このページの本文へ

「iモードは情報や流行ではなく、インフラだった」――iモード専門の検索エンジンがヒット、デジタルストリートの今泉兄弟に聞く

1999年11月26日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

(有)デジタルストリートは、総合情報サイトの“OH ! NEW ?(オニュー)”を運営するベンチャー企業。社員は今泉隆照氏と毅彦氏の兄弟2人だけという小規模ながら、iモード関連のウェブサイトとしては、トップレベルの知名度を誇っている。

同社が運営する“OH! iサーチ”は、iモード対応ウェブサイトに特化した検索エンジンだ。現在の登録件数は3000サイトを越え、今でも1日に20件ずつ登録が増えているという。その他のメニューもiモードに対応したコンテンツばかりを並べており、iモードユーザーの強い支持を得ている。

今回は、iモードの現状にもっとも精通している今泉兄弟に、同社の概要と今後の展開について話を聞いた。


「iモードをやるなら今しかない!」

「インターネットはビジネスになると体感したんです」--。デジタルストリートの代表取締役で、兄の隆照氏は、デジタルストリート設立以前の状況をこう語る。

デジタルストリート取締役の今泉毅彦氏(左)と、代表取締役の今泉隆照氏、「兄弟でやっているというのは大きなウリなんです」(隆照氏)
デジタルストリート取締役の今泉毅彦氏(左)と、代表取締役の今泉隆照氏、「兄弟でやっているというのは大きなウリなんです」(隆照氏)



'97年のある日、隆照氏は某保険会社からウェブサイトの制作を依頼された。このウェブサイトが成功して高い評価を得たことで、隆照氏は「ホームページを作ることが商売になると気づいた」と語る。その後、某SI会社でエンジニアとして働いたのち、隆照氏は独立。デジタルストリートを設立したのは'99年9月9日と、ごく最近である。

もっとも当時、ウェブサイトの制作で小金を稼いでいた学生やエンジニアは珍しくなかった。だが、隆照氏はサイト制作だけでは飽き足らず、「ホームページを活用することで、儲けに繋がる」との着想を得ていた。EC(電子商取引)という言葉が一般的になる前のことだ。

そのころ、弟で取締役の毅彦氏は、隆照氏のあとを継ぐように同じ会社でエンジニアを務めていた。2人は検索エンジンに興味を持っていたが、自分たちが興味を持っている分野をうまく拾ってきてくれないと、当時の検索エンジンに不満を持っていたという。そこで2人は'99年の初頭に、オリジナルの検索エンジンを開発する。

この検索エンジンはロボット型ではなく、Yahoo!スタイルの登録型を採用していた。2人が目指したのは、新しいモノの情報をいち早くチェックできる検索エンジン。“ファービー”“バイアグラ”“スケルトン”“ヒステリックブルー”など、旬な情報をドンドンと登録していったとのことだ。

ところが、'99年2月22日にサービスを開始したiモードを手にした毅彦氏は、突如として「iモードは絶対くる!」との確信を得る。そして、「iモードをやるなら今しかない!」と隆照氏を説得。毅彦氏の勘を信じた隆照氏は、それまで開発を続けていた検索エンジンのベータ版を、iモード対応サイト専門の検索エンジンへと衣替えすることを決心した。

“OH! iサーチ”がスタートしたのは3月5日。iモードのサービスが開始されたわずか18日後のことだった。

“OH! iサーチ” “OH! iサーチ”



「最初は3ヵ月くらいで波が終わると思っていた」

検索エンジンの運営を開始した初日、OH! iサーチに登録されたウェブサイトは約10件。その時点では、iモードに対応したウェブサイトはその程度しかなかったのだ。このとき、登録したサイトのすべてが、OH! iサーチに相互リンクを張ってくれた。「だから、1日にしてiモードの中心になったんです」と、隆照氏は当時の印象を語った。

運営を開始した3日後の3月8日には、インターネット系のニュースサイトがOH! iサーチの紹介記事を掲載。これをキッカケに知名度が増し、それ以降は自分たちからサイトを探しに行く必要がなくなった。「(サイト探しをしたのは)最初の1日だけ、あとは運営を続けてきただけなんです」(毅彦氏)。

OH! iサーチの検索ウインドー、コンパクトHTMLで書かれているためシンプルな画面だが、機能は通常の検索サイトと大きくは変わらないOH! iサーチの検索ウインドー、コンパクトHTMLで書かれているためシンプルな画面だが、機能は通常の検索サイトと大きくは変わらない



ちなみに、開設当初の狙いは“時の人を追っかけること”。当時、iモードの普及台数は数万台程度で、現在のように100万台単位で普及するとは予想していなかったという。そのため、今泉兄弟は、「最初は3ヵ月くらいで波が終わる」と思っていたそうだ。

