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ODS、MAGIC、携帯コミュニティー――“ネットワーク社会とライフスタイルワークショップ”(中編)

1999年12月01日 00時00分更新

文● 船木万里

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11月30日、東京新宿の工学院大学において、“ネットワーク社会とライフスタイルワークショップ”と題した研究会会とライフスタイル時限研究専門委員会”。本稿では、午後に行なわれた招待講演の模様について報告する。

年齢によって利用形態が異なる携帯電話

まず“情報行動学からみた携帯電話―携帯コミュニティーの創造――”と題し、 東京経済大学の吉井博明氏から報告があった。

東京経済大学コミュニケーション学部教授の吉井氏東京経済大学コミュニケーション学部教授の吉井氏



携帯電話、PHSなどの利用による新たなコミュニケーションメディアの発展はめざましい。急速に携帯電話が普及し、利用形態も大きく変化している。吉井氏は、携帯電話の利用目的や通話時間などを年齢層別に集計し、その分析を行なっている。

最近の特徴としては、ビジネス利用からプライベート利用へのシフトが顕著である。現在、十代から二十代の若者では、携帯電話は必需品化し、所持していない方が少数派となっている。

若者の利用形態として特徴的なのは、日常的に親しい友人との通話が多く、通話時間も長いことだ。高齢者の利用目的は移動中の安否連絡や用件連絡など、短時間での基本的な利用が主な用途だが、若年齢になるにつれ、単なる暇つぶしなどの軽いおしゃべりでの利用が増える。特に長時間通話では、恋人や友人との疑似環境形成、すなわち“一緒にいるという擬似的環境の創造”が目的になる、と吉井氏はいう。

携帯電話コミュニティーと電子コミュニティーの相違

このような携帯電話の介在するコミュニティーでは、メディアを利用して人間関係を構築するというよりは、メディアに人間関係が依存するという逆転現象も起こっている。若年齢層では、これまでの人間関係の密度がますます高くなる場合と、交友関係が浅く広くなる場合の二極化が見られる。

携帯電話のメリットとしては全般的に、行動が自由になる、連絡がつけやすくなり、時間を有効利用できる、友人や恋人との結び付きが強化される、などと答えた人が多い。家族と同居している場合でも、遠慮せずいつでも掛けることができ、プライバシーが保護される利点も挙げられている。しかし一方では、不良グループからの脱出が困難になる、付き合いの過剰によってプライベートな時間を束縛される、などのデメリットも見られる。

特に仕事で利用している人の場合は、束縛感など、監視されている意識が強くなり、マイナスイメージが大きい。また、持っていないと不安になり、掛かってこないと落ちつかない、ケータイがないと友人を作れないなどといった携帯電話依存症も見られるようになってきている。

こうした携帯コミュニティーを、パソコン通信などによる電子コミュニティーと比較すると、その性質はかなり異なる。電子コミュニティーでは、日常的な親密度はあまりなく、限定された話題でのコミュニケーションが中心であるのに対し、携帯コミュニティーでは日常的にも親密度の高い関係を、より強化させるコミュニケーションとして位置づけられる。

今後さらなる調査を重ねることにより、このような友人ネットワークの動向を分析し、21世紀情報社会のコミュニケーションにおける端末の機能や役割について考えたい、と吉井氏は発表を結んだ。

21世紀のモバイル技術はサービス内容を重視

次に、NTT DoCoMoの無線ネットワーク開発部、田中利憲氏が“モバイルマルチメディアの技術動向”について発表した。先の吉井氏の講演もふまえ、携帯電話普及率の急速な発展、一般加入電話の普及率の推移について述べた後で、今後の新しいサービス展開に関する展望を語った。

NTT移動通信網株式会社研究開発本部の無線ネットワーク開発部の田中氏
NTT移動通信網株式会社研究開発本部の無線ネットワーク開発部の田中氏



田中氏によれば、移動通信の目標は「いつでもどこでも」、「誰でも、どれとでも」、「何でも容易に」であるという。ワイヤレスアクセス系の動向としては、現在、音声のみのアナログ中心の第1世代から、音声と低速データを扱うデジタル中心の第2世代へ移行。さらに2000年以降には音声・高速データを扱う、インターネット中心の第3世代への移行が予測されている。

「現在、加入者数が爆発的に増加している『iモード』は低速回線を利用しているが、端末1つでインターネットやメール、ポケベル、携帯電話などさまざまなサービスにアクセスできる。これまで、技術面では通信速度の向上を第1に考えられてきたが、iモードのヒットからも分かるように、コンテンツの充実によるサービス提供など、違った角度からのアプローチも考えていくべきである」と、田中氏はサービス内容の重要性を強調した。

1つの番号でさまざまな端末にデジタル接続できるODSシステム

NTTDoCoMoでは、複数のマルチメディア端末を経済的に快適に使いこなすため、PHSの特徴を活用したODS(On Demand Station)システムを実現、近日中に実用化する見込み。 ODSは、1つの番号を用いてさまざまな端末をデジタル接続できるため、各種のセンサーやセキュリティー、ヘルスケアなどをワイヤレス環境で利用できる。

2010年のビジョンとして、DoCoMoでは“MAGIC”を標榜している。MAGICとは、Mobile Multimedia(多様なマルチメディアアプリケーション)、Anytime Anywhere Anyone (1人1台の移動通信環境)、Global Mobility Support(国境を越えたモバイルサービス)、Integrated Wireless Solution(ワイヤレス技術を生かしたシステム関連サービス)、Customized Personal Service(個人に対する新しい情報流通ビジネス)のそれぞれの頭文字を取ったもの。

田中氏は、これらのサービス提供においては、技術の革新だけでなく今後さらに顧客のニーズを捉えるべきであるとし、「通信速度の向上ばかりではなくコンテンツの重要性など、ソフト面でのサービスを念頭に置いて開発を進めたい」と語った。

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