エレショーではコンシューマー製品に注目が集まりがちだが、デバイス分野にも面白いものがある。特に日本のデバイスメーカーは世界のトップレベルの技術を持つところばかり。その中から興味深いものをピックアップしてみた。
まずはチップデバイス。最新のデジタル機器では抵抗やコンデンサなどのアナログデバイスを高密度に実装するために面実装デバイス(SMD:Surface
Mounted Device)と呼ばれる非常に小形なものが使われている。チップ抵抗とかチップコンデンサーと呼ばれる製品だ。マザーボードなどの基板をよく見てみるとごく小さい直方体のチップが載っているが見えるはずだ。携帯電話や携帯AV機器のさらなる小型化に応えるため、最近は1.6×0.8mm角のサイズが主流だが、さらなる小型化がトレンドになっており1.0×0.5mmというサイズも増えている。今回のエレショーでは0.6×0.3mmのチップ製品をTDKや村田製作所が展示した。厚みも0.3mmと、もうチップというより“粒”といった雰囲気のものだ。ちなみブースにはルーペが用意されている。
こうしたチップデバイスは小さくなればなるほどメリットがあるわけだが、逆に製造が難しくなる。これまではテープの表面にひとつひとつのチップを貼り付け、それを真空ポンプの要領で吸い取って、基板に載せてハンダ付けする方法が使われていたが、最近はバルクと呼ばれる方法が使われている。写真を見るとわかるが同じ量の部品を扱う場合でも圧倒的に少ないスペースで済むし、使用後のテープという廃棄物が出ない点も大きなメリットとなる。写真はTDKのブースに展示されていたバルクフィーダーと呼ばれる製品だが、この1箱で1.6×0.8mmサイズのチップが5万個入っており、それを真空ポンプで吸い上げて基板に実装する。
これは現在多用されている2×1×0.5mmのチップ部品。最新デバイスはサイズでこれの約2分の1以下、体積で4分の1以下になる |
上の写真より一回り小さい1.6×0.8mmサイズのチップデバイスを5万個詰め込んだパッケージ |
上のバルクパッケージをテープキャリアで供給する場合、これだけの量になる |
TDKのバルクフィーダー。ひとつひとつのチップを真空ポンプで吸い取って右側へ搬送、ハンダ付け工程に入る |
アナログデバイスだけでなく、半導体チップも集積が進んでいるが、より実装面積を少なくするためにCSP(Chip
Scale Package)やMCM(Multi Chip Module)などの技術が多用されている。CSPは半導体チップのチップそのもののサイズの大きさのパッケージを使うことで、MCMは複数のチップをひとつのパッケージにおさめるものだ。いずれも特に目新しいものではないが、今回シャープが複数のチップを積み上げるスタックドCSPの模型を、またエプソンが基板を折り曲げて実装したチップを重ね合わせるF-MCM(Fは折り曲げるの意味のフォールド)を展示した。
シャープのスタックドCSPの巨大模型。3つのチップを積み上げて配線するため実装面積が節約できる。CSPはチップの真下から配線を行なうためほかのパッケージより小さい |
3チップスタックドCSPを応用した製品。より多くのチップを必要とする次世代電話機にも多用される模様 |
エプソンのF-MCM、折り曲げ可能なフレキシブルな基板にチップを実装したあと、折り曲げることでスペースを稼ぐ狙い |
次はトーキンの電磁波吸収シートだ。電磁波対策は製品開発の上で非常に重要だ。せっかく製品を開発してかたちにして問題なく動作しても、電磁波対策がクリアされない限り市場には出せない。前述のチップデバイスの中にもノイズ対策に使うものが多数あるが、このシートはチップに貼り付けたり覆うことで電磁波を吸収する効果を持つ。さまざまなかたちに加工することも可能だ。
トーキンの電磁波遮断シート『バスタレイド』。左側はさまざまなかたちに加工したサンプル |
携帯電話やPHSのバイブレーション機能用のモーター。この小さなモーターが回転することで着信の振動を起こしている。電話機自体の重さが減るに従って、モーターの重さも1.2gから0.4gへと3分の1に減ると同時に小型化も進められているのがよくわかる。
松下電器のブースにて。同社製の携帯・PHSに使われているモーター |
最後はソーテックのパソコンe-oneの開発にもかかわり同社との関係が深い基板メーカーキョウデンは、ソニーのペットロボットAIBO用の基板を展示した。1枚の基板からいろんな形状の基板が切り取られているのがわかる。
1枚基板から複数の基板を取る。形状や枚数が製品のコストに密接に関わってくる |
・エレクトロニクスショー'99
http://home.jesa.or.jp/jes99/index.html