福岡県福岡市で3日に開催された“九州Linuxコンベンション'99”から、講演の第2部と第3部をレポートする。第2部ではシステムコンサルタントの森岡和才氏が、“技術的な側面からのLinuxの特徴とその有効性”と題した講演を行なった。
古いマシンでLinuxを体験してほしい--森岡氏
森岡氏は講演の冒頭、Linuxの“マニアだけが知っていて、マニアだけが喜んでいるもの”という現状は、かつてパソコン(IBM
PC)が登場したときの状況に酷似していると指摘した。そして、「その後のパソコンの普及を考えると、Linuxの将来もあるいは同じようになるかもしれない」との予想を示した。森岡氏は講演の参加者に対し、「ジャンク屋で一番安いパソコンを購入して、取りあえずインストールしてみてください」と、積極的なインストールを推奨。そうすれば「どうして世の中がこういう動きかわかります」と、まずLinuxを体験してみることを勧めた。
第2部の講師を務めた森岡和才氏 |
「1980円くらいで売っている486で、インターネットのサーバーとして起動します。その上、遠隔保守が可能で、Windows
NTとの違いがはっきりわかります」と語り、森岡氏が手がけたLinuxサーバーの実例を紹介した。
さらに森岡氏は、Linuxの将来像について、「現在はサーバーでのみLinuxが使われていますが、将来はデスクトップにLinuxが君臨すると思います」と言及。開発が遅れているといわれるインターフェースについても、「KDEの操作性は、英語環境ながらWindowsと遜色ありません。日本語環境についてはGNOMEで可能ですので、これは来年のお楽しみと言えます」と、特に問題がないことをアピールした。
最後には、「来年は日本でLinuxが盛り上がるだろう」と予言し、講演を締めくくった。
講演終了後は森岡氏を囲んでLinux談義が始まった |
Linuxの問題点を端的に指摘する久保氏
第3部の講師は、Linux Business Initiative(LBI)会長の久保元治氏。(株)サードウェアの代表取締役でもある久保氏は、“Linuxの最新動向とビジネス利用における問題点”について講演を行なった。久保氏はLinuxについて、技術者が自発的に参加し、オープンソースを共有財産としていることを指摘。そのため、Linuxのサポートでは“自助努力”“自己責任”“相互扶助”がベースになっているという持論を披露した。その上で、「ボランティア精神によるインターネット上のサポートについては、情報が多すぎると感じています。ほしい答えをすぐに検索できない、答えやすい質問を出さねばならないなど、まだまだ情報が整理されていない問題があります」と、Linuxのサポートに関する問題点を整理して紹介した。
第3部の講師を務めたLBI会長の久保元治氏 |
久保氏は、「ユーザーが本来自助努力するべきものを、サポートすることがビジネスへと発展しています。無償のボランティアに頼るか、商用サポートにするか、サポートの選択肢が拡がっているのです」とLinuxビジネスの現状を紹介しつつ、究極のサポートはソースそのものが公開されている点だと強調。「ソースを見ることで自分のミスが高い確率で発見できます。私はコレでなんども救われました」というエピソードも披露した。
また、Linux導入のコストについても言及。Linuxにはアプリケーションソフトが少ないため、作り込んだ場合にはWindows
NTよりも高くつくことがあると指摘した。その上で、ソフトやハードは安価でも、この点においては検討の余地があると語った。
気になるLinux活用事例としては、岐阜女子大学の例を紹介。同大学では、1400人分のメールサーバーの管理を、東京で行なっているという。「これまで、OSのダウンはゼロです。Linuxなら地理的な問題はなく、管理が可能となります。安定したハードを選び、万一の事態を想定しておくのがポイントです」と語り、九州の企業人に対して大きくアピールした。
最後に久保氏は、Linuxの問題点についても指摘。「Solarisなどに比べるとハイエンドマシンではまだまだ力不足」だと語り、「成功・失敗の事例がまだ少なく、それの掘り起こしが必要だと感じています」と延べ、講演を終えた。
この日に開催されたセミナーでは、時間とともに参加者が増え、Linuxへの高い関心度が伺えた。セミナー終了後は、名刺交換や商談を始める人たちも多く見られた。福岡におけるLinux関連のコンベンションは初めての試みとということだったが、この盛況ぶりを見ると次の開催が楽しみだ。