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ネット時代の組織は“合志会社”? ――EC研究会が第40回記念講演を開催

1999年11月09日 00時00分更新

文● 若菜麻里

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エレクトロニックコマースに関心を持つ業界人の集まりである“EC研究会”の定期フォーラムが、11月5日に開催された。同フォーラムは今回で第40回を迎え、それを記念して、“勃興するネット経済の大展望”という全体テーマのもと、電通(株)メディアコンテンツ統括局調査部長の吉田望氏、(株)リクルートISIZE局統括グループマネージャーの木宮朋彦氏および、非営利団体のBit Valley Association(ビットバレーアソシエーション)ディレクターの松山太河氏が講演を行なった。

インターネット産業の成長には、株式とサービスの切り離しが必要

吉田氏は、“デジタル産業革命(日本)の明日”という講演タイトルで、「'94年にインターネットに初めて実際に触れたとき、インターネットは革命だと思った」と語り始めた。「広告業界では、インターネットは、もはや普通のメディアの1つであると考えられ、従来型の広告とインターネット広告を併用した広告が、当たり前になってきている」と述べた。

インターネット広告を併用した広告が、当たり前の時代に。電通メディアコンテンツ統括局調査部長の吉田氏の弁。5年も前に『日経イベント』誌にインターネット広告論を連載するなど、名うての論客
インターネット広告を併用した広告が、当たり前の時代に。電通メディアコンテンツ統括局調査部長の吉田氏の弁。5年も前に『日経イベント』誌にインターネット広告論を連載するなど、名うての論客


広告の受け手でもある一般の人々は、ちょっと前までは、新聞に書いてあればそれをうのみにする傾向があったが、最近は新聞報道だけでは信用しなくなり、さらに自分でインターネットで調べて同じ結論に到達したときに、初めてその事柄を信じるようになってきたという変化が見られるという。

吉田氏は、'95年当時、将来のインターネット市場について、自分自身がどのような予測をしたかを紹介した。'98年より若い女性や主婦に普及するという予測は、'99年くらいから、というのが実際で、最近はAOLなどのプロバイダーでは女性の新規加入率が高いという。電子通販や電子決済ブームは一段落するという予想は外れ、拡大傾向にある。インターネットの普及率は、最終的に米国のそれを上回るという予測は、iモードの出現により、実現する可能性があるという。iモードは加入時にメールアカウントが付属するため、インスタントメッセージや株の売買などで利用が進むとふんでいるためだ。

また最近の疑問として、「インターネット産業の本質として、インターネット事業で生き残るには、株の上場が必要なのではないか。サービスと株主が切り離されて、会社が次の株主に所有されていくたびに、(サービスが)どんどん大きくなるのではないか」と語った。

ユーザーニーズと業者の情報をマッチングさせる生活情報サイト“ISIZE”

木宮氏は、“日本最大の総合生活サイト ISIZEにおける販促支援ビジネスモデルの実例”というテーマで、'99年1月にリクルートで開始した総合生活情報サイト『ISIZE(イサイズ)』について、そのコンセプトやコンテンツを紹介した。

140万件の情報が登録されている『ISIZE』を統括する木宮氏
140万件の情報が登録されている『ISIZE』を統括する木宮氏



ISIZEというのは、“私のサイズ”という意味の造語。'95年に同社が開始した情報提供サイト“MixJuice”のブランドを変更したもので、トラベル、マネー、結婚、仕事、住宅など15種類の生活情報で構成され、全部で140万件の情報が登録されている。

「MixJuiceは、リクルートで出版している個々の情報誌の販促物という位置付けで、たとえば住宅情報の場合、住宅を借りる、買うという情報提供のみだった。ISIZEでは、さらに引越し、ローン、住環境など、住むことに関する総合的な情報を提供している。物件案内のページには、会社への乗り換え経路や定期代を検索するためのリンクボタンもある」という。

ISIZEが目指しているのは、ユーザーが欲しい情報と、業者が提供したい情報をマッチングさせること。たとえば、“マリッジライフ”のページでは、ユーザー専用の“結婚手帳”ページが作成される。結婚予定日から逆算していき、結婚式の190日前なら、「新居や家具を買いそろえる準備を」と促し、その下に家具屋の広告が入るといったサービスを提供している。

また、新卒学生の就職情報から卒業旅行、資格取得、家探し、出会い、結婚、引越し、車、駐車場、車のローン、ドライブ、グルメ、旅行、スポーツ、音楽……といったように、トータルに人生の節目節目のコンテンツを提供していくとしている。

今後の懸案事項は、高度な学習機能により個人の嗜好を分析し、それに合わせたお薦め情報をISIZE側からユーザーに提案可能にすることだ。

木宮氏は、「ネットビジネスは理論ではなく現実から学ぶのが大切だ。過去の成功は通用しない。ニーズは刻々と変わる」として、「既存のビジネスとの関係上、予想外の制約もあるが、調整と決断が大切」であると強調した。

インターネットの革命で、すべての人が10倍ハッピーに

ASCII24電子メールサービスの“「Den」今日の言葉”の作者でもある松山氏は、『日本のデジタル生態系ビットバレー』というタイトルで講演した。

「究極の分業が進めば、好きなことや得意なものだけで食べられる時代になる」と語るBit Valley Associationの松山氏。
「究極の分業が進めば、好きなことや得意なものだけで食べられる時代になる」と語るBit Valley Associationの松山氏。



松山氏がディレクターを務めるBit Valley Associationとは、米国のシリコンアレイやシリコンバレイのような、デジタル地域の名称である。'99年2月の設立当初は渋谷を中心とした若い企業のコミュニティーとしていたが、活動の拡大に伴い、最近では、東京周辺のデジタルコミュニティーとしている。同団体が急速に拡大した理由は、「究極の分業社会だから」。

シリコンアレイやシリコンバレイでは、暗号技術だけ、決済だけというように、勝つために分業するため、他社との共同作業が必要になるのだという。現在会員は約2000人で、同団体の運営側の仕事は、「インターネット産業について、政府関係者などに報告するという作業などのほかは、会員間の交流を活性化させるための、いわば雑用業務」と話している。

「ビジネスマンより学者や哲学者にあこがれる」という松山氏は、インターネット社会の今後についても独特の見解を示した。まず、今後“作る人=使う人”という形態に徐々に移行するだろうという点。「たとえばデジタルガレージの伊藤穣一氏の意見では、AOLユーザーが、ひとり1万円ずつ出し合って株を買い、その中で経営能力のあるユーザーが、よいサービスを提供できるように企業を引っ張っていくというのがAOLの理想的な最終形」というように、「ユーザーは自分の使っている中で気に入ったサービスの企業の株を買うようになるのではないか」としている。

そのほか、「究極の分業が進むことで、これまでは総合的に何でもこなさなければならなかったのが、好きなことや得意なものだけやっていれば食べられる時代になる」。また「インターネットの普及で、海外の人と距離感のない交流が可能になるため、世論が変わり、経済や政治による戦争がなくなるのではないか」として、「インターネットという革命によってすべての人は10倍ハッピーになる」と述べた。

また起業家として、「ネットビジネス成功の秘訣はその動機。提携など、他の人に助けてもらうときは、“自分ひとりが儲けたい”と主張するのではなく、“世界を良くしたいので、手伝って欲しい”というのが正しい」として、大きな志を持つのが大切だと訴えた。

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