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ネットワークの“100メートル道路”を――“2005年に向けた次世代ネットワーク構想”報告会より

1999年10月08日 00時00分更新

文● 編集部  井上猛雄

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4日、東京商工会議所において、(財)日本データ通信協会の主催により、“2005年に向けた次世代ネットワーク構想”と題する報告会が開かれた。郵政省は“次世代ネットワーク懇談会”(座長:斎藤忠夫、東京大学教授)を設け、次世代ネットワーク上で展開するアプリケーション、コンテンツ、プロダクトを安全かつ便利に実現する環境整備と、その推進方策について検討、報告書をまとめた。今回の報告会は、この報告書を元にしたものである。慶応義塾大学教授で、検討部会主査である土居範久氏より報告があった。

報告会の会場風景
報告会の会場風景



ネットワークの“100メートル道路”を作るために

インターネットの登場により、情報の創造と流通を基礎とする経済社会に移行し、新しい情報通信のネットワークを構築することが急務になっている。米国でのインターネット普及率は、学校で80パーセント以上、家庭でも60パーセント近くにものぼる。米国では確定申告を各家庭でするため、税金対策のためにパソコンを利用する土壌があった。これに対し、日本のインターネット普及率は、学校で約20パーセント、家庭で約10パーセントという状況にある。

こういった米国での動きに対し、遅ればせながら我が国でも、“100メートル道路”に相当する次世代ネットワークを構築する必要があると、土居氏は説く。その意義は、情報通信市場の発展が新ビジネスを創出し、日本経済を再建する原動力になること、この分野で日本のグローバル化を推進できること、国民の情報リテラシーを向上できることが挙げられる。

それでは実際に100メートル道路を作る前に、どのような変化が起こってくるのであろうか? 2005年までには多様なニーズに対応するアプリケーションソフトやコンテンツが生まれてくる。“ネットワークがアプリケーションやコンテンツを規定する時代”から、“アプリケーションやコンテンツがネッワークをリードする時代”になるという。

こうした次世代アプリケーションやコンテンツを実現するためには、いろいろな技術的課題を解決しなければならない。超高速大容量化、認証技術や高度フィルタリング技術によるネットワークシステムの信頼性向上、デジタルコンテンツの流通拡大、電子決済システムの普及などなど。また、制度的な問題も重要である。たとえば、著作権法の問題や、電子請求書や領収書など商法上の有効性の検証、電子署名・電子認証に関する法制度の導入、ネットワーク上の肖像権と著作権の問題の見直なおしが必要になる。

また、電子商取引などインターネットの利用が拡大するためには、利用しやすい価格と時間帯で常時接続できなくてはならない。定額料金制についても一般家庭が支払い可能な料金水準で実現することが望ましく、しかも工事費などの付帯的な費用が掛からないように配慮する必要はあると、土居氏は付け加えた。

講演中の土居氏。「日本にネットワークの“100メートル道路”を」と説く
講演中の土居氏。「日本にネットワークの“100メートル道路”を」と説く



2005年にはWDMレイヤーの上にIPを乗せたバックボーンが主流に

アプリケーション開発が活性化すれば通信の需要が増え、それがネットワーク構築の投資に刺激を与える。通信環境が向上すれば、さらに利用者が増える。そしてユーザーニーズが拡大すれば、利便性を向上するような動き、つまりアプリケーション開発が活性化するようになる。このような良循環の環境が整う。

そうした上で次に必要になってくるのが、くだんの“100メートル道路”である。単純に計算してネットワークの通信速度は、3年後には10倍、5年後には100倍の時代になる。100倍になれば、バックボーンは10Tbps、アクセス網は企業で10M~1Gbps、家庭でも5M~10Mbpsぐらいになり、画像を自由に伝送できるようになる。

郵政省が研究している“ギガビットネットワーク”もそういった近い将来を受けてのことである。情報家電などありとあらゆるものが結ばれるようになり、いままで単独にあった携帯電話網、CATV網、インターネット網などがすべて統一したバックボーンにつながって使われるような形になると予測できる。

日本データ通信協会では、2002年にはデータトラフィックが電話のトラフィックを抜くと予想している。バックボーンは、ATMレイヤーの上にIP(インターネットプロトコル)を乗せたものが、SONETレイヤーの上にIPを乗せたものに、そして2005年にはWDMレイヤーの上にIPを乗せたものが主流になるという。

最後に、土居氏は「今後の推進策の基本的な考え方として、アプリケーション開発を含めた次世代ネットワークの構築については基本的に民間主導で推進することが望ましい。そして政府としては円滑な次世代ネットワーク構築のための環境整備、公平な競争環境の整備、基礎・最先端分野の技術開発などを進めていくことが必要である。有線だろうが無線だろが、どこでも誰でも使えるような環境を作ってもらいたい、というのが報告書の狙いであり、希望しているところである」と報告会を締めくくった。

「有線、無線にかかわらず、どこでも誰でも使える環境を」と土居氏
「有線、無線にかかわらず、どこでも誰でも使える環境を」と土居氏

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