、WebLineを買収して、インターネットをベースにしたコールセンターの技術を得た。これらにより、光通信分野に参入、来年もこの分野で積極的に撃って出る。

(4)で、前田本部長は、インターネットを用いた教育、“E-Learning”について説明した。今後、産業構造の変化により、IT(情報技術)の普及のために職を失う人が163万人いる一方、IT技術関連だけで249万人の求人が発生する。“E-Learning”により、職を失った人を、新しく雇われるタイプの人に換えていけるという。

シスコは自社内で、積極的に“E-Learning”を利用している。他社での導入例として、NTT-MEがあげられる。NTT内では、IP関連の技術を“E-Learning”をベースにして養成、他の企業や学生に対しても、この方式を提供している。11月末にパイロット段階の100名が課程を修了したが、CCNAと呼ぶ技術者試験に彼らの8割が合格した。来年当初から本格稼動するという。

大手電話機メーカーの機器をシスコ社内から2001年を目指して全廃の方向へ

(5)で、西澤本部長は、シスコの営業戦略およびソリューションのあり方の変化について述べた。単体の機器を売る形から、ソリューションを売る形に、さらに、コンサルティングしながら顧客企業と一緒にビジネスを組み立てる形に進んでいる。

顧客満足度をあげる仕掛けとして、コールセンターが注目されているが、シスコでは、音声および電話のネットワークと、コンピューターデータのネットワークを統合することに成功しているので(大手電話機メーカーの機器の廃棄がすでに始まっており、2001年あたりまでに全廃の方向で進める予定)、バーチャルコンタクトセンターが実現できるようになっている。

これは、ウェブでできるところはウェブで顧客の疑問に答え、必要に応じて、電子メール、電話、ファクシミリと、当意即妙で手段を組み合わせ、顧客に対応していくものである。

最後に、黒澤保樹社長が、今後のビジネスへの決意を露にした。

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