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“相互につながった、ノーマライズされた人間社会”を目指す――“情報バリアフリー社会とボランティア”より

1999年11月11日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

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9日、東京年金基金センター、セブンシティにおいて、シンポジウム“情報バリアフリー社会とボランティア”が開催された。会場では手話通訳と要約筆記のスクリーン表示で講演内容が伝えられ、さらにはIRCによって同時中継も行なわれた。司会進行は、毎日新聞社記者であり、バリアフリーサイト『ユニバーサロン』の編集責任者である岩下恭士氏。

べての音声に、手話とスクリーンでの要約が付けられた。スクリーンでの要約は、ノートパソコンによりリアルタイム入力で行なわれていた
べての音声に、手話とスクリーンでの要約が付けられた。スクリーンでの要約は、ノートパソコンによりリアルタイム入力で行なわれていた



毎日新聞社総合メディア事業局長である渡辺良行氏が登壇。「ハンディキャップを持つ方にとって、パソコンなどの進展は光明である」と挨拶毎日新聞社総合メディア事業局長である渡辺良行氏が登壇。「ハンディキャップを持つ方にとって、パソコンなどの進展は光明である」と挨拶



八代英太氏がビデオでメッセージ

まず、基調講演に先立ち、郵政大臣、八代英太氏からの特別ビデオメッセージが上映された。八代氏は情報バリアーフリーのために「使いやすいパソコンやテレワークセンター、自宅で仕事や生活のできる体制、いわゆるSOHOの整備を目指す」と約束。ボランティア、人的支援のあり方として、「人的バックアップは、アクセスするためのお手伝いであり、不便さを便利に変える政策を実現していく」とした。

ビデオメッセージを寄せた八代郵政大臣。情報バリアーフリーのためにSOHOの整備を約束
ビデオメッセージを寄せた八代郵政大臣。情報バリアーフリーのためにSOHOの整備を約束



人的支援に明るい未来をもたらすメーリングリスト

基調講演の1本目は、東京女子大学現代文化学部助教授小田浩一氏による“インターネット時代の人的支援”。小田氏は視覚障害者には「文書を紙で渡すことがバリアー」であり情報障害につながるものであると指摘、パソコンに旧来のワープロ的用法=清書を期待するのでなく、編集や保存、ファイルの送受信を行なう“知的生産の道具”とすることで、アクセシビリティーがあがると訴えた。
 
続いてバイオノートと画面読み上げソフトによるデモを行ない、5万円くらいのソフトを使えばWindows98でも視覚障害から開放されることが可能であると説明した。
 
小田氏は「どうやって情報を得るかにはノウハウが必要」であるとし、メーリングリストは人的支援に明るい未来をもたらすものだと定義。またWWWベースの活動として、視覚障害リソースネットワーク『VIRN』を紹介。店頭やパソコン雑誌では情報が得られない“点字プリンター”などの情報アクセス製品データベースや、さまざまな施設などへのリンクといった内容があり、以前の紙メディアでの活動に比べてコストやメンテナンスの面で有利であると説明した。


インターネット活用の重要性を説く小田氏

また、関係者が少数であり情報の共有が難しいこと、組織の人的コネクションによって情報が中に封じられるケースがあることから、全国のあらゆる立場の人を結びつけるメーリングリスト『JARVI-ML』が成果をあげていることを報告。例として、神戸の人が質問のメールを発信したところ、鹿児島の人に神戸の情報を教えてもらったことなどが紹介された。このような例から「情報はあったが、切れていた、流れてない」と述べた。
 
小田氏はボランティアが障害者に一方的に人的支援を行なうということではなく、健常者と障害者が相互に人的支援を行なうことこそがボランティアの本質であるとし、“相互につながった、ノーマライズされた人間社会”を目指すべき、という言葉で講演を終えた。

障害に関わらず、入出力と操作性は重要

続く基調講演は、郵政省通信政策局情報企画課長小野寺武氏による、“行政から見た情報バリアフリー”。小野寺氏は行政による“人に優しいバリアフリー”の取り組みとして、アクセシビリティー指針の作成と、使いやすい機器やサービスの開発、地方自治体への支援を紹介した。
 

小野寺氏は行政の取り組みを報告
小野寺氏は行政の取り組みを報告



電気通信サービスでのアクセシビリティーの確保としては、障害に関わらず入力を可能にすること、出力結果を利用できるようにすること、操作を容易にすることが重要と述べた。
 
研究開発中のシステムとして、身体的特性を判別する次世代バリアフリーシステムや、VTRから要約を作成して字幕と映像を自動的に同期させる放送ソフト、音声と手話を変換するシステム、などを紹介。具体的な取り組みんでいるものとして、声を最適な状態に変換する電話補聴システムや、字幕をサーバーに登録、自宅からダウンロード可能にする“テレビ用字幕スーパー配信システム”の説明を行なった。
 
また、バリアフリー・テレワークセンターの取り組みとしては、金沢市の生きがい情報作業センターなどの活動を紹介した。

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