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【田中維佳のマレーシア報告 Vol.5】「ターゲットは世界全体、アジアに絞るつもりはありません」--スピーディール社小川浩社長

1999年08月30日 00時00分更新

文● 取材/文:田中維佳

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スピーディール社は、鉄鋼専門商社のマレーシア駐在員だった小川浩社長によって、'96年11月に起業された。“インターネットにおける新しい形の総合商社”として、ショップモールのスピーディール・ドット・コムを始め、幅広い活動を行なっている。

この6月には、オンラインによるリサーチを目的としたサイト“ザク・ドット・コム”をNTT MSCと共同で立ち上げるなど、マレーシアのインターネット分野にも大きな関わりを持っている。今回は同社の小川浩社長に、MSCとの関わりや、9月に本格的な活動を開始するザク・ドット・コムについてお話をうかがった。

--スピーディール社とMSCとの関わり、MSCについての現地状況を教えてください

「サイバージャヤは、マレーシアが国家プロジェクトとして進めている新しい首都設計計画MSC(マルチメディア・スーパー・コリドー)の一部で、首都として機能する“プトラジャヤ”と商業都市としてのクアラルンプールを、米国の首都ワシントンD.C.と商業都市ニューヨークのように分離しようとする試みです」

スピーディール社本社にて、小川浩社長
スピーディール社本社にて、小川浩社長



「サイバージャヤはこのプトラジャヤに隣接する場所で、広大な土地に研究開発の会社を集めてIT関係の研究所を作ろうという計画なのです。まだ企業が誘致されて移転しつつあるという状態です。プロジェクトそのものはインフラが整っているだけでまだまだこれからというところです。日本企業の中で100パーセント移転をしているのは現在のところNTT(NTT MSC=NTTのマレーシア現地法人)だけで、サイバージャヤで研究開発をするということだけは決まっているものの、何の研究をしていくかということはまだ明らかにはなっていないようです」

「我々が目指しているのはNTTという日本一のIT企業の世界が作った技術を運用させていただいて、新しいサイトを作っていくという、ある意味MSCの発想から出たベンチャー企業の第1号になろうというものです」

--ザク・ドット・コムというウェブサイトについてお教えください

「ザク(Xaque)というのは“eXtraordinary Analytical QUEstionnaire”の略で、高度な分析をするための質問形式のツールという意味です。オンラインを利用した市場調査を目的としたサイトで、NTT MSCの技術提供、協力を受けています。正式始動は9月を予定しています」

「このサイトでは、資本金50万リンギット(約1465万円)の“Xaque.com Sdn. Bhd”という株式会社を9月初旬に設立し、スピーディール社とは別個に運営していきます。現在は技術提供という形で協力いただいているNTT MSCですが、将来的にはジョイントベンチャーという方向もあり得ると考えています」

ザク・ドット・コム、一見しただけではマレーシアの会社が関わっているようには感じられない
ザク・ドット・コム、一見しただけではマレーシアの会社が関わっているようには感じられない



--他の市場調査のサイト、コミュニティーサイトとはどこが違うのですか?

「ターゲットは世界全体で、アジアに絞るつもりはありません。そのために英語ページも用意しています。このサイトのコンセプトは、“マッチングコミュニティー”の場を提供するというところにあります」

「マッチングは個人と個人を結ぶこと、友達探し、恋人探しだけにとどまらず、仕事を探している人と企業、業務提携をしたい企業と企業などと幅広く行なっていくつもりです。オンラインコミュニティーという形式で人を集め、アンケートを送るという方式で市場調査を行なうサイトは今までにも沢山ありました。しかし、ザク・ドット・コムが他のサイトと違うのは、我々がレーティングと呼んでいるアンケートに答えた人が、その情報をもとに自分の感性に一番近い人との友達探しが行なえることです」

「17項目あるレーティングのうちのひとつに答えることによって、同じ項目でまったく同じような傾向の答えを出した人を探し出せる。逆に、自分とはまったく感性の違う人と出会うことも可能です。また、レーティングに記入して貰った際にはポイントがたまり、それを商品などと交換できるというメリットもあります。レーティングはゲーム感覚ですから、“さりげなく”市場調査が行えるというのがいいところなのです」

ザク・ドット・コムでは、国籍や住んでいる国など、普通の出会い系サイトにはない選択項目も用意されているのが特徴だ
ザク・ドット・コムでは、国籍や住んでいる国など、普通の出会い系サイトにはない選択項目も用意されているのが特徴だ



「出会いの場所を提供して人を集め、広告を打つ……というところまでは既存のサイトと同じですが、逆にいえばレーティングに答えないと友達探しが出来ないが、自分の感性を反映させて友達を探せるということになります。企業側から言えば欲しい情報の取りそびれがない、集まった情報から顧客になってくれそうな人を探せるという点でもザク・ドット・コムは大きく違います」

--スピーディール社は“ポータルアジア”というサイトも運営していますが、今後の展開はどうなるのでしょう?

「ポータルアジアは、アジアに住んでいる、もしくはアジアに興味のある人の入口というコンセプトで作りました。現在はバージョン3.5で、4.0へのヴァージョンアップを検討していました。4.0では会員登録制を取り、個人個人に必要な情報を提供する“パーソナリゼーション”を目指していたのですが、ザク・ドット・コムの発想が出てきた時点で、これと重なることとなりました。したがってバージョンアップはしばらく控え、今後1年ほどは現在の海外就職、エンターテイメント、生活のための情報を提供していくつもりです」

--ザク・ドット・コムという会社のこれからの展開は?

「MSCのステータスを取得することが目標です。MSCのステータスが取得できると、10年間の法人税免除という特典のほかに、外国人の雇用に制限を受けないで済みます。何人であろうとMSC内であれば自由に雇用でき、すなわち優秀な人材を確保できるということになります。MSCステータスというと、サイバージャヤへ移転せねばならないと思われるかもしれないのですが、MSCはサイバージャヤからKLCC(ペトロナス・ツインタワー)までをつなぐ長い一帯を差すので、オフィスをクアラルンプール市内にあるツインタワーに移す必要が出てくるというだけのことです」

「最終的には、マレーシア証券取引自動気配通信システム(MESDAQ)という、ハイテク市場を対象としたマレーシア店頭株式市場への上場を目指しています」

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