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Pentium III-600EB MHz(Coppermine)の性能を測る

1999年11月08日 00時00分更新

文● Digital Advantage 小林章彦/永野 亮

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10月27日に待望の0.18μmプロセスで製造されたPentium III(開発コード名:Coppermine)が発表された。このプロセッサは、インテルの昨年末までのロードマップでは1999年8月中に発表予定だったものだが、予定を2ヵ月程度遅らせていたものだ。この遅れの原因は、「予定のクロック周波数の製品が十分に製造できないため」というもので、マスクを変更しての仕切り直しとなっていた。

Coppermineの追加により、デスクトップパソコン向けPentium IIIは、表「Pentium IIIのラインアップ」のように複雑なものとなった。特に600MHzの動作クロックのものは、0.25μmプロセスで製造された100MHz FSB(600MHz)と133MHz FSB(600B MHz)、0.18μmプロセスで製造された100MHz FSB(600E MHz)、133MHz FSB(600EB MHz)と、4種類もがラインアップされることとなった。

Pentium IIIのラインアップ



開発コード名


動作クロック


FSB


日本国内発表日


1000個ロットの発表時価格


パッケージ


Katmai


450MHz


100MHz


3月2日


5万7630円


SECC2


500MHz


100MHz


3月2日


8万870円


SECC2


550MHz


100MHz


5月17日


9万820円


SECC2


600MHz


100MHz


8月2日


8万2930円


SECC2


533B MHz


133MHz


9月28日


4万1690円


SECC2


600B MHz


133MHz


9月28日


6万9480円


SECC2


Coppermine


500E MHz


100MHz


10月26日


2万5890円


FC PGA


533EB MHz


133MHz


10月26日


3万3040円


SECC2


550E MHz


100MHz


10月26日


3万9860円


FC PGA


600E MHz


100MHz


10月26日


4万9290円


SECC2


600EB MHz


133MHz


10月26日


4万9290円


SECC2


650MHz


100MHz


10月26日


6万3150円


SECC2


667MHz


133MHz


10月26日


6万5540円


SECC2


700MHz


100MHz


10月26日


8万1680円


SECC2


733MHz


133MHz


10月26日


8万4060円


SECC2


気になるのは、これらの性能がどの程度違うのかだ。同じ600MHzという動作クロックながら、FSBの速度と2次キャッシュの実装方法に違いがある。600MHzと600B MHzは、Pentium IIと同様に、512KBの2次キャッシュを外付けで実装している。そのため、2次キャッシュへのアクセス速度は、CPUコアの2分の1のクロックとなる。これに対し600E MHzと600EB MHzは、256KBの2次キャッシュをCPUコアチップ内に同梱して実装している。2次キャッシュへのアクセス速度は、CPUコアの動作速度と同じになり、2次キャッシュへのアクセス方法も変更になっている。既存のPentium III(開発コード名:Katmai)では、CPUコアと2次キャッシュとの間のデータバスが64bitであったが、これがCoppermineでは256bitに変更されている。また、2次キャッシュの構造も2ウエイセットアソシエイティブから8ウエイセットアソシエイティブに変更し、キャッシュの性能向上を実現しているという。

こうした2次キャッシュの違いが実際にどの程度の性能の違いを生むのかを、今回はベンチマークテストにより明らかにすることにした。テストには、チップセットにi820を搭載したマザーボード『Intel VC820』を採用した(表「テストに用いたPCの仕様」)。

テストに用いたPCの仕様



CPU


600B MHz/600EB MHz


メモリ


64MB(PC800)


チップセット


i820


マザーボード


VC820


グラフィックスカード


Diamond Viper V770(RIVA TNT2 Ultra)


グラフィックスメモリ


32MB


ハードディスク


WD Caviar 31300(13GB)


OS


Windows 98


テスト解像度


1024×768ドット1677万色表示@85Hz


概報のとおり、i820は「RIMM(Direct RDRAMのメモリモジュール)を3枚差した状態でエラーが発生する可能性がある」という理由から、出荷が無期延期になってしまっている。そのため、テストに用いるのは正当とはいえないのだが、現在Pentium III用として133MHzのFSBをサポートするチップセットは、i810EとVIAのApollo Pro 133Aと少ない。そのうえ、i810はグラフィックス機能がチップセットに同梱されているうえ、そのグラフィックス機能は2世代ほど前のものなので、ハイエンドパソコン向けに想定されているCoppermineの評価にはあまり向いていない。また、Apollo Pro 133Aは、残念ながら評価時に入手が間に合わなかった。

最新の情報によれば、i820は年内に出荷が開始できるメドがついたという。年明けには各パソコンメーカーからi820搭載のパソコンが続々と発売になるだろう。そこで、そのパソコンの性能を先取りする意味も込めて、i820でのテストを行なうこととした。なお、テストに用いたi820は、9月末に発表予定だったものであり、実際に今後出荷となるものとは仕様が若干異なる可能性があることをご了承いただきたい。また、VC820は、BIOSにより自動的にCPUの動作クロックをチェックして設定してしまうため、FSBの変更が行なえない。そこで、テストは600E MHzと600EB MHzで実施した(PC600対応RIMMを差すことで100MHzのFSBに変更可能だが、i820の延期によりメモリが入手できなかった)。

テストの結果は、表「Pentium IIIの性能比較」を参照していただきたい。この結果を見る限り、同じ動作クロックながら、600EB MHzの方が、CPUmark 99では約20パーセント、FPU WinMarkでは約6パーセントと、600E MHzよりも高速化されていることが分かる。これは、前述の2次キャッシュのアクセス速度の向上や構造の変更が有効に働いたためと思われる。特にこの2つのテストは、CPU自体の性能を計測するためのもので、2次キャッシュなどの構成の違いが顕著に現れる傾向にある。また、プログラムサイズがそれほど大きくないため、2次キャッシュのサイズの影響が少ないと思われる。これも、600EB MHzに対し、有利に働いていた結果と想定できる。

Pentium IIIの性能比較

 

600B MHz

(Katmai)


600EB MHz

(Coppermine)


CPUmark 99


44.1


55.9


FPU WinMark


3030


3210


3D WinBench


1030


1040


3D WinBenchは1パーセント程度の速度差しかなく、ほぼ同等となっている。これは、このテストが主にグラフィックス性能を計測するもので、CPU性能への依存率が低く、2次キャッシュのサイズや構造の違いが現われにくいことが原因として挙げられる。

以上のベンチマークテストの結果からCoppermineは、外部バスアクセスなどが多い場合にはあまり性能向上は望めないが、状況によっては最大20パーセントの性能向上が得られることもあるといえる。CPUの価格がほとんど変わらないのであれば、600MHzや600B MHzよりも600E MHzや600EB MHzを選択するべきだろう。逆に600E MHzや600EB MHzの価格が600MHzや600B MHzに比べ非常に高いのならば、わざわざ600E MHzや600EB MHzを選択する理由はない。

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