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【SEYBOLD Seminers Tokyo/Publishing 99 Vol.2】Windows DTPソフトを辛口評価

1999年11月12日 00時00分更新

文● 山木大志

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9日から幕張メッセを舞台にCOMDEX/Japan'99と合わせて開催されているSEYBOLD Seminers Tokyo/Publishing 99は、11日、12日の2日間、チュートリアル、カンファレンスがメッセに隣接する国際会議場で開催されている。そのカンファレンスの1つ、“Windows DTPを斬る”を紹介する。

Windows DTPとは?

Windows DTPは、ここ1、2年、プリプレス業界で最も大きなテーマの1つとなっている。かつては“Windows VS Macintosh”の一環として語られることもあったが、今日では語る人の立場と志向によって、その論点は大きく異なる。今日でも、汎用DTPプラットフォームとしてのWindows DTPを語る人もいないわけではない。その一方で、メーカーがUNIXベースの専用機をWindowsに移植し、時流に乗せて“Windows DTPシステム”として売ろうという思惑がらみの動向も顕著である。

当事者である製版、印刷関係の企業にとっては、一般企業から大量に発生するデジタルデータ=Windowsデータをいかにして印刷ワークフローに乗せるか、または、やはり一般企業からのWindowsベースでの制作要求に対してどのように対応するかという課題が現われている。

このカンファレンスでは、出席者の1人である赤坂トオル氏は「Windows DTPの1つとして語られる“ビジネスDTP”は、要するにどうやってWindowsデータの制作、出力をビジネスベースに乗せるかに過ぎない」と厳しい見方をしている。

“ビジネスDTP”について語る赤坂トオル氏
“ビジネスDTP”について語る赤坂トオル氏



ともあれ、Windows DTPは単なるプラットフォームの選択の問題ではなく、印刷関連業界が今日突きつけられている大きな課題の1つなのである。そしてこれに対応するには、具体的にどのようなシステム構築をしていくかということが早晩大きなテーマとなっていく。これに応える形で、このカンファレンスでは今日の代表的なWindows上のレイアウトソフトについて、辛口な評価が飛び交った。

日本語組版に対応できない海外ソフト

カンファレンスは、モデレーター(司会)に大日本スクリーン製造の郡司秀明氏、スピーカーに図書文字情報システムの久富隆洋氏、赤坂トオル氏を招いて行なわれた。大日本スクリーン製造は日本を代表する製版機材メーカーであり、郡司氏はその社員でありながら、DTPをはじめとしてプリプレス全般に関して多くの著述、講演なども行なうマルチプレーヤーである。

久富氏は、印刷会社のスタッフとして長年Windows DTPの実務を取り仕切っており、実務経験の深さを著述などで披露している人である。赤坂氏は、近年、新進の専門誌『Windows DTP Press』での実証的なレポートを報告し、注目を集めている人物でもある。

カンファレンスは、主に個別ソフトの評価について語られた。まず大きなくくりとして国産ソフトと海外ソフトの違いに関して、出席者は「海外ソフトは日本語組版に対応できていない」と口を揃えた。『QuarkXPress』、『Adobe PageMaker』がそれであり、記号類の行末処理機能や箱形の文字組機能の不備が指摘された。

この点について、海外の事情にも詳しい郡司氏は次のように補足した。

大日本スクリーン製造の郡司氏。多くの著述、講演なども行なうマルチプレーヤー
大日本スクリーン製造の郡司氏。多くの著述、講演なども行なうマルチプレーヤー



「Macintosh系ソフトは開発者が日本にいない。これは主にコストの問題で、日本語版など2バイト対応ソフトも米国などで作っている。このため、日本のユーザーの要望が届きにくく、たとえその声が届いてもそのための開発の優先順位が低い」

組版機能では優れた国産ソフトだが……

国産ソフトのなかでも、住友金属システム開発の『EDIColor』(エディカラー)については、久富氏は高い評価を加えた。「特に手を加えなくても、実務的に十分な組版品質が得られる。電算写植のように複雑な文字組にも十分対応できる」

図書文字情報システムの久富氏。Windows DTPの実務経験は深い
図書文字情報システムの久富氏。Windows DTPの実務経験は深い



久富氏が所属する図書印刷情報システムでは、Windowsデータとして生産される印刷物の過半がEDIColorで制作されているという。

最近発売されたばかりの大日本スクリーン製造の『PageStudio』(ページスタジオ)に関して、赤坂氏は「画像処理能力が優れている。DTPソフトでは一般に画像が粗いプレビュー表示しかできないが、PageStudioでは実画像を表示できる。しかし、価格が高い」と難点も指摘した。

Windows上でもう1つの代表的レイアウトソフト、ニッシャインターシステムズの『UrbanPress』(アーバンプレス)について久富氏は、「もう2年以上もバージョンアップがされていないなど、サポート面で不安がある。しかし、動作が速い、付属のUnicodeフォント(TrueTypeフォント)が使える、TeX(*)が使えるなど、他のソフトにない特徴がある。顧客の組版要求に応えざるを得ない印刷会社としては機能面で不足があるが、出版社などが自主的にルールを作って使うには向いているのではないか」と評価した。

(*)注 TeX(テフ、テヒ、またはテック):理工系論文、数式記述のための言語。電算写植タグなどと同様の書式制御、出力のための言語で、自然系科学では広く使われている

DTPはMacintoshとともに発展、普及してきたものであり、現実的にも独立系のデザイナーはMacintoshしか使っていない。しかし、一般企業のデジタル化の進展がWindowsベースで行なわれている。その情報発信、共有の要求が高まるにつれ、Windows DTPはその比重を高めてきている。今年はそのブレークポイントになるのだろうか?

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