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“ICCビエンナーレ'99”――グランプリはペリー・ホバーマン氏(米国)の『タイムテーブル』

1999年10月15日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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過去、現在、未来の映像を自在に往来できる『タイムテーブル』

14日、東京新宿のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)において、“ICCビエンナーレ'99”のグランプリ発表会が催された。“ICCビエンナーレ'99”は、メディアアートの新しい表現の可能性を追求し、優れた新人を発掘する企画展で、10月15日から11月28日までICC内において開催中。最新テクノロジーを駆使したメディアアート作品が、日本を始め、フランス、米国など世界各地から集まっている。本稿では、グランプリ発表の模様と、その作品を中心にお伝えする。

今回で2回目を迎える“ICCビエンナーレ'99”のテーマは、相互作用、互いに影響し合うという意味の“インタラクション”。“インタラクション”というテーマを作品に入れ込む重要なファクターには、“時間”と“習熟”が深く関わっている。“時間”とは、観客がどのくらいでその作品を分かるようになるか? ということ。“習熟”とは、ゲームと同じように慣れることで、その面白さが分かるということ。この要素を満たすような作品を中心に優秀作を選出したという。

今回、グランプリに輝いたのは、ペリー・ホバーマン氏(米国)の『タイムテーブル』という作品。また、準グランプリには、エドゥアルド・カック氏(ブラジル)の『ウィラブル』と、マーティン・リッチズ氏(英国)の『インタラクティブ・フィールド』の2作品が選ばれた。

グランプリに輝いたペリー・ホバーマン氏(中央)、準グランプリのエドゥアルド・カック氏(左)、マーティン・リッチズ氏(右)
グランプリに輝いたペリー・ホバーマン氏(中央)、準グランプリのエドゥアルド・カック氏(左)、マーティン・リッチズ氏(右)



グランプリ作品『タイムテーブル』は、巨大な円卓の周りに4組みのコンソールがあり、それらを操作すると、中央の円形テーブル上にいろいろなオブジェクトが投影されるというもの。

グランプリ作品の『タイムテーブル』。中央に現われる鮮やかなオブジェクトを自在に操る
グランプリ作品の『タイムテーブル』。中央に現われる鮮やかなオブジェクトを自在に操る



オブジェクトは、躍動感のある球体や、人間の手の形をしたものなどで、さまざまに変化していく。過去、現在、未来の映像を自在に往来でき、さらに4組のコンソールの操作によって、相互に影響を及ぼしあいながら変容していく。目の前で繰り広げられる“時間の小宇宙”が、あたかも自分の手の内で支配できるような錯覚を及ぼし、新しい世界観を観客に与えてくれる作品である。

コンソールの部分。オブジェクトが変わると、それに合わせてコンソールのアイテムも変化する
コンソールの部分。オブジェクトが変わると、それに合わせてコンソールのアイテムも変化する



みごとグランプリに輝いたペリー・ホバーマン。喜びもひとしお
みごとグランプリに輝いたペリー・ホバーマン。喜びもひとしお



予想しない奇妙な動きと音が楽しい『インタラクティブ・フィールド』

また、準グランプリの『インタラクティブ・フィールド』は、四角いステージ上に並んだ36枚のアルミパネルが観客に反応し、まるで生き物のように動き出すという作品。



まるで生き物のように動き出す36枚のアルミパネル

観客が近寄るスピードやリズムにそれぞれのパネルが敏感に反応していく、その動きがとても面白い。仕掛けはステージの下に縦横6列ずつ並ぶセンサー。これが観客の動きを感知し、2つのコンピューターシステムを介して36個のステッピングモーターを駆動させる。観客の動きに対し、動作パラメーターがランダムに設定されており、予想できないような動きかたをする。また、モーターが駆動すると、その動きに応じて音を奏でる。その音と動きのマッチングの妙が楽しく、作品に命を吹きこんでいる。

準グランプリを受賞したマーティン・リッチズ氏。動作音は意図して作ったものではなく、モーターによる副次的な作用とのこと
準グランプリを受賞したマーティン・リッチズ氏。動作音は意図して作ったものではなく、モーターによる副次的な作用とのこと



“伝説”と“現実”の顔を持つ幻想の鳥“ウィラブル”

もう一方の準グランプリは『ウィラブル』という作品。会場の一角にアマゾンを模した人工の森が作られている。そこにテレロボット魚が中空に浮いている。これは魚の形をしたマウスのようなインターフェースで操作する。魚の動きはソナーユニットで追跡され、3次元データとしてVRMLサーバーに送られると同時に、バーチャル空間にいる魚のアバター(化身)が、そのデータに応じて動く。また、テレロボット魚に装備されているカメラによって、その映像はリアルタイムでストリーミング配信される。

アマゾンを模した人工の森に浮いているテレロボット魚。下腹部にカメラが付いている
アマゾンを模した人工の森に浮いているテレロボット魚。下腹部にカメラが付いている



テレロボット魚を操る魚型のインターフェース
テレロボット魚を操る魚型のインターフェース



これ以外にも、さまざまな仕組みを凝らしている。たとえば、森にはピン(Ping)バードという鳥が住んでいる。このピンバードは、アマゾンにあるサーバーに向けてPingコマンドを送るテレロボット鳥で、インターネット上の交信量を測定し、その増減に従って歌を囀(さえず)るようになっている。

3作品は、いずれも高度なテクノロジーを使ったメディアアート作品であるが、そのテクノロジーや仕組みを知らなくても、直感的に操作してみて面白さが伝わってくる。

惜しくも、グランプリや準グランプリに漏れたほかの優秀作品については、Vol.2でお伝えする。

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