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i820チップセット、突然の出荷キャンセル

1999年09月27日 00時00分更新

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●突然の出荷キャンセル。トラブルの原因は?

本来なら9月27日に予定されていたIntel,i820チップセットのデビューが,唐突にキャンセルされた。本来この日,i810Eチップセットとともにデビューするハズだったi820だが,突然延期されてしまった。i820というチップセットそのものがキャンセルされる(無くなってしまう)ことはないだろうが,いつデビューするのか分からない,というのが現状だ。

リリースが再度延期された理由は,i820ベースのシステムに搭載可能なRIMMの本数にあるようだ。Intelはi820ベースのシステムは最大3本のRIMMスロットをサポート可能だとしてきたが,どうやらここに3本のRIMMを装着すると,システムが起動しなくなるというトラブルが生じるらしい(一部には2本のRIMMでも満足に動作しないとも言われている)。

そもそもRambusチャネルには,Rambus DRAM(RDRAM)を32個しか接続できないという“きまり”がある。これは,それぞれのRDRAMに割り当てるアドレス上の制限からくるもので,いくら3本のRIMMスロットがあっても,この制限を無視することはできない。たとえば,RDRAMチップを16個搭載したRIMMを3本装着することは不可能だ(ただし,規格上この場合でも32個分のRDRAMでシステムは動作することになっており,単に32個を超える部分が無視されるだけである。逆にサーバー等の大規模システムではリピーター等を用いることで,32個の制限を回避できる)。

もちろん今回のトラブルは,こうしたRambusの理論上の制限によるものではない。チップ数が理論上の上限に達しないにもかかわらず,複数のRIMMを挿すとシステムが稼動しないのである。

トラブルがある以上,当然原因があるハズだ。原因として考えられるのは,

1) i820チップセットのNorth Bridge(メモリーコントローラー)
2) IntelがOEMに供給するマザーボード(あるいはそのリファレンスデザイン)
3) RIMM(含Direct RDRAMチップ)
4) RIMM用のコネクター等のパーツ
5) 上記の複合

のいずれかに違いない。

●特定のコンポーネントの単独の不良とは考えにくい

一般的には,チップセットの発表を遅らせた以上,原因がチップセットにあると考えるのがスジだ。しかしチップセットに限らず,発表即出荷を基本とする同社の場合,特定のコンポーネントの単独の不良とは考えにくい。即出荷を可能にするために,チップセットだけでなく,RIMM,RIMM用コネクターなど,主用部品はかなりの数が量産され,すでにマザーボードの形をとっているハズだ。それぞれのコンポーネント単位の不良であれば,量産の段階で判明することが多い。特にRambusの場合,それぞれのコンポーネントごとに,従うべき規格が細かく決められている(本来は,この規格を守れば接続性が保証されるハズなのだが)。

コンポーネント単体の問題に比べ,複数コンポーネント間の複合問題は,問題の所在をつかみにくい。しかし,こうした問題を回避するために,Intelは昨年からRIMMの評価や認証に力を入れていた。メモリーベンダのウェブで,RIMMについて調べると,Intel認証品のような記述を見かけることも多い。Intelが認証したRIMMを用いても今回のような問題が発生するのであれば(おそらくだからこそ,発表が急遽中止されたのだろうが),認証のスキーム自体に問題があったとも考えられる。この場合,認証作業そのものの見直しが生じ,i820,ひいてはDirect RDRAMへの移行スケジュールが大幅に遅延することもある得る。

もう1つ考えられるのは,RIMMの認証に用いたリファレンスマザーボードと,実際に販売されるマザーボード(あるいはそのベースとなるデザイン)で,特性の異なる部分があるのではないか,ということだ。つまり,認証作業に用いたマザーボードで動いていたRIMMが,製品版のマザーボードで動かない,という問題である。この場合,マザーボードが作り直しとなるものの,コンポーネントが使えなくなるよりはマシかもしれない(もし,現行の規格が,相互接続性の保証に不充分で,規格から作り直しとなると,年内にDirect RDRAMを立ち上げることはできなくなる可能性が出てくる)。

●Coppermineにも影響を与える出荷の遅れ

Intelは,今回のトラブルに関し,正式なプレスリリースを出していないため,本当のところはハッキリしない。ひょっとすると現時点では,正確な原因はまだ調査中という可能性もある。もしi820のリリースが1ヵ月以上遅れるようだと,10月にも発表されるCoppermineと組み合わせることができるIntel製チップセットはi810Eのみ,ということになってしまう。だがグラフィックス統合型のi810Eでは,正直言ってハイエンド向けには辛い。i820のトラブルが,Coppermineにも暗い影を落としかねない状況だ。

いずれにしても,つい先日はAMDもマザーボードをリコールしたばかり。動作周波数の上昇にともない,マザーボードを作るのが難しくなっているのは間違いないところだ(AMDにとっては今がチャンスなのだが,上述のリコール問題も影響してか,Athlonを搭載した大手メーカー製PCは一向に現われない)。この問題がいつ頃,どう収束するのか注目されるところだ。

1999年9月27日

Text by 元麻布春男

麻布春男氏プロフィール: “DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。Intelアーキテクチャーをはじめデジタルシーンに最も詳しい日本人アナリストのひとり。航空機にも造詣が深く、フライトシミュレーターのヘビープレイヤーでもある。 --------------------------------------------------------------------- (c)1999 ASCII Corporation All Rights Reserved.

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