それが今や、登録サイト数は3000件を突破するまでに成長している。この現状を、社長の隆照氏は、「PCがiモードになっちゃったんです」と説明する。気軽にインターネットを楽しむのなら、パソコンではなくiモードで十分だということに、若者たちが気づいたというのだ。

*NTTドコモの発表によると、iモードは8月8日に100万契約を突破、10月18日には200万契約を突破している。同社では、2000年3月末までに400万契約に達すると予測している。

「大手が入ってくるまでの1ヵ月でリードを取ろう」

OH! iサーチの検索エンジンは、デジタルストリートの100パーセントオリジナルだ。社長の隆照氏がコンセプトを立て、技術担当の毅彦氏がプログラムを担当する。ときには2人の間で意見の衝突が発生することもあるが、兄弟ならではのあうんの呼吸で、検索エンジンの洗練化を続けてきた。

OH! iサーチが話題になってきたころ、2人は「大手は入ってくると思っていました」と、有力検索エンジンが追従してくることを予想していた。大手が本気になったら動きは早い--、そう考えた2人は、「最初の1ヵ月にリードを取ろう」と思ったという。

実際、某大手検索エンジンがiモード対応を果たしたのは、iモード対応を発表してからちょうど1ヵ月後のことだった。だが、その発表自体が、今泉兄弟が予想していた時期よりもずいぶん後だったというのだ。「大手は動き出したら早いけど、動くまでは稟議とかで大変だったんでしょうね」--。デジタルストリートにとっては、嬉しい誤算だった。

特派員やヘビーユーザーからのヘルプ

OH ! NEW ?が持つ特色の一つに、特派員が全国から集めてくるクチコミ情報がある。特派員とは、ボランティアベースで情報を提供してくれるユーザーのこと。“どこそこのレストランが美味しい”とか、“遊園地で芸能人の○○を発見!”といった、いわゆる街の話題が全国各地から送られてくる。

特派員のクチコミ情報ページ、旬の話題も取り上げており、現在はクリスマス特集を掲載している特派員のクチコミ情報ページ、旬の話題も取り上げており、現在はクリスマス特集を掲載している



これら特派員のクチコミ情報は、OH ! NEW ?にとってサイトの厚みを増してくれる大切な情報ソースだ。このほか、毎日OH ! NEW ?をチェックしているようなヘビーユーザーからは、いろいろなアドバイスがメールで送られ来るという。

「たとえば“このサイトはマズイよ”とか、“こんなチェーンメールが出回っているよ”といった情報を送ってきてくれるんです」(隆照氏)。これらの情報は、OH ! NEW ?のコンテンツに反映される。公序良俗に反するようなサイトを検索対象から外したり、チェーンメールへの注意を促すといった対応だ。

チェーンメールについての説明など、インターネット初心者にとって参考になるページも用意されているチェーンメールについての説明など、インターネット初心者にとって参考になるページも用意されている



これらユーザーのヘルプについて、2人は、「この人たちに、何かお返しをしたいと思っているんです」と感謝の思いを口にする。いわゆるバーチャルコミュニティーの一種だが、OH ! NEW ?ではいい方向に機能しているようだ。

脅威のクリック率を誇る広告効果

他の検索エンジンと同様、OH ! NEW ?も広告収入をおもな収入源としている。広告営業は兄の隆照氏が担当しているが、隆照氏はOH ! NEW ?におけるクリック率の高さを強調する。

「OH ! NEW ?に掲載されている広告のクリック率は、平均で5パーセントです。さらに、OH ! NEW ?で配信しているメールマガジンだと、その率が10パーセントに上がります」--。

OH ! NEW ?のトップには、広告のほかにアンケートなども掲載されている、もちろんiモードではなくパソコンから応募することも可能だOH ! NEW ?のトップには、広告のほかにアンケートなども掲載されている、もちろんiモードではなくパソコンから応募することも可能だ



テレビや雑誌の広告とは違い、ウェブサイトやメールマガジンの広告には、“クリック率”という厳然とした指標が存在する。いわば広告にとっての視聴率ともいえる数字だが、通常のウェブサイトに掲載されている広告では、クリック率は1パーセントにも満たないケースが多い。5パーセントという数字は、広告代理店の担当者が聞いたらヨダレをたらしそうな高い数字だ。ちなみにこれまでの最高記録は、「40パーセントですね」--。

もちろん、最初から広告が順調に入ったわけではない。当初は、知り合いの会社の広告を無料で入れていたこともあったそうだ。なかには、“名刺つくります”という印刷会社の広告を掲載したところ、注文数が掲載前の15倍に増加したという例もあったという。

「でも、ウチの広告は外部の広告代理店では管理できないんですよ」と隆照氏は説明する。「iモード上の広告はすべてテキスト広告です。画像だったら外部の代理店から配信できるけど、テキスト広告の場合は発信者のデジタルストリートでしか管理できないんです」--。

