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オンデマンド出版の実験“HONCO on demand”開始

1999年10月07日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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7日、『本とコンピュータ』編集室は、大日本印刷(株)と協力して、一冊でも要望に応じて注文を受け付けるオンデマンド出版の実験“HONCO on demand”を11月11日より開始すると発表した。

左から 大日本印刷ICC本部長の加藤恒夫氏、専務取締役の高橋平氏、『本とコンピュータ』編集長の津野海太郎、アートディレクターの平野甲賀氏
左から 大日本印刷ICC本部長の加藤恒夫氏、専務取締役の高橋平氏、『本とコンピュータ』編集長の津野海太郎、アートディレクターの平野甲賀氏



これは、本とコンピュータ編集室が企画編集した『HONCO双書』の中から希望の本を選び、その注文に応じ、印刷、簡易製本して約1週間程度で発送するもの。1年間の実験期間を予定している。

今回の実験開始に合わせて、『(手の仕事)再発見』(水上勉、宮部みゆき、鶴見俊輔ほか)、『国際円卓議論・本の未来』(シャルチェ、上野千鶴子ほか)、『青空文庫へようこそ――インターネット公共図書館の試み』(青空文庫編)、『オンライン・マガジンを読み倒す』(仲俣暁生、水越伸、和田忠彦)、『誰のための電子図書館?』(津野海太郎)、紀田順一郎セレクションを同時に発売する。それ以降は数冊ずつ順次追加し、20冊程度の発行を予定している。

本の仕様は、モノクロ(スミ1色)、四六版(B6サイズ)、無線綴またはフランス装を選択でき、価格は未定。注文方法は、オンライン版『本とコンピュータ』のウェブ(http://www.honco.net/ondemand/)のほか、電話、ファックス、郵便でも受け付ける。また、書店売りも考えているという。

オンデマンド出版で販売される見本。装丁は無線綴のほか、フランス装も選択できる
オンデマンド出版で販売される見本。装丁は無線綴のほか、フランス装も選択できる



大日本印刷専務取締役の高橋平氏は、「現在、出版に関わるさまざまな分野で新しい対応が求められている。デジタル技術とネットワークの進歩はこれまでの出版業界を取り巻く環境に大きな変化をもたらす。最近では、オンラインマガジンやオンライン書店などが流通しはじめ、大日本印刷でも積極的に新しいメディアに取り組んでいる。“本とコンピュータ”オンライン版も昨年から始めて、さまざまな実験を行なってきた。このような取り組みの流れのなかで、今回の実験を行なうことになった」と語る。

オンデマンド出版の実験結果は公開し、オープンな形態で受便性の高いものにする予定。

『本とコンピュータ』編集長の津野氏は「オンデマンド出版の形態には2つある。1つは流通企業が出版社の委託を受けてやるもの。もう1つは本を生産する側が主体となって行なうもの。スェーデンやフランスなど、ヨーロッパでは数年前からオンデマンド出版がスタートしている。自分たちで出版したいものを自分たちでやるという意味で、今回の試みは後者に近い」と語った。

「今回のオンデマンド出版は本を作る側からのアプローチである」と語る津野氏
「今回のオンデマンド出版は本を作る側からのアプローチである」と語る津野氏



オンデマンド出版には初版がない。そのため利潤の成り立ちをどうするか? 印税10パーセントで支払えるのか? など、たくさんの問題がある。製造面では工程の短縮化とコストの削減を試み、流通面では流通システムの簡素化を行なって、実際にどのあたりに採算点があるのかを考えていく。

なお、今回の実験開始を記念し、11月22日午後2時からシンポジウムが開催される。場所は新宿の紀伊国屋ホール。スェーデンの詩人であるペーテル・クルマン氏が招かれ、“オン・デマンド出版の力”と題されたテーマに沿ってオン・デマンド出版の可能性を探る。

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