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【MediaTech1999 レポート Vol.2】「ICカードは利用者と情報を仲立ちするもの」--ICカードと電子決済をテーマにしたワークショップ開催

1999年11月17日 00時00分更新

文● 美縞 ゆみ子

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福岡県北九州市で開催された“MediaTech1999”において16日、電子決済に関するワークショップが開催された。タイトルは“ICカードと電子決済 ~21世紀の必携ツールの実態は~”。講師を務めたのは沖電気工業(株)の平松雄一理事。

情報関連技術をインフラとした新社会の構築

 ICカードの多目的利用とインターネットの情報セキュリティーをテーマとした今回のワークショップでは、まず社会環境の変化から語られた。

「社会のネットワーク化、オープン化、デファクト化、グローバル化は、情報革命・デジタル革命の融合現象であります。これらの情報関連技術(IT)をインフラとする、新社会を構築していこうということです。今までの延長戦で物を作っていくのではなく、ある物を捨てて、新しいものを作っていこうという動きです」

セミナーの講師を務めた、沖電気工業(株)理事の平松雄一氏セミナーの講師を務めた、沖電気工業(株)理事の平松雄一氏



平松氏は、社会がネットワーク上で動き始めるようになると、対等なプレイヤー同士が交わることになると指摘。その中で、どのような社会ができ、そして決済はどうなっていくかという問題を指摘した。

「物の本質的転換は、アトム(物質)からビット(情報)へ変わってきている。そのことを理解し、情報セキュリティーの重要性を認識すべきなのです」と、情報を守ることの重要性を、平松氏は強調した。

インターネットにおける商取引の現状については、「公道に財布を置いて、店の人に取りに来てくれと言っているのと同じです。日本のインターネット決済は非常に危険であると言えます」と明言した。

また、消費動向の変化については、「Aの人にもBやCの人にも満足のいく商品を提供し、支払いから個人情報を捕まえてくる。何が誰に売れたか、どういう特性があるのかをデータベース化して蓄えていかなくてはいけないのです」と、ここでも情報の重要性を指摘した。

その上で、「“紙”による情報が、“電子化”された情報へと移行しているのです。情報のデジタル化は、低コストを実現させていることも認識すべきです」とし、デジタル化された情報を安価にかつ有効に利用すべきだとアピールした。

インターネットでの情報収集が重要

次に語られたのは、ウェブ専門の広告代理店である(株)メンバーズが展開する、販売仲買サイトの“WEB AGENT MEMBER'S”についてだ。メンバーズでは数十軒の中古車ディーラーと提携し、新車/中古車の電子商取引を実践している。

「ユーザーの住んでいるところに近いディーラーと車を紹介し、ユーザーが何店舗も探し歩かなくても買い物ができるシステムで、メンバーズは成功しています」と、同社が展開する仲買システムを紹介。

さらに平松氏は、「インターネットの中でダイレクト決済をするのではなく、販売チャンスをどうやって渡していくか、どう対面販売に持っていくかが大切なのです」と、電子商取引が必ずしも電子決済を含むものではないという事例紹介を行なった。また、「客に満足を与えるとともに、メンバーズは顧客の情報を入手することになるのです」し、ここでも情報を集めることの重要さをアピールした。

平松氏はここで、ネットワーク社会のポイントとして“匿名性”“無痕跡性”“時間的・場所的無限定性”“超高速性”の4つを列挙。これらのポイントのキーとなるのが、安全性と完全性の確保にあると、セキュリティーの重要性を示唆した。

また、「その中で電子商取引が目指すのは、リエンジニアリング(変革)であり、目的に応じて変化していくことです」と語り、その変化を実現するためには「過去のデータを単にデジタル化するのではなく、必要なモノをデジタル化することが情報化であるのです」と、情報の選別が必要であることを指摘した。

「情報セキュリティーについては、「予測可能な危険を伴うセキュリティー手順と、それに釣り合いの取れた技術をお互いに会話しながら作り込んでいく必要があるでしょう」と語った。

オンライン決済ではコンビニが銀行をリード

電子商取引の流れについては、「企業間取引においては、効率性を中心に追求されてきました。これを第一の波とすれば、第二の波はインターネットを個人生活に適用した日本の流れです。この一つのキーとなるのはコンビニエンスストアと携帯電話です」と、個人における電子商取引の可能性について言及。

平松氏は自らパソコンを操りながら、情報セキュリティーについての警告と提言を行なった
平松氏は自らパソコンを操りながら、情報セキュリティーについての警告と提言を行なった



「決済は、今、郵便局とコンビニが圧倒的に多い。これは手数料が安いためです。銀行手数料のように何もサービスのないものは、今後はダメなのです」と、わかりやすい例を挙げて説明。また、電子商取引の現状として、「インターネットに影響されやすい商品に、金融と証券があります。これらは手数料がネットの方が1ケタ安いからです。また旅行予約も入ります。旅行のコーディネートから決済までネットで行なえるのです」と語り、オンライン証券やオンライン旅行代理店が激増している現状について解説した。

ユーザーにとって身近な物品の売買については、物流に時間が掛かる点を指摘し、「ローカルなインターネットとグローバルなインターネットの使い分けで勝負が決まると私は思います」とし、インターネットにローカルとグローバルの視点を持ち込むという持論を披露した。

ICカードでセキュリティーの保障を強化

セキュリティーについて平松氏は、考えが甘い日本社会の欠点について言及。「今後は、“個人が守る”という意識を持たねばなりません。社会は守ってくれないのです」と、自己防衛の重要性を強調した。さらに、「インターネットセキュリティーに対する姿勢は、適切な対策をとってインターネットを有効に利用しなくては生き残れないのです」と、各個人の積極的な対策が求められているとアピールした。

普及しつつあるICカードについては、「ICカードは利用者と情報を仲立ちするものです。つまりネットワークと同じなのです。だが、ネットワークでは“なりすまし”や“偽造”があり、不信感が生まれます。そこにICカードを入れることで、エンドツーエンドを結ぶわけです。これは社会的コストを削減することにもなるのです」と、ICカードの普及に肯定的な姿勢を見せた。

また、マイクロプロセッサーを埋め込んだスマートカードについて紹介し、このスマートカードこそが判断機能を持つICカードであると説明した。日本でも導入の機運が高まっているデビットカードについては、客単価を幾らにするか、高額の買い物向けか、日々の買い物用か、セキュリティーはどうなっているかといった現状での疑問点を明確にする必要性を指摘した。

平松氏の話はキャッシュカードにまで及び、「手数料をとって安全性を確保して、保険をかけるといったサービスを提供すべきでしょう」と、セキュリティー面でのサービスについて言及。「フランスのスマートカードは自由に選択できるというサービスがあるのです。そしてこのカードの管理義務は銀行が持ち、PIN(暗証番号)も管理することで安全性を保っているのです」と外国の例を挙げ、日本のキャッシュカードがセキュリティー面で甘さを残している点を指摘した。

また、セキュリティーの将来的については、「2002年に、ISO/IEC15408情報技術セキュリティー評価基準の認可センターができる予定です。情報関連の機器が本当に安全か、消費者が確認できるようになるのです」という期待感を表明した。

最後に平松氏は、「コンテンツは文化、生活様式に根ざしたヨーロッパから学ぶべきです。システムの設計時から、ポリシーとして守るべきものは何なのか、明確にすることが最重要なのです」と、日本に足りない部分をヨーロッパに求めるべきだという自説を披露。その上で、「利用者に対する十分な配慮をし、自分たちの信頼を得るのです。その実現のツールとしてICカードが使えるのです」と語り、ワークショップを締めくくった。

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