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【伊藤博の米国Eコマース企業訪問記 Vol.2】米国コンテンツを日本の流通へ“B to B”で取り次ぎ、日本のコンテンツを米国消費者に“B to C”で直販--スタンフォード・インターネット・ソリューションズ

1999年12月03日 00時00分更新

文● スユアデジタルパブリッシング研究会、有限会社スユア代表  伊藤博

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EC研究会とスユアDP研究会は、サンノゼのビジネスカフェ・インク、奥山氏らの協力のもと、11月中旬、合同で、米国のベンチャー企業への交流訪問を実施した。スユアDP研究会代表の伊藤博氏が、3回に渡って、その模様を報告する。第2回の本稿は、スタンフォード・インターネット・ソリューションズ社について。日本の流通と組み、インターネットで洋書とCDを販売している。

日本の流通を相手に、米国から日本へ“B to B”

スタンフォード・インターネット・ソリューションズ(SIS社)を訪問し、社長の杉本理氏に話を聞いた。

SIS社は、システムコンサルティングや開発支援もしているが、主な仕事は、日本への、洋書、雑誌の販売(仕入れ)取次業務である。この分野では、日本のデオデオや書店と提携している。最初はデオデオに、その後、三省堂および地方の有力書店(勝木書店、文苑堂、平安堂、駸々堂、東山堂、今井書店、ダイヤ書房など)に、卸した。日立製作所にも同様の取次業務を行なっている。月間の物流量が4トン以上あるため、輸送コストが低減され、それが他社との差異化ポイントになっている。

SISの社屋の前で。向かって右から3番目が杉本氏、同じく4番目が本稿の著者の伊藤氏。晩秋といいながら、カリフォルニアは暖かい
SISの社屋の前で。向かって右から3番目が杉本氏、同じく4番目が本稿の著者の伊藤氏。晩秋といいながら、カリフォルニアは暖かい



なぜ直販をしないのか、質問してみた。日本の洋書マーケット調査では、書店の外商が95パーセントのシェアを占有しており、個人客は5パーセントであることが分かった。このため、シェアの大きな“B to B(企業と企業との取引)”をビジネスにしようとしたという。当然でしょ? ということだった。

ほかにも理由がある。個人向け(“B to C”。企業と消費者との取引)の場合、顧客対応やフルフィルメントへの投資コストが大きくなる。ベンチャーには、このコストが響く。書店の顧客まで考えると、“B to B to C”スキーム(企業から流通企業を通して消費者へという枠組み)のデマンドチェーンということに違いはないだろう。

日本のコンテンツを米国で“B to C”で販売

一方、米国では、日本の書籍、雑誌や音楽CD、ビデオを、オンライン販売している。顧客サービスとして、新刊や新譜の情報なども発信している。米国では、紀伊国屋書店などが出店している日本人の多い大都市を除くと、日本の書籍、雑誌、CD、ビデオといった商品が手に入れにくい。そのため、米国側では、“B to C”の直販を始めたそうである。

顧客の内訳は、在米邦人が70パーセント、日本人以外が30パーセントである。日本人以外の顧客では、若いアジア系が多い。母数の大きさで考えれば、日本人以外の方が伸びが期待されるし、事実、その傾向であるという。

地域では、カリフォルニアが一番多い。次いで、ニューヨーク、ニュージャージー、テキサス、オハイオ、ネブラスカといった順になっている。音楽CD販売におけるMP3の影響について聞いたみた。同社のビジネスでは、まだ需要を満たしておらず、売り上げが伸びているため影響はないとの答えである。

SIS社の業務は、この他、多岐に渡っている。インターネット総合コンサルティングとして、データベースシステムの企画/提案/構築、業務システムの企画/提案/構築、SETによる決済システム構築、北米向けマーケティング、米国進出の際の援助、製品/技術動向の調査などである。

インターネットの利便性は“B to B”にあり

最後に、杉本氏にレクチャーしてもらったエレクトロニックコマース成功のポイントを列挙しておきたい。

(1)インターネットの利便性は、本当は“B to B”にある。供給先、卸(取次)、小売店の役割分担によるネットワーク型ビジネスの実現と“B to B to C”スキーム(国際間EC)である。

(2)ショッピングモールはやるな。デパートとショッピングモールとは違う。

(3)既存のインフラを軽視するな。

(4)セキュアな(安全性の高い)環境を安く作る。

(5)特殊な技術者の要らない環境を作る。

同社も増資をしてきたが、当初は個人投資家中心であった。金額が多くなってきてからは、企業からの出資が増えている。出資会社には、ソニーコミュニケーションネットワーク、デオデオ、アサツーDK、住友電工システムズ、クボタ、ベネッセコーポレーション、アコム、住友商事、トーメンなど大企業が名を連ねている。

インターネットビジネスの秘訣を列挙したホワイトボードの前で。向かって左から4番目が杉本氏、同じく3番目が本稿の著者の伊藤氏
インターネットビジネスの秘訣を列挙したホワイトボードの前で。向かって左から4番目が杉本氏、同じく3番目が本稿の著者の伊藤氏



ベンチャーキャピタルからの資本受入は考えていないそうだ。資金だけでなく、経営にも人を派遣されて自由が効かなくなるからというのが理由である。株式公開は現段階では難しいとのことである。

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