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日本TI、本社にDLPデモセンターをオープン――事業戦略も発表

1999年10月01日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本テキサス・インスツルメンツ(TI)(株)は30日、東京・新宿の本社にDLP*(Digital Light Processing)のデモセンターを開設し、合わせてDLP事業戦略説明を行なった。

* DLP:米テキサス・インスツルメンツ社が'87年に開発したDMD(Digital Micromirror Device:詳細は後述)を中心とした、デジタル制御による画像表示技術およびシステムを指す。

日本TI、デジタル・イメージング事業部長堀内豊太郎氏
日本TI、デジタル・イメージング事業部長堀内豊太郎氏



デモセンター開設にあたって挨拶に立った、デジタルイメージング事業部の堀内部長は「(DLP事業について)日本では'96年から開始したが、'98年度ではすでに日本市場が売り上げ、出荷数ともにナンバー1となった」と、日本でのDLP事業の好調さについて述べた。DLPテクノロジー採用メーカーも、世界で28社(うち日本は9社)にのぼるという。今後もDLPテクノロジーの持つ、高精細、高輝度、動画に耐える反応速度の高さなどの優位性で、いっそうの市場拡大を見込んでいるという。

今回開設されたDLPデモセンターでは、プレスや顧客に向けて、DLPテクノロジーの紹介や、DLP採用製品の紹介などを行なっていくとしている。ただし、残念ながら、現在のところ一般ユーザー向けに開放する予定はないとのこと。

米TI社、上席副社長デジタル・イメージング事業部マネージャのボブ・イングランド(Bob W.England)氏
米TI社、上席副社長デジタル・イメージング事業部マネージャのボブ・イングランド(Bob W.England)氏



次に米TIのイングランド上席副社長が、TIのDLP戦略について述べた。「TIは半導体デバイスにおいて、過去3年間DSP(Digital Signal Processor)とアナログIC製品に注力してきた。これによって、その2分野で世界シェア1位となっている。そしてデジタル・ライト・モジュール半導体市場でも1位を目指す」。

DLP製品戦略については、パソコンに接続するポータブルプロジェクターなどのビジネス市場向けと、TVの代替となるプロジェクターやその映画館用製品ともいえるデジタル・シネマといったエンターテイメント市場向けの、2つに分けている。そして、ビジネス市場は成長を続けており、エンターテイメント市場はまだ市場を作っている情況であるという。

製品開発のロードマップとしては、より高解像度・高輝度を狙うものと、小型で低コストを狙うものの、2つの方向で開発を進めているという。DLP初年度の'95年には、出荷数は非常に小さな値だったが、急速な立ち上がりを見せ、'99年には14万台、2000年度には20万台を見込んでいるという(これらはすべてビジネス市場向けのプロジェクター製品)。

また、エンターテイメント向けとして位置付けている、DLP技術を使ったデジタル・シネマについては、4台のプロトタイプ投影機を完成させており、全米の劇場などを巡回しながらデモ上映を行なっているという。上映されている映画はディズニー映画の『ターザン』とルーカスフィルムの『スターウォーズ エピソード1』で、すでに5万人が観たという。来年の早い時期に、このデモを米国以外の国(日本も含む)でも予定しているという。ただし、具体的な時期については未定とのことだった。

TIでは、将来の展開として家庭への広い普及を考えており、TVの替わりにリビングルームに置くタイプや、子供たちがTVゲームを接続し、部屋の壁や天井に向けて投影して遊んでいるといったイメージが紹介された。

記者発表の終わりには、XGA(1024×768ドット)の解像度を持つDMDを3枚使った大型のプロジェクターで、映画の1シーンが上映されたが、液晶プロジェクターに見られるようなはっきりとしたドットの境界も目立たず、また激しい画面の動きでも画像が流れるようなことは見られなかった。きめの細かい明るい画像だったといえる。

デモルームに置かれていた、SXGAのDMDを3枚使用した大型プロジェクター。価格はおよそ2000万円!
デモルームに置かれていた、SXGAのDMDを3枚使用した大型プロジェクター。価格はおよそ2000万円!



TIでは、現在販売しているDMDモジュールの解像度(SVGA:800×600ドット、XGA:1024×768ドット、SXGA:1280×1024ドット)をさらにUXGA(1600×1200ドット)にまで延ばすという。また、解像度はそのままで全体をシュリンクした、小型のDMDの開発にも取り組んでいるという。

これもデモルームに展示されていたプラスの『U2-1080』。このクラスの製品が10万円台になれば……
これもデモルームに展示されていたプラスの『U2-1080』。このクラスの製品が10万円台になれば……



TIはDMDやドライブ回路を販売するのみで、製品は各プロジェクターメーカーなどから出てくることになる。しかし、5月に発表されたプラス(株)のプロジェクターを例に取ると、画質については家庭用として文句がないものの、XGA対応製品が97万8000円、SVGA製品でも77万8000円と、まだとてもTVの替わりになるような値段ではなく、家庭で使われるようになるにはまだ2年程度はかかりそうだ。エンターテイメント市場への展開を考えると、デジタル・シネマの方がより早く実現しそうな印象を持った。

DMDについて

ここではDLPテクノロジーの核となるDMDについて、簡単に説明する。

DMD(金色の枠に囲まれた四角いデバイス)とそのドライブ回路のモジュール
DMD(金色の枠に囲まれた四角いデバイス)とそのドライブ回路のモジュール



DMDの表面の電子顕微鏡写真。真中にへこみのある四角1つ1つがマイクロミラーで、1辺の長さは16μm、ミラー同士の間隔は1μmで整然と並んでいる。最下層のシリコンウェハー上の部分の製造工程は、SRAMのものとほぼ同じなのだという (c)Texas Instruments
DMDの表面の電子顕微鏡写真。真中にへこみのある四角1つ1つがマイクロミラーで、1辺の長さは16μm、ミラー同士の間隔は1μmで整然と並んでいる。最下層のシリコンウェハー上の部分の製造工程は、SRAMのものとほぼ同じなのだという (c)Texas Instruments



DMDの構造図。薄紫のミラー部分1つ1つを、静電界作用によって、対角線を軸に±10度程度傾けることができる (c)Texas Instruments
DMDの構造図。薄紫のミラー部分1つ1つを、静電界作用によって、対角線を軸に±10度程度傾けることができる (c)Texas Instruments



ある方向からの光をDMDに当てる。マイクロミラーを傾けてレンズを通った光が画像を構成するという仕組み (c)Texas Instruments
ある方向からの光をDMDに当てる。マイクロミラーを傾けてレンズを通った光が画像を構成するという仕組み (c)Texas Instruments



DMDでは液晶を使ったプロジェクターと比べ、投影した画像へのドットの目立たなさ、速い反応速度、透過でなく反射型のため高輝度、などといった特徴を持つ。

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