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【Seybold San Francisco 99 vol.2】アップルがMacOS9の9つの機能を披露

1999年09月01日 00時00分更新

文● 林信行

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米時間8月31日午前9時、カリフォルニア州サンフランシスコで開催中の“Seybold Seminars”の基調講演にアップル社暫定CEO、スティーブ・ジョブズが登壇し、新機種PowerMacG4などを含む数々の新発表を行なった(敬称略)。レポーターは林信行氏。

ユーザーにとって最良の“Internet Co-pilot(インターネット航海の副操縦士)”

講演で1つ目のクライマックスとなったのはアップル社が10月に99ドルで発売を予定しているMacOS9の機能紹介だ。合計で50以上の新機能を持つとされている同OSだが、ジョブズは、OSのバージョン番号に引っ掛けて9つの機能を紹介した(その内のいくつかは5月に開催された“Worldwide Developers Conference”や7月に開催された“MACWORLD EXPO/NEW YORK”で紹介されたものだ)。



白シャツ黒ベストにジーンズ姿で現れ始終上機嫌だったアップル暫定CEO、スティーブ・ジョブズ氏
白シャツ黒ベストにジーンズ姿で現れ始終上機嫌だったアップル暫定CEO、スティーブ・ジョブズ氏



1つ目の機能はSherlock2だ。現行OSのSherlockは「空はなぜ青いのか」といった自然な言葉で書いた検索要求を同時に複数の検索サーバーに送り、結果を1つのウインドーにまとめて表示する機能(ディスク上のファイル検索も可能)。これに対してMacOS9が搭載するSherlock2は、検索内容ごとに利用する検索サーバーのセットを決めておき、人名(電子メールアドレス)検索やニュース情報検索(結果一覧に更新日が表示される)、製品検索(Eコマースサイトを検索し、製品の販売価格や在庫状況を一覧表示)といった目的に合わせた検索が可能になっている。

Sherlock2では欲しい商品の名前などを入れて、検索対象にするEコマースサイト(あるいはオークションサイト)を選ぶと、そこで売られている関連製品の一覧が売値や在庫状況などを伴って一覧表示される
Sherlock2では欲しい商品の名前などを入れて、検索対象にするEコマースサイト(あるいはオークションサイト)を選ぶと、そこで売られている関連製品の一覧が売値や在庫状況などを伴って一覧表示される



認証やセキュリティーで新しい機能が

2つ目はマルチユーザー機能。これは1台のMacを家族や他の生徒と共有するための機能で、起動時に表示される名前の一覧表から自分の名前を選び正しいパスワードを入力するとMacが自分だけの設定で起動する(ログインできる)というもの。ユーザーは同じMacを共有する他のユーザーに見れれないようにファイルを保管したり、あるいは意図的に他のユーザーからも見れるように設定することができる。デスクトップピクチャーや音量の設定などをはじめ、さまざまなアプリケーションの設定もすべてログインしたユーザーに固有のものとなる。

3つ目はこのマルチユーザー環境に文字からなるパスワードの代わりに声紋(Voiceprint)による認証を使って声でログインする機能。講演ではアップル社ワールドワイドマーケティング担当副社長のフィル・シラーが、ジョブズの声紋で登録したユーザー名で声紋ログインしようとしたところ失敗し、ジョブズ本人が同じキーワードを口にすると一発でログインができた。

MacOS9は声紋を識別してユーザーが誰であるかを判断できる。デモではフィル・シラーがキーワードを唱えてもログインできなかったジョブズのアカウントに、ジョブズ本人が同じキーワードを話しかけるとあっけなくログインできてしまった。声紋認識中はカラフルなスペクトグラムが表示される
MacOS9は声紋を識別してユーザーが誰であるかを判断できる。デモではフィル・シラーがキーワードを唱えてもログインできなかったジョブズのアカウントに、ジョブズ本人が同じキーワードを話しかけるとあっけなくログインできてしまった。声紋認識中はカラフルなスペクトグラムが表示される



4つ目は、各種パスワードの入力を自動化するキーチェーン機能だ。マルチログイン機能を利用した場合、ユーザーが誰であるかはログイン時に認証されている。そこでキーチェーン機能は、起動後の操作のさまざまな場面で必要なパスワード入力(例えばサーバーのマウントや後述する暗号化ファイルの復元。さらにソフトさえ対応すればFTPサイトへのログインや会員制Webサイトへのログインも)をMacが代行してくれるという機能だ。

5つ目はオートアップデート。これはMacOSのさまざまなファイルが更新されていないかをインターネットを使って確認し、より新しいシステムファイルがある場合にそれを自動的にダウンロード/インストールする機能だ。

6つ目は暗号化機能。他のユーザーなどに見られたくないファイルのアイコンを選択し暗号化メニューを選ぶと、以後、そのファイルを開くときにパスワードの入力を求められる。ファイルは正しいパスワードが入力されればちゃんと開けるが、パスワードを誤ると開くことができない。

ワークグループでの仕事に適応

7つ目はインターネット経由でのファイル共有。MacOSは早期から標準でネットワーク経由でのファイル共有機能を備えていたが、これはAppleTalkというアップル社独自のLAN用通信プロトコルに依存していた。MacOS9では、TCP/IPを使ったファイル共有機能を標準でサポートし(これまでもサーバー製品では実現されていた)、OSに完全に統合されたファイル共有機能をインターネット経由で利用することが可能になる。

8つ目はTCP/IP経由での通信に対応したAppleScriptだ。AppleScriptはOS標準のマクロ機能(操作を自動化するための簡易プログラミング言語)で、OS本体のみならずそれに対応したアプリケーションも操作できるのが大きな特徴だ。AppleScriptはさらにネットワークを経由して他のパソコンも操作することが可能だが(パスワードなどによる認証が必要)、今まではこれがAppleTalk経由でしか行なえなかった。

基調講演ではSan Franciscoに置かれたMacで動作するファイルメーカーPro(データベースソフト)がニューヨークに置かれたMacと協調し、データベース上の画像やテキスト情報を元に小冊子のレイアウトをて自動的に行なうというデモを紹介した。

 TCP/IP経由でのAppleScriptを使ったコラボレーションをデモした。サンフランシスコのMacで動作するこの製品データベースをNew YorkにあるMacのAppleScript小プログラムがアクセスし、製品カタログのレイアウトを全自動で行なった
TCP/IP経由でのAppleScriptを使ったコラボレーションをデモした。サンフランシスコのMacで動作するこの製品データベースをNew YorkにあるMacのAppleScript小プログラムがアクセスし、製品カタログのレイアウトを全自動で行なった



9つめの機能は、ネットワーク上の資源(サーバーやプリンター)などを表示しアクセスするための新しいインターフェース、Network Browserだ。Netowork BrowserそのものはMacOS8.5で既に実装されているがサーバーの一覧を表示しマウントする機能しか備えていなかった。MacOS9のNetwork Browserではどうやらネットワークプリンターの表示/アクセスにも対応したようだが、それ以上の詳細については触れられなかった。

ジョブズは数々の新機能を備えたMacOS9がユーザーにとって最良の「Internet Co-pilot(インターネット航海の副操縦士)」と呼んだ。

基調講演ではこの他、7月末に発表されたばかりのiBookの予約台数が14万台に昇ったこと(しかも、Macの人気がある日本ではまだ予約を受け付けていないにも関わらずだ)やQuickTime TVで番組を提供する会社が新たに2社加わったこと(Warner Records社とRhino Records社)などがあわせて発表され、IBM社のViaVoice Mac版のデモも行なわれた。

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