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【田中維佳のマレーシア報告 Vol.3】「多国籍軍で研究開発を進めていく」--NTT MSC堀田明男社長

1999年08月25日 00時00分更新

文● 取材/文:田中維佳

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NTT MSCは、NTT(当時)の100パーセント出資で設立されたマレーシア現地法人。現在はNTTコミュニケーションズ(株)の傘下にあり、同社が展開するグローバルサービス“Arcstar”の拠点としての役割も果たしている。

そのNTT MSCは、マレーシアのMSC(マルチメディア・スーパーコリドー)プロジェクトにデザインレベルから参画し、すでにサイバージャヤの中にオフィスも構えている。今回のインタビューでは、同社の堀田明男社長に、移転を終えた現在