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早大とメディアグルー、『MPEG-2トランスコーダ』を共同開発

1999年08月27日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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早稲田大学国際情報通信研究センター(所長・富永英義早稲田大学理工学部教授)と(株)メディアグルーは、『MPEG-2トランスコーダ』を共同開発した。MPEG-2による映像を配信する際、受信装置が接続されるネットワーク帯域に合わせてビットレートを変換するソフトウェアで、変換スピードの高速化と画質の劣化防止を実現したという。

MPEG-2は、高品位なデジタル動画データを圧縮する技術規格。2000年末にも本格的に開始されるBSデジタル放送やDVDに採用され、デジタル動画配信の標準を担うとされている。

MPEG-2を使って動画を配信する場合、配信する側が使用するネットワークと、エンドユーザーが接続するネットワークとを結ぶ。だがこの時、エンドユーザー側のネットワーク帯域が狭ければ、家庭のテレビで受け取る映像の画質が劣化する上、伝送遅延が生じてリアルタイムにデータを受け取ることができなくなる恐れがあり、リアルタイム性を売りにする放送やテレビ会議システムでは致命的な痛手となる。

早大とメディアグルーが開発したMPEG-2トランスコーダは、動画エンコードのビットレートを削減するソフトウェアだ。ネットワーク間の結び目でこのソフトウェアを使用して、MPEG-2データをエンドユーザー側のネットワーク帯域に合わせたビットレートに落とす。その際に画質劣化を抑制する仕組みを取り入れたことで、ビットレートを落とさずに配信した場合と比べて画質の劣化を防ぐことができるという。またビットレートの削減処理に新たなアルゴリズムを導入し、処理時間を減らしたため、処理による動画配信の遅延は実用上問題ないレベルになったという。

 「さまざまなビットレートが混在する動画ソフト配信の際にも活用できる」と話す笠井氏 「さまざまなビットレートが混在する動画ソフト配信の際にも活用できる」と話す笠井氏



開発に当たった早大助手の笠井裕之氏は「従来の方式と比べて低遅延処理が可能な上、市販されているパソコンで十分にリアルタイムで動作する」と新開発の方式に自信を見せた。

ただ、このトランスコーダは映像のみの対応で、音声を含むデータの処理は今後の課題。放送におけるキー局とローカル局との間での動画のやりとりや、局内の動画アーカイブシステムのインフラなど、メディアグルーでは、MPEG-2トランスコーダの実用化に向け事業を展開していく方針だ。

また両者が共同開発した医療用映像アーカイブシステムも発表された。これはMPEG-2方式の動画を、オンデマンドで各医療現場に配信できるもので、患者に対するインフォームドコンセントや治療情報の活用に役立つという。

 医療用映像アーカイブシステムでは、クライアントのリクエストに応じ、オンデマンドサーバー(左端)から医療用画像が随時配信される
医療用映像アーカイブシステムでは、クライアントのリクエストに応じ、オンデマンドサーバー(左端)から医療用画像が随時配信される



発表会で行なわれたデモでは、オンデマンドサーバーに接続されたLinuxベースのPC上で、患者のレントゲン画像や、手術を記録した動画が映し出される様子が披露されていた。

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