9月3日、福岡県福岡市の西新パレスにて、“九州Linuxコンベンション'99”が開催された。主催は、北九州市に本社をおくラ・ベル・エポック(株)。会場には12社の地元企業が出展し、大いに賑わった。
会場には、多くのビジネスマンが訪れた |
出展企業は以下の通り:
福岡リコー(株)、リコーテクノシステムズ(株)、(株)富士通九州システムエンジニアリング、(株)富士通愛知エンジニアリング、(株)沖九州サービス、オカベマーキングシステム(株)、(株)オリテック九州、エプソン販売(株)、シャープ・エレクトロニクスマーケティング(株)、(有)ZOMA、(株)アプロ、(株)ソア・システムズ
ラ・ベル・エポック社の出展内容は、Linuxサーバーを中心としたモデルオフィスの提案やシステムなど。同社の統合開発環境ソフトウェア『ル・クローン
for Linux』の展示も行なっており、主に企業に向け管理システムの提案が中心だった。
今回のコンベンションで注目されるのは、同時開催される3つの講演・セミナーと、Linuxの無料インストールサービスである。
Linuxの無料インストールコーナー
会場中央には、リナックス無料インストールコーナーが設けられ、希望者のパソコンに対してセットアップが行なわれた。事前申し込みとマシンの持ち込みが条件となっていた。コンベンションそのものは企業を対象にしているが、インストール希望者は個人での申し込みが圧倒的に多かったという。福岡市の西隣に位置する前原市からパソコンを持ち込んだ男性は、「Linuxに興味があります。まずは趣味の範囲で使い、将来的にはMacを含めたLANを組んでみたいです」と語る。
彼の持ち込んだマシンは、CPUがPentium-60MHz、メモリー40MB、HDDが500MBというスペック。「古い機種なので使っていませんでした。これにLinuxを入れて、サーバーとして利用できると嬉しいですよね」。彼のこの言葉は、この日に開催されたセミナーの講師の誰もが口にした、Linux活用の具体例にあたるものだ。
インストール作業は、セミナーの講師を務めた森岡氏が行なっていた。インストール画面に向かう森岡氏は、「今年末か来年には、グラフィカルな画面で操作が可能になりますよ」とニコヤカだ。
Linuxのインストール作業を行なう森岡和才氏(右)は、今回のセミナーの講師でもある |
なかには、インストールの無料サービスと聞いて、会社までパソコンを取りに帰ったという会社員もいた。持ち込んだパソコンはノートタイプ。「今までWindows95を入れていたが、Linuxにして社内のサーバーとして使いたい」とのこと。「コストが安い点には注目していたが、インストールが難しいのでLinuxは敷居が高かった。この機会に社内LANに使えるといいのだが」と、かなり期待度が高い。
端末はWindows98が大半。そんな中で光るZOMAのKDE、GNOMEのデモンストレーション
会場に用意されたパソコンは、ほとんどがWindows 98である。これだけを見ると、Linuxとどう関わるかがわかりにくい。商用では“端末にはWindowsを”という要望が多いためであろう。そんな中、北九州市でイントラネットなどのコンサルティングを行なっている(有)ZOMAでは、KDE(K
Desktop Environment)をディスプレーに表示していた。デモンストレーションで、さまざまなウィンドーを開いて見せてくれる。Windows95、98と同様の操作で動くので、GUI環境もすでにここまで来ているのかと実感できるものになっていた。ZOMAでは、KDEを実際に操作するデモンストレーションを行なっていた |
ZOMAの奥野氏は、「英語圏ならば、KDEが十分使えるGUIになっています。ただ日本語表示においては問題があり、まだ時間が掛かりそうです。日本語の問題はGNOMEの方が環境はいいです」と、語る。(株)ジャストシステムが開発を進めている『ATOK12
SE for Linux』については、「使用感がもうひとつ。だが、このような動きからもわかるように、近い将来日本語環境が整い、日本でもエンドユーザーがLinuxをOSとして選ぶ時代がやってくるでしょう」と評していた。
GNOME上でNetscape Navigatorを起動させてネットサーフィン |
奥野氏は、個人ユーザーにもLinuxは普及すると見ている。「Linuxの特性として、ハングアップした時、アプリケーションソフトは落ちてもOSは落ちないという点が、一般ユーザーに歓迎されるはずです」。ブースでは、GNOME上でNetscape
Navigatorを起動させた画面を使いながら、Windows98やMac OSと遜色ない操作性をアピールしていた。
KDEやGNOMEを初めて目にするユーザーが、ディスプレーに釘付け |
今回のコンベンションは平日開催の上、来場者にも企業の関係者が多く、ほとんどはセミナーへの出席が目的のようだった。会場に設置された応接コーナーでは、セミナーの前後に商談するビジネスマンの姿も多く見られた。ラ・ベル・エポック(株)の古野開発部長は、「今回は我が社の主催でコンベンションを行ないましたが、将来はLinuxに関わる複数のベンチャー企業の共催で開催していきたいと思っています」と語っていた。