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「1MB当たり100円以下でなければ話にならない」――JEIDA“PCカードセミナー'99”でフラッシュメモリーカードをめぐり議論

1999年12月03日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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日本電子工業振興協会(JEIDA)は3日、都内で“PCカードセミナー'99”を開いた。セミナーでは、Bluetoothなど新技術の紹介のほか、デジタルカメラや携帯型音声ファイルプレーヤーの登場で出荷が大幅に伸びている小型メモリーカードについて各メーカーの担当者によるパネルディスカッションが行なわれた。出席者は、「MB当たり100円以下にならないと本格的な普及は難しいだろう」などと今後の展望と課題を議論した。

都内で開かれたPCカードセミナー'99
都内で開かれたPCカードセミナー'99



同協会が先月発表した、'99年度上半期におけるPCカード出荷実績によると、総出荷数は約800万枚、前年同期比90パーセント増と大幅に伸びた。中でもコンパクトフラッシュやスマートメディアといったフラッシュメモリーカードは、出荷枚数が254万枚と前年同期と比べ2.5倍と著しい伸びを見せている。今後も携帯用機器の伸びに伴い、PCカード全体の出荷も順調に伸び続けると予想されている。

セミナーではまず、同協会PCカード専門委員会委員長の坂本広幸氏があいさつ。「デジタルカメラの出現で小型メモリーカードの市場が拡大するなど、新たなニーズが生まれることでさらなる市場拡大が見込まれる。特に、次世代移動体通信や無線LANなど、ワイヤレス通信関連の製品が期待できる」と語った。

PCカード専門委員会委員長の坂本広幸氏 PCカード専門委員会委員長の坂本広幸氏



業界の期待感を反映し、セミナーでも小型メモリーカード関連に重点が置かれた。各メーカーの担当者が自社生産のメディアの利点をPR。メモリーカードの今後について語り合うパネルディスカッションも行なわれた。

パネルディスカッションの参加者。右から東芝の助川博氏、サンディスクの岡田浩人氏、ソニーの矢永雅治氏、コーディネーター役でTDKの坂内義明氏
パネルディスカッションの参加者。右から東芝の助川博氏、サンディスクの岡田浩人氏、ソニーの矢永雅治氏、コーディネーター役でTDKの坂内義明氏



(株)東芝の助川博氏はスマートメディアについて、「コントローラーを内蔵せず、最小限の構成による自由度の高い仕様になっている。カードにコントローラーを内蔵してしまうと、コントローラーの性能以上には能力を発揮できず、むしろ邪魔にすらなる」「カード自体にセキュリティー機能を持たせると、セキュリティー規格が変わった時にカードの規格も危機に陥る。スマートメディアなら柔軟な対応が可能」と自信を見せた。

それに対し、ソニー(株)の矢永雅治氏は「既存のメモリーカードを検討したが、デジタル時代のメディアとして将来も対応できるフォーマットとは思えなかったので、メモリースティックを開発した」「メモリースティックでは、音楽や静止画、動画などあらかじめフォーマットを定めている。内蔵コントローラーがあると可能性が広がる。単にNAND型のフラッシュメモリーを用意しただけでは我々が望んでいることは実現できない」「端子には絶対に手を触れることできないようにデザインした」などと“反撃”。

コンパクトフラッシュやマルチメディアカード、来年リリースされる予定のSDメモリーカードについても、大容量化や多用途性、著作権保護機能に優れている点がアピールされた。

右からインフィニオンテクノロジーズジャパン(元シーメンス半導体部門)の山内毅氏、松下電器産業の大木秀一氏、日立製作所の長瀬明氏
右からインフィニオンテクノロジーズジャパン(元シーメンス半導体部門)の山内毅氏、松下電器産業の大木秀一氏、日立製作所の長瀬明氏



その後行なわれたパネルディスカッションでは、メモリーカード普及の課題となる価格について議論が行なわれた。

(株)サンディスクの岡田浩人氏は「1MB当たり100円程度になる日はそう遠くない」との見方を示すと、(株)日立製作所の長瀬明氏は「1チップ当たりの容量が増えて、カード内のチップの数が減らないと価格は安くならない。1チップ当たりのコストはそう変わらないから、64MBが6400円になったとしても、8MBのカードが800円にはならない」とした。また「携帯オーディオのターゲットが中高生だとしたら、普及価格は64MBで6400円なのか、あるいは1000円なのか。ターゲットが決まらないと価格も決まってこない」(松下電器産業(株)の大木秀一氏)との声もあった。

ただ各担当者とも「64MBが数千円にならなければ話にならない」との認識では一致。価格を下げるためにも、メモリーカードを必要とする機器の開発・普及に力を注ぐとの意見でまとまった。

セミナーではこのほか、同協会と米PCMCIAが共同でまとめたPC Card Standard Release7の紹介や、デジタル機器を結ぶワイヤレス技術であるBluetoothの解説も行なわれた。

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