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アドビなどソフトメーカー7社、企業内不正コピーについて都内上場企業を提起

1999年12月02日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は2日、同団体会員企業7社がソフトの企業内での不正コピーについて、著作権法に基づく民事訴訟を東京地裁に提起したと発表した。原告7社は、米アドビシステムズ社、(株)インターコム、(株)ヴァル研究所、米オートデスク社、(株)ジャストシステム、米マイクロソフト社、米ロータス社。原告は著作権法21条複製権の侵害を根拠とし、損害賠償およびコピーソフトの破棄と使用の中止を求めている。ビジネスソフトの企業内における組織的な不正コピーという問題について、本訴で争うのは国内初という。

左から、吉岡讓治弁護士、前田哲男弁護士、野村吉太郎弁護士、ACCS専務理事の久保田裕氏
左から、吉岡讓治弁護士、前田哲男弁護士、野村吉太郎弁護士、ACCS専務理事の久保田裕氏



原告団は被告となる企業について、本社を東京に置き環境調査および環境アセスメントが事業内容で、東京で株式公開を行なっている企業と発表。その社名について公表しない方針を採っている。野村吉太郎弁護士は「原告側の狙いは著作権の侵害行為に対する責任の追及であり、この場で被告企業の社名を公表することは、その株価に影響を与えるかもしれないし、それは意図していることではない。被告企業の社会的責任が問われることに繋がるかどうかは、今後の展開次第ではないか」と語った。

今回の訴えは、被告企業内部の人間がACCSに情報を提供したことが契機となっている。被告企業は、社内で使用するソフトをある部署で一元管理を行ない、そこで少数の正規ソフトを購入。権利者の許諾を得ずにCD-ROMやMOを使ってそれを多量に複製し、全国23ヵ所の支社・事業所に配布、ハードディスクに複製させた後で再び回収していたという。

被告企業が認めた違法コピーのソフトは、アドビシステムズの『Photoshop 5.0』など原告団7社の11種で、違法コピーの本数は合計で約200本。原告7社は被告企業による不正コピーによって、「少なくとも1995万円の損害を被った」と主張。損害賠償の請求は2重の構成で行ない、趣意的請求は通常ライセンスの2倍相当額、予備的請求は調査などにかかった額相当としている。前者について、原告側は事後的に支払う金額は、2倍が正当と考えるという。

なお、被告側はコピー行為があったことは認めているという。野村弁護士は、本件の交渉の経過について「被告企業の言い分は、このようなものだ。違法行為の発覚後、そのコピーぶんに相当する本数のソフトは購入したから、侵害行為はなくなった。遅延損害金みたいなものは発生するかもしれない。それ以上のものについては、支払う必要がない--」と語った。通常、こうした企業内コピーが発覚した場合、権利者側とその企業で、話し合いを通じた解決が図られる。しかし今回の場合、被告企業に原告の権利を尊重する意志が見られなかったことから、提訴に踏み切ったという。今後、和解の可能性について、「相手方の対応を見ながら適宜対応していきたい」としている。

左からアドビシステムズ(株)、(株)インターコム、(株)ヴァル研究所の代表者。記者会見には、ロータスを除く原告企業6社の広報/法務などの担当者が出席した
左からアドビシステムズ(株)、(株)インターコム、(株)ヴァル研究所の代表者。記者会見には、ロータスを除く原告企業6社の広報/法務などの担当者が出席した



記者会見に出席した原告7社の代表は、それぞれ遺憾の意を表明。アドビシステムズ(株)の広報担当者は、「違法コピーは、開発する当社に甚大な被害を与えるだけでなく、エンドユーザーにもいずれ何らかの被害を与える。当社のソフトは、オリジナルの想像的デザインをしてもらうためのツールだけに残念」と語った。

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