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印刷製版・広告・出版業界向けの高速通信ネットワーク“GTRAX”を大日本スクリーン製造、富士写真フイルム、NTTコミュニケーションズが共同開発

1999年09月02日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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効率的なデジタル配信が可能な“GTRAX(ジートラックス)”

大日本スクリーン製造(株)、富士写真フイルム(株)、NTTコミュニケーションズ(株)の3社は、31日、共同記者会見を開き、印刷製版・広告・出版業界向けの通信アプリケーション“GTRAX(ジートラックス)”を共同開発し、9月1日より実用化トライアルを開始することを発表した。

GTRAXの最大の目的および役割は、新たな高速通信ネットワークを安全かつ迅速に、安価に提供することで、印刷業界の変革と活性化を促すことといえる。
 
GTRAXは、NTTコミュニケーションズの豊富なアクセスポイントを持っており、全国各地からダイヤルアップを含む64kbps~128kbps(124AP)、64Kbps~1.5Mbpsのフレームリレー接続(110AP)、1Mbps~6MbpsのATM接続(50AP)を用意している。これによりクライアントからのリモートアクセス、支店・中規模拠点、大規模拠点からのアクセスまで幅広くカバーすることが可能。
 
このように各アクセスポイントから、GTRAXセントラルサーバーにデータアクセスすることで大容量のコンテンツファイルを効率的にデジタル配信できることがGTRAXの最大の特徴である。

さらに印刷製版・広告・出版業界に適した機能もGTRAXの特長といえる。

デジタルコンテンツ転送支援機能として、データの圧縮、暗号化をはじめ、送受信状況を確認するトラッキング機能やプリンターへの出力命令を添付するジョブチケット機能などを持つ。さらにロバスト機能は、ファイルの転送途中で回線切断やPCのダウンが起きた場合でも、既に受信した部分を再送信せずに中断からの再開が可能。
 
また、リモートプルーフ機能を使うと、印刷側がクライアント側に校正用データを送り、クライアント側のプルーファー(高性能の校正用プリンター)などに自動出力し、効率よく校正チェックが行なうことができる。

“コンカレント・パブリッシング”の実現をもたらす

デモンストレーションでの大日本スクリーン製造(株)の郡司秀明氏の説明によれば、デジタル化がもたらした変革によって、印刷業界は短納期から超短納期という顧客ニーズを生み出し、営業車でのスニーカーネットからデジタルネットワークへの変化を余儀なくされている。また、企画から印刷までのワークフローの合理化、デジタル化が要求されている。こうしたニーズに応えるために、GTRAXはネットワークを使って、クライアント、デザイン制作、製版・印刷の各企業間でシームレスな制作環境を提供し、制作工程の大幅な省力化とコスト削減を実現する。このようにGTRAXを導入することで、全工程を同時にかつ並列に進行することができる“コンカレント・パブリッシング”の実現をもたらすという。

今回のトライアルでは、企画・制作から印刷までの一連のワークフローにGTRAXを利用し、実務における有効性の確認と機能・性能などの技術実験をする。このトライアルには30社がクライアントとして参加する予定で、来年、2000年3月31日まで行なわれる。
 
クライアントソフトはオープン環境を実現しており、Macintosh、Windows、UNIX版が用意されている。さらにクライアントソフトのプラグイン仕様を公開することで、サードベンダーやユーザーによる機能拡張が可能。

会見挨拶で見せたNTTコミュニケーションズの意欲。宅配便との競合も考え得る

会見の冒頭で各社が挨拶を行なった。まず、富士写真フイルム(株)の取締役営業本部本部長の今井祐氏は、「画像処理システムで培ったアルゴリズムを生かして、最大にして最適なサービスを提供したい」と語り、続いて、大日本スクリーン製造(株)の専務取締役グラフィックアーツ事業本部本部長の末武隆成氏は「3社の協同で、デファクトスタンダード的なネットワークにしていきたい」と語った。同じ業界同士だけに当たり障りのないコメントとなったが、これとは対照的だったのが、NTTコミュニケーションズ(株)の取締役ソリューションズ事業部第3営業部部長の井上英也氏。
 

会見に望む3氏。左より富士写真フイルムの今井氏、大日本スクリーン製造の末武氏、NTTコミュニケーションズの井上氏
会見に望む3氏。左より富士写真フイルムの今井氏、大日本スクリーン製造の末武氏、NTTコミュニケーションズの井上氏



同社はNTT分割にあたって、7月1日に発足したばかりの新会社だが、他のNTT東日本やNTT西日本とは異なり、最初からNTTのイメージから脱却しようという姿勢が強い。さまざまな提携の話題もあちこちにあり、今回のGTRAXもその1つといえるだろう。

井上氏は「(NTTコミュニケーションズは)国際通信および長距離通信のイメージがあるかもしれないが、企業に対して通信を介したソリューションを提供するのが、ソリューション事業部の役割だ。以前、NTTは‘10Mbpsを1万円で’ということを言っていたが、これに対する研究の成果の1つがここにあるGTRAXといえる。これからは適切な形づくり、セキュアで、高速で、リーズナブルな雛形を作り上げ、新しいIPネットワークを構築していきたい」と新しい分野への進出に意欲を見せていた。
 
さらに井上氏は「GTRAXは強固なセキュリティーを備えており、宅配便との競合も考え得るものだ。ネットワークコストについても加入数が増えれば価格を下げることも考えられる」と印刷向けだけにとどまらないような勢いの発言も飛び出した。

LAN間接続でクライアント、デザイン・制作、製版・印刷間を有機的に繋ぐ

すでに同様の大容量高速ネットワークとして、日本サイテックスの“BIO”や“WAM! Net”があるが、GTRAXは単にコンテンツを高速で送るだけではなく、LAN間接続でクライアント、デザイン・制作、製版・印刷間を有機的に繋ぐ点が目新しい。
 
こうした高速大容量ネットワークが定着すれば、今井氏の「これまで週刊誌を東京で制作する場合には、物流などのことを考えると、印刷する場所は小田原あたりが限界だった。しかし、GTRAXを使えば距離は関係なくなる。物流体制も変わるだろう」との言葉通り、GTRAXは、印刷製版業界のさらなる変革と活性化を促し、事業規模・市場規模を拡大する可能性を秘めている。

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