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「身体のファンタスムの情報化」――アートラボ第9回企画展“分離する身体”CONNECTING RE-BODY より

1999年10月12日 00時00分更新

文● 喜多曜介

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6日より、東京、代官山のヒルサイドプラザにて、アートラボ第9回企画展“分離する身体”CONNECTING RE-BODY が開催されている。アーティストの関口敦仁氏とキヤノン・アートラボのコラボレーションによる、意欲的なアイデアに溢れた本作品をレポートする。

会場全体が異空間を演出

会場のヒルサイドプラザA棟は、地下にある。入り口からスロープを下っていくと、奇妙なオブジェで満たされた会場に入る。壁面には、これまた異形の人間像が動き回る映像が投影され、会場全体が異空間を形成している。作品に触れる、というよりも、作品に入る、そんな感覚を持った。“分離する身体”は参加型のインスタレーションであり、観客個人の身体データが作品世界に反映される。以下、作品鑑賞の手順に従って紹介していく。

会場全景。入力デバイスを兼ねたオブジェ群と、壁面全体にプロジェクションされる映像
会場全景。入力デバイスを兼ねたオブジェ群と、壁面全体にプロジェクションされる映像



音声で、自分のIDを登録

まず個人情報の登録と呼び出しのため音声を登録する。しゃべる言葉は何でもよいのだが、後々このキーワードで自分の情報を呼び出すことになるので、あまり恥ずかしくない言葉が無難だ。自分の場合は名前にした。

この音声でのID登録に、キヤノン開発の音声認識エンジン“UTalk”が使用されている。これは登録したデータを呼び出しているところ。この音声でのID登録に、キヤノン開発の音声認識エンジン“UTalk”が使用されている。これは登録したデータを呼び出しているところ。



CCDで、外面情報を入力


次に外面情報として、CCDで外皮テクスチャーをサンプリングする。人型がくりぬかれたオブジェの中央に立ってポーズをとる。

キャプチャーをしているところ(左)と、オブジェに貼られたテクスチャー。


温度センサーで、内面情報を入力

ペン型の温度センサーを使って、内面情報を入力する。ここで得られた、経絡の体温情報と、先ほどの外皮情報を基に、自身の“分離する身体”を生成する。

経絡情報を取っているところ。ガイドに従って、10ヵ所近くの体温を入力していく。経絡情報をサンプリングする部位は、頭、腕、足のどれでも可。


生成された“分離する身体”(スクリーン内)。経絡情報から、形状、動きが自動生成される。自分の幽体(?)は、モジモジした内向的な動作をしていた。手前に見えるオブジェは、この後紹介する"分離する身体"との対話装置。
生成された“分離する身体”(スクリーン内)。経絡情報から、形状、動きが自動生成される。自分の幽体(?)は、モジモジした内向的な動作をしていた。手前に見えるオブジェは、この後紹介する"分離する身体"との対話装置。



バーチャルモデラーで、“分離する身体”と対話

さらに、上写真の装置で生成された自分の“分離する身体”を呼び出し、形状をいじることができる。4面の触覚センサーを用いたバーチャルモデラーは、つまんだり、押し込んだり、ねじったりといった粘土細工を彷彿(ほうふつ)させるインターフェースを備えている。

“分離する身体”と対話する装置と、その操作画面
“分離する身体”と対話する装置と、その操作画面



観客から生み出された“分離する身体”たち。 観客の外皮および経絡情報を反映し、それぞれ動きや形状の異なる10数体が仮想空間に集う。観客から生み出された“分離する身体”たち。 観客の外皮および経絡情報を反映し、それぞれ動きや形状の異なる10数体が仮想空間に集う。



手前の円形のデバイスで、仮想空間内部のポテンシャルに影響を与えることができる
手前の円形のデバイスで、仮想空間内部のポテンシャルに影響を与えることができる



身体のファンタスム(幻像)が具現化される面白さ

この作品では、観客個人の身体の外面および内面情報から、通常、不可視である“何か”を抽出し、観客にフィードバックする試みが行なわれている。

実際、自身のデータによって生成された“分離する身体”は、初めて目にするにもかかわらず、その外観や動きに奇妙な親近感を覚えてしまった。ただ、その感覚は、自身の幽体離脱というよりも、分身、子供を眺めている感覚に近いかもしれない。

この作品をどう感じるかは人それぞれだと思う。興味のある方は、まだ会期中であるので、実際に自身で体験して見られることをお勧めしたい。

「人の内面情報としての“経絡”を活かした作品を作りたかった」と語る、関口敦仁氏。このテーマでの最初の作品ということで、いろいろ試行錯誤中とのこと。今後の作品の展開にも注目したい「人の内面情報としての“経絡”を活かした作品を作りたかった」と語る、関口敦仁氏。このテーマでの最初の作品ということで、いろいろ試行錯誤中とのこと。今後の作品の展開にも注目したい



キヤノン(株) アートラボ
http://www.canon.co.jp/cast

    アートラボ第9回企画展“分離する身体”CONNECTING RE-BODY(C)関口敦仁 Canon ARTLAB会期:1999年10月6日(水)~10月17日(日) 11:00~20:00 入場無料 会場:東京代官山ヒルサイドテラス内、ヒルサイドプラザ主催:キヤノン(株)アートラボ TEL 03-5410-3611

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