「駅構内では、ポスターでなくiモードを見てほしい」

iモードでは、テキスト広告しか打つことができない。この制限を、今泉兄弟は“広告のノウハウを自分たちで蓄積できる”と、あくまでプラス方向に考えた。「たとえば、テキスト広告を“☆”で挟むだけで、クリック率が上がったりするんです。こういった細かなノウハウを、我々はたくさん持っています」と、隆照氏は胸を張る。

さらに隆照氏は次の展開を考えている。それは、クリック回数に依存せず、たとえクリックされなくても、なおかつ効果をもつという広告だ。このアイデアについて、2人は「クリック保証型広告へのアンチテーゼです」と説明する。

つまり「自分たちのライバルは、電車の中吊り広告」なのだそうだ。「中吊り広告にはクリック数なんて関係ないけど、実はすごく高い広告効果を持っています。iモードの広告にも、同じ効果があるんです」と隆照氏。iモードのユーザーは、テキスト広告で紹介された商品を購入する確立が高い、というのが2人の実感だそうだ。

「だから、駅の構内では、大ポスターを見るくらいなら、iモードを見てほしい」と隆照氏は提案する。確かに最近、駅の構内や街角で、携帯電話を“見る”若者が増えた。そういった若者たちに向かって、OH ! NEW ?では情報/広告を発信していきたいのだという。

「ホコ天がなくなったとき、デジタルのホコ店を作ろうと思った」

OH ! NEW ?では検索エンジン以外にも様々な情報を提供している。だが、2人は「OH ! NEW ?はポータルサイトではない」と口を揃える。その理由は「ボクらは、サイトの主催者とユーザーをつなげる道でいたい」からだ。

さらに、隆照氏は自分の思い出を交えながら、「ボクは昔、よく原宿のホコ天(歩行者天国)に行ってたんです。でもホコ天は廃止されてしまいました。そのとき、“デジタルのホコ天を作ろう!”と思ったんです」と語ってくれた。デジタルのホコ天を作る、デジタルの道を作る、これがデジタルストリートという社名の由来だそうだ。

「ストリート(道)にはお店もあるし、人も集まってきます。ストリートの周りには街もできます」と、2人は道を中心としたコミュニティーの発想を強調する。「だから、ボクたちは入口(ポータル)を作るんじゃなくて、道でありたかったんです」と、デジタルストリートの存在意義を2人は力説した。

その道とは、前述の“サイト主催者とユーザーとつなげる道”にほかならない。OH! iサーチは手間が掛かる登録型の検索エンジンだが、2人は年中無休で新規サイトの登録を続けている。「道が成長を止めたら、人は通らなくなるんです。そして、人が通らなくなったら、道は終わってしまうんです」--。

24時間の対応でユーザーの支持を獲得

現在のところデジタルストリートの陣容は、今泉兄弟2人と、手伝いをしてくれる友人の3人だけだという。隆照氏は、「いまは時間と人がないのが悩みですね」と正直に語る。「24時間やっていなければならないですから」--。

2人は、OH ! NEW ?がユーザーからの支持を得た理由として、“24時間やっている”ことを挙げる。会社と自宅の区別がハッキリしないようなベンチャー企業の場合、1日中が営業時間というケースは珍しくない。今泉兄弟もその例に漏れず、ユーザーからの問い合わせや苦情には、昼夜を問わず返事を出すなどの対応を続けてきたそうだ。

そういった対応を続けるうちに、“あそこは対応が早い”“ちゃんと返事がもらえる”というウワサが広がり、熱心なヘビーユーザーを獲得することができたのだという。また、こういったヘビーユーザーについて2人は、「彼らはパソコンでインターネットをやるようになっても、OH ! NEW ?に来てくれるはずです」と自信を覗かせる。OH ! NEW ?では、パソコン向けのページもちゃんと用意しているのだ。

そんなデジタルストリートも、知名度が上がるにつれて、2人だけでは対応しきれなくなる部分も出てきた。現在は、技術者を2、3人募集しているとのこと。「ポータルサイトや検索エンジンという、トラフィックが多いところに興味がある人を求めています。求人募集というよりは、同士募集という感じですね」と、営業担当の隆照氏。また、広告営業マンも募集したいという。「自分たちのところでiモード広告のノウハウを蓄積し、育てていきたいんです。この部分に熱意を持ってくれる人を求めています」--。

デジタルストリートの今後については、隆照氏は「iモードがビジネスになるということをアピールしていきたい」と語る。「最初のうちは3ヵ月で波が終わると思っていたけれど、実際には400万台近く普及するところまで来た。結局、iモードは情報や流行なんかじゃなく、テレビやインターネットと同じインフラだったんです」--。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

最新記事

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン