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【NTTオープン・ラボ、第1期活動の最終報告会 Vol.4】“情報と流通と共有を促進する社会システム”――NTT武蔵野研究開発センター見学会より

1999年11月26日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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9日、東京・武蔵市のNTT武蔵野研究開発センターにおいて、“情報の流通と共有を促進する社会システム”と題した、NTTオープン・ラボ“第一期活動”の最終報告会があった。この報告会と並行して同研究開発センターの展示見学会も開かれた。本稿では4つの展示品をピックアップしてレポートする。

研究開発センターの全景
研究開発センターの全景



見学は十数人のグループに分かれて行なわれた
見学は十数人のグループに分かれて行なわれた



【ネットワーク型統合教育システム】

イントラネット、インターネットなどのネットワークを介して、遠隔地にいる学習者へ教育を提供するシステムである。

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今回の展示では、帰国子女向けの日本語教育システムのデモが行なわれた。このシステムは、既に横浜と神戸の中学校で実験されている。専用タブレットで文字を手書き入力し、書き順ボタンをクリックすると、書いたとおりの順番で文字を再現できる。生徒は遠隔地にいる教師にデータを送る。添削依頼を受けた教師は、生徒が書いた文字を書き順どおりに再現しながらチェックでき、必要に応じて赤で添削して生徒にデータを戻せる。

ネットワーク型の教育システムは、いつでも好きなときに、インタラクティブに操作しながら、自分のペースで学習できる。また、電子添削・質疑応答機能・掲示板などと連携しながら指導できたり、3D仮想空間でグループ学習や協調学習ができたりといったメリットがある。来年4月をめどに、インターネット上でこのシステムを公開することを目指しているという。

デモンストレーションの模様。タブレットで手書き文字を入力する見学者
デモンストレーションの模様。タブレットで手書き文字を入力する見学者



【デジタルシアター】

3次元音響と大画面ディスプレーを利用して、臨場感のある仮想空間をウォークスルーしながら、互いに映像を共有できるシアター。ネットワークで端末を結び、関連するテキストデータなどを端末から引き出せる。

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応用分野としては教育関係や美術館での利用が考えられる。学校で黒板の代りに大型スクリーンを使用し、手元にあるパソコンで生徒同士が仮想空間を共有しながら、データを参照して学習できる。

このシアターのコンテンツは、デジタルシアター探求グループの奥出直人氏(慶應大学環境情報学部教授)らが探求しているもの。デジタルシアターに必要なコンテンツ要素としては、仲間同士で教えたり学んだりしながら知識を身につけていく“分散認知”の手法や、シミュレーションしながら学びの対象を自ら構築して理解する“コンストラクショニズム”、チームで共有するコンテキストを意識しながら高度な技術を身につける“活動理論”が盛り込まれている

能の3DCGコンテンツに見入る見学者。コンテンツは、厳島神社にある能舞台を再現し、その舞台を360度どこでも視点を変えながら鑑賞できる
能の3DCGコンテンツに見入る見学者。コンテンツは、厳島神社にある能舞台を再現し、その舞台を360度どこでも視点を変えながら鑑賞できる



【デジタルコンテンツ流通システム】

インターネットを使って、音楽、映像、ゲームなどのデジタルコンテンツを販売する際に、ネットワークでの配信が安全に行なえるEC流通プラットフォーム。

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このプラットフォームには、神戸製鋼所のデジタルコンテンツ流通“InfoBind”という技術を組み込んである。“InfoBind”は、メディア固有のIDなどをもとに、コンテンツを暗号化し、暗号化されたコンテンツをネットワークで配送したあと、そのIDでコンテンツを照合、暗号を解読しながら再生する。

不正な書き換えができないメディア固有のIDをもとに、コンテンツを暗号化しているため、他のメディアにコピーしても利用できない仕組みになっている。また、暗号化されたコンテンツは、ネットワーク配送時に電子署名が施されるので、個人データの偽造や改ざんを検出することが可能。

具体的例として、音楽データを購入し、端末にダウンロードするまでのデモが行なわれた。記録メディアにはスマートメディアを利用し、神戸製鋼と共同開発したネットワークオーディオ機器『ソリッドオーディオ』を端末として利用していた。

【マルチメディアアーカイブシステム】

これはマルチメディアアーカイブ探求グループの桂英史氏(東京造形大学助教授)らが進めているプロジェクト。

著作権流通の実現を目的に公開実験が行なわれている。プログラムを含めた、文字、写真、動画などのコンテンツをサーバーに蓄積・提供する映像データベースシステムで、端末側でコンテンツを検索、閲覧できる。同研究所にメーンのアーカイブサーバーと端末が設置されているが、高速ネットワーク回線で東京都写真美術館にあるクライアント端末とも結ばれている。

デモでは、利用者登録から、キーワードによる画像データの検索、選択した映像の再生、セグメントごとの映像データ並べ替え(編集)までの一連の流れを説明していた。

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これ以外にも、たくさんの展示品があった。たとえば、ネットワーク関係では、19GHz帯の周波数を利用し、10Mbpsの高速伝送が可能な高速無線LANシステム、次世代インターネットプロトコルIPv6 IPsecを利用した通信システム、IPネットワークを利用し、リモートアクセスポイントから企業のLAN環境を利用するサービス、音声圧縮技術“TwinVQ”を応用したネットワーク音楽映像放送システムなどが展示してあった。

一般見学の希望は、平日の午前10時から12時、午後1時から5時のあいだであれば約1週間前から電話で予約できる。

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