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NECが家庭用パーソナルロボットの概要を公開

1999年09月20日 00時00分更新

文● 浅野純一

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日本電気(株)は17日、先月末に発表した家庭用のパーソナルロボットに関する説明会を行なった。開発コード『R100』と呼ばれるこのロボットは、家庭の中で人間とコミュニケーションを行なうパートナーとして、またパソコンやAVなど電気製品とのインターフェースとしての役割も持たせたもの。メカトロニクス技術(同社は人工衛星用などのロボットアーム技術を持っている)、画像認識技術、音声認識技術を盛り込んだロボットの可能性を模索する意味で研究開発されたもの。プロジェクトは'97年1月にスタートした。

公開されたパーソナルロボット『R100』。高さは44cm、幅と奥行きは28cm、重さは7.9kg
公開されたパーソナルロボット『R100』。高さは44cm、幅と奥行きは28cm、重さは7.9kg



R100の特徴は、視覚と聴覚を使った、人間に優しいインターフェースを持つこと。両目部分にはカメラを内蔵しており、あらかじめ登録した10人の顔を識別・認識することができる。また内蔵マイクにより、現在は100語程度の不特定話者の声を認識、声によって指示を与えることができる。マイクはボディの前方と左右に計3個内蔵されており、声がする方向を検出することが可能。これにより、声がする方向に振り向いて近づき、顔を見つめて誰であるかを認識、登録ユーザーであれば名前を呼びかけるといった行動が可能になっている。

前面に取り付けられた超音波センサー。障害物をこれで検知してぶつからないように移動を制御する。側面にもセンサーを持つ
前面に取り付けられた超音波センサー。障害物をこれで検知してぶつからないように移動を制御する。側面にもセンサーを持つ



R100の側面。超音波センサーが下に見える。移動用の車輪は前に2輪、後ろはキャスターのみの1輪
R100の側面。超音波センサーが下に見える。移動用の車輪は前に2輪、後ろはキャスターのみの1輪



背面。超音波センサーの下に内蔵バッテリを充電するためのコネクタが見える
背面。超音波センサーの下に内蔵バッテリを充電するためのコネクタが見える



移動手段は本体下部に内蔵された車輪(前2輪、後ろ1輪)をモーターで駆動する。頭部にもモーターが内蔵されており、顔の上下左右などの動きを担当している。この部分にはセンサーが内蔵されており、なでられたり、叩かれたりといった頭部に対する接触をセンスしている。また、ボディの周囲には超音波センサーを内蔵。障害物を検知して、人やモノに接触しないように移動できる。温度と光センサーも内蔵するが、現時点ではあまり使われていない。電源はバッテリーを内蔵、現在は1~2時間の駆動が可能になっている。サイズは幅と奥行きが280mm、高さが440mm、重さは7.9kg。

側面の超音波センサー。その上の小さい丸い部分が側面用の集音マイク
側面の超音波センサー。その上の小さい丸い部分が側面用の集音マイク



手前の人間を見上げつつやり取りを行ない、ビデオメールをテレビに再生しているところ。テレビの電源のオンオフもR100が行なう
手前の人間を見上げつつやり取りを行ない、ビデオメールをテレビに再生しているところ。テレビの電源のオンオフもR100が行なう



パソコンやテレビ、電気スタンドなどを制御するリモコン機能を持ち、音声でコマンドを出すだけで、電源のオンオフなどのコントロールを行なうことができる。たとえば「メール」と言うと目のカメラで映像を、マイクで音声を保存。ビデオメールとして家族宛ての伝言やインターネット経由のメールを出すことができる。また「伝言ある? 」と聞くと、ない場合は「ないよ」と応えるし、ある場合はテレビの電源を入れてそこにビデオメールを再生してくれる。また、パソコンの画面もテレビに表示し、ウェブページのブラウズやページの切り換えなどの音声コマンドにも対応している。

首の付け根部分にセンサーを持ち、触れられた感覚を認識できる
首の付け根部分にセンサーを持ち、触れられた感覚を認識できる



R100が見た映像の認識結果。顔の部分を追いかけてデータベースと一致させている
R100が見た映像の認識結果。顔の部分を追いかけてデータベースと一致させている



自立的な動きもプログラミングされており、人を見つけたら話しかけたり、寝る、起きる、気まぐれにうろつくなどの行動もとる。また感情モデルを持ち、登録人物の好感度によって、また叩かれたりなでられたときにもそれぞれの反応を、たとえばいつも頭を叩く人には呼んでも近づいてこなかったりする。

画像処理、音声認識、インターネット接続などは外部のデスクトップパソコンが担当。UHF波でR100本体とやり取りをする
画像処理、音声認識、インターネット接続などは外部のデスクトップパソコンが担当。UHF波でR100本体とやり取りをする



今回の試作モデルでは、ロボット本体にはハードディスクを含め、パソコンがまるまる1台搭載されており、動きの制御や、発音制御、センサー制御などを担当している。これらはプログラムとしてモジュール化されており、機能の追加や削除が容易になっている。そして本体とは別に、デスクトップパソコンが用意されており、画像認識や音声認識、インターネットアクセス、ビデオメールの保存・再生、リモコン信号の発信などの機能はこちらで行なっている。ロボットとデスクトップ側は無線でデータをやり取りしている。これは画像認識にはかなりのプロセッサーパワーが必要だったり、インターネットとも有線で接続しているためだが、将来的にはロボット本体にまとめて内蔵する方向だという。

そのときの感情や動作に合わせて目と口の部分が光る
そのときの感情や動作に合わせて目と口の部分が光る



ソフトウェアの実装によってはエンターテイメントや介護(コミュニケーションや監視、ホームオートメーションなど)などさまざまな用途もありそうだが、基本的にはパソコンをはじめとする機械と人間とのインターフェース役として、しかもより身近でインタラクティブ、人間にとってアクティブな存在というのがR100のスタンスであり、そしてNECのロボットに対するアプローチである。システム的にも汎用のパソコンを載せたり、パソコン用の音声認識ソフトを流用した点を含め、NECらしい色が見え隠れしているともいえる。ただし、現時点では製品化など具体的な話はなく、あくまで研究開発レベルでのお披露目にすぎない。今後はスタンドアロン型への統合、認識性能の向上などを図りつつ、製品化を模索していくようだ。

現在R100に関する情報は、http://www.incx.nec.co.jp/robot/で公開されており、ここでは新しいアイデアや愛称などユーザーの意見も募集されている。これまでに1500あまりの意見が寄せられているといい、ユーザーの関心も高いようだ。

試作プロトタイプ集合。完全に動くものと、モックアップだけのものがある
試作プロトタイプ集合。完全に動くものと、モックアップだけのものがある

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