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参加者80名との一問一答により先駆者たちが成功のノウハウを披露――“オンラインショップ何でも大質問会!”in 京都(後編)

1999年11月08日 00時00分更新

文● 服部貴美子 

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“オンラインショップマスターズクラブ”の主催により、京都リサーチパークで開催されたセミナー“オンラインショップ何でも大質問会!”の第2部は、参加者からの質問に、3人の講師陣が答えるという形で進められた。

質問を、その場でパソコンに入力していき、プロジェクター画面に映し出す
質問を、その場でパソコンに入力していき、プロジェクター画面に映し出す



検索エンジンやマスコミの活用法など経験者ならではのアドバイスが続々

特に討論が白熱したのは、ショップの有効なPR法について。もともと、観光案内のコンテンツからスタートしたという青木氏は、「京都という土地の魅力が有利に働いたようだ」と自己分析。写真雑誌への掲載や、各ホームページとのリンクに応じていくうちに、自然にビジネスサイトへと移行できたという。午前の部でも話題に登った“検索エンジン”の活用については、トップページの先頭部分に、ごく薄い色でキーワードを打ち込んでおくなど、隠れ技を公開。

 岸本氏は「検索エンジンによって、有効なメタタグの長さが違ってくる。いろいろと試してベストの方法を取っているつもりなので、どうぞ盗んで」と余裕を見せた 岸本氏は「検索エンジンによって、有効なメタタグの長さが違ってくる。いろいろと試してベストの方法を取っているつもりなので、どうぞ盗んで」と余裕を見せた



これに対し、サイトそのものだけでなくメールを活用していこうというのが小仲氏だ。ソムリエや有名女優らのワイン通を向こうに回し、身近な存在のワイン通としてオピニオンリーダーとなった背景には、メールの活用による“自己定位”の戦略があったという。

個別メール、メーリングリスト上での発言、メールマガジンという“3種のメール”を内容とタイミングに留意しながら使い分け、消費者にプッシュ。「いろいろな情報であふれ返っているウェブの世界で信頼を得るには“自分が何者であるか”を明らかにしていく姿勢が大切」と述べた。同じ意味で、住所や電話番号といった連絡先の明記も、オンラインショップには必須項目と考えているようだ。

 小仲氏が発行するメールマガジンには、2500人もの読者がいる。配信サービスは『まぐまぐ』などいくつかあるが、登録者の情報を公開の可・不可など、条件に違いがあるので、登録前にしっかり検討しておきたい 小仲氏が発行するメールマガジンには、2500人もの読者がいる。配信サービスは『まぐまぐ』などいくつかあるが、登録者の情報を公開の可・不可など、条件に違いがあるので、登録前にしっかり検討しておきたい



また、雑誌などへの登場回数が多い講師陣に対して、「どうしたら取材を受けられるのか?」という質問が出たが、岸本氏は「一度載れば、何度でも載る。あとは、自分の店がどんな特徴を持っているのかを、リリースとしてまとめ、常に持ち歩くようにしている」と回答。小仲氏も、「取材を受けた履歴は、ホームページの中にも掲載している。それが、信頼力につながる場合もあるので……」とコメント。ここで司会の森本氏が、有料メールマガジンの案内文を掲示していることについて触れ、商品以外のサービスでも、売れるものは積極的にアピールし、訪問者を買う気にさせる仕組みを作ることが大切であるとまとめた。

経費削減や業務提携など継続するためのコツもある

無店舗・ローコストと考えられがちなネット通販にも経費の悩みはある。その代表といえるのが“配送料”だろう。

岸本氏からは、「とりあえず、2ヵ月間は出した先を記録に取ってデータを集め、北海道と沖縄が全体の3パーセントに満たないと納得してもらえれば、全国均一料金を勝ち取ることも可能」と体験に基づくアドバイスがあり、参加者は熱心にメモをとっていた。

