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【NTTオープン・ラボ、第1期活動の最終報告会 Vol.2】新しい情報流通のありかたを考える――“MAO2000”プロジェクト実験の経過報告

1999年11月25日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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19日、東京・武蔵市のNTT武蔵野研究開発センターにおいて、“情報の流通と共有を促進する社会システム”と題した、NTTオープン・ラボ“第一期活動”(以下、第1期)の最終報告会があった。

“NTTオープン・ラボ”は、新しい情報通信の概念を創出し、技術開発に反映するために、'97年1月に発足した。現在、マルチメディアと社会の関係、コンテンツの蓄積と利用、サイバー経済のルール、初等・中等・高等教育などの探求グループが活動をしている。このシンポジウムは第1期活動の成果を報告したものである。本稿では、第1セッション2番目に登場した桂英史氏(東京造形大学助教授)の発表をレポートする。

マルチメディアアーカイブ探求グループの実験“MAO2000”

前セッション“デジタル社会における情報の価値と流通”では、リサーチプロフェッサーである黒崎政男氏から「パッケージなどの入れ物から情報が分離されて丸裸になったときに、従来の経済原則は通用しなくなる。それを前提とした新しい社会経済システムを作っていく必要がある」と発言があった。

これを受けた形で、桂氏のマルチメディアアーカイブ探求グループでは、さらに具体的にどのような情報の入れ物があるのか? を出発点に考えて探求を進めてきたことを報告した。探求の目的には、マルチメディアコンテンツ流通のありかたを探ること、さまざまなコンテンツ形態を利用できるようなモデルを把握すること、そして実際に運用モデルを構築することがある。

桂氏らは、この運用モデルとして“MAO2000(Multimedia Archive Outlook2000)”という実験プロジェクトを推進している。これは、コンピューターのプログラムを含めた、文字、写真、動画などのコンテンツを蓄積・提供するデータベースシステムの実験である。NTT武蔵野研究所にメーンサーバーを設置、高速ネットワーク回線で東京都写真美術館を結ぶことで、同美術館でもコンテンツを検索、閲覧、編集(並べ替え)ができる。

マルチメディアアーカイブ探求グループのリサーチプロフェッサー桂英史氏
マルチメディアアーカイブ探求グループのリサーチプロフェッサー桂英史氏



映像コンテンツはオリジナル映像を数分単位でセグメント化し、それをデータベースに登録、MPEG2フォーマットでサーバーに蓄積する。データベースの情報として、キーワードと著作権をセグメント単位で映像データに付与し、キーワード単位で検索できるようにした。編集については、セグメント単位での並べ替えできるという考え方で可能である。さらに調査・研究などの非営利目的や教育目的(著作権法第31条、35条、43条)ならば、映像を複製したビデオテープを借りることもできる。この公開実験は2000年の3月まで行なわれる予定だ。

思っていた以上に手応えを感じたMAO2000

桂氏によると、この実験の核になる考え方として“フェアユース”があるという。現行著作権法の適用限界を把握し、制限条項に基づく2次利用(複製)がどこまで可能なのか? また、コンテンツ利用をめぐる利益配分モデルをどうするか? コンテンツ提供者との利害調整をどうするか? などについて検討がなされた。また、運用モデルとしてMAO2000実験を評価するために、アンケートによる分析も行なわれている。この約1ヵ月間で、約100人にアンケートを取ったという。

「個人的な感想としては、アンケートの結果から映像には流通がないのでは? と感じている。デッドストックが多く、映像を見たいと思っても見られないし、見せたいと思っても見せられないという現状がある。そういう意味では、見せる場が欲しい人たちからのラジカルな意見があり、思っていた以上にMAO2000に期待する向きはあるようだ。しかし、実験結果は定量的な統計分析ばかりではなく、コンテンツ提供者や教育関係者などの専門家たちと共に、定性的な分析もしていかなければならない。今後の技術的な問題としては、セキュリティーの問題もある。電子透かし技術や課金システムも検討しなければならない」と、実験の途中経過を分析した。

“知のテンプレート”としてのアーカイブ

また、「知は資本であり、資本の蓄積がパブリックインタレストになる。これがMAO2000プロジェクトの突破口になるのではないかと考えている。現在、インターネットが成功しているのは、コンテンツが24時間流れ、それをいつでも誰でも獲得できるから。そして、誰にも強制されなくてもウェブページがどんどん立ちあがり、情報を提供してくれる。そういう“知のテンプレート”としてのアーカイブが必要だと思う。利害や紛争解決の調整のためには、コンソーシアム形式を取らないと、マルチメディアアーカイブは育たないのではないかと考えている」とも述べた。

最後に、今後のシナリオについては“ワンソース・マルチユース”による活用、コンテンツユーティリティー・コンソーシアムの必要性などの課題がある、とした。

「著作権は利用する側の立場に立って考えていくことも必要。新しい情報流通のありかたを考えるには、新しい社会経済システムも考える必要がある」と、次のセッションにテーマをつなげて発表を終えた。

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