 この日、会場に集まったのは、オンラインショップをすでに開業しているショップマスターが中心。加えて、これからネット通販事業を始めたいという企業関係者や個人の参加も少なくない。京阪神のみならず、関東や四国からの遠征組も多く、ネット事業への関心の高さがうかがえた
この日、会場に集まったのは、オンラインショップをすでに開業しているショップマスターが中心。加えて、これからネット通販事業を始めたいという企業関係者や個人の参加も少なくない。京阪神のみならず、関東や四国からの遠征組も多く、ネット事業への関心の高さがうかがえた



無料のショッピングモールが増えているが、岸本氏は「あくまで個人的な見解だが、魅力的な店が集まるとは考えにくい」といい、競争力のない店が集まる場所になってしまうことを危惧しているようす。モールではないが、青木氏のようにインテリアに関連のあるサイトとの相互リンクにより、集客効果を上げている事例もある。「地理的な制約がない分、広い範囲からテーマに合う店を選び出し、支店のような形で運営していけば、お互いにプラスになる」(青木氏)。

 末尾が“com”のドメインについて質問を受けた森本氏は、「覚えやすいし、サーバーを日本に置くことも可能。費用もne.jpに比べると安価な場合が多い」と回答。これから取得する場合には、選択肢の1つに入れてもよさそうだ 末尾が“com”のドメインについて質問を受けた森本氏は、「覚えやすいし、サーバーを日本に置くことも可能。費用もne.jpに比べると安価な場合が多い」と回答。これから取得する場合には、選択肢の1つに入れてもよさそうだ



未払いやクレームへの対応

相手の顔が見えないだけに、商品代金の未回収を懸念する声が高い。岸本氏は「通販だから、注意するのではなく、ものを売る店を開くなら、万引きを許さないという厳しい姿勢をとるのは当たり前」と厳しい口調で語り、メール確認、電話、書留の送付など、期日を決めて督促を続けていることを説明した。

銀行への払い込み状況は、即時通信サービス(有料)を申し込むだけで、簡単にチェックができる。「督促が遅くなるほど、回収が難しくなるはず。また、住所や氏名を記入する際に、マンション名などの細かい項目に抜けが多い人など、“におい”のする注文には応じないという予防策も必要」と岸本氏が述べると、青木氏も「不安がっている人に押し売りするのはトラブルの元。断る勇気を持ってください」とアドバイス。

一方、食品を扱っている小仲氏からはクレーム対応について「メールではなく電話で内容の確認と説明をして、納得してもらえない場合は送料をこちらが負担して返品に応じている」との回答があった。岸本氏は、「衣料品ではサイズや色イメージの違いによる交換の希望が多い。きちんと対応しておけば、リピーターになりやすい顧客層でもある」と、アフターケアの大切さを訴えた。
メールの返信が遅れないように、定型文を作っておくのは、もはや常識。「受注の有無は、外出中iモードでチェックし、まずはひな型で“無事に届いた”という意思表示をする」(青木氏)という手法は、顧客の信頼を得る意味で重要だ。小仲氏は「しかし、ひな型そのままでは、消費者にも分かってしまう。一言添えたり、記号を入れて視覚的に楽しくみせるのも一案」とパーソナルな対応の重要性を述べた。


10年後には大金持ち? 今後の課題と目標について

これからの検討課題の1つとして、決済方法の選択が挙げられた。たとえば、海外からの注文について「断っている」(青木氏)、「2年前までは対応していたが、決済の面で難しく、心理的負担が大きいので止めた」(岸本氏)という意見がある一方、個人商店でもクレジット決済システムを採用できるようになった今では「ファックスか国際電話で連絡を取りながら、クレジットカードで支払ってもらう」(小仲氏)との声も。

手数料の負担や現金化のタイミング、顧客層に応じた使い分けなど、いろいろな条件を比較した上で、再点検していく姿勢が必要だろう。

10年後に自分の未来像について、岸本氏は「大金持ちになってみせます」と笑顔を見せながら、米国衣料販売に特化していく意気込みを語った。小仲氏は、「商品の種類を減らしてでも、いいものを丁寧に売りたい」と、専門店としての姿勢を強調。最後に青木氏が「目標年商は1億円。商店主でなく、企業になっているようにしたい」と大きな夢を語り、4時間近くにもおよぶ質疑応答は幕を閉じた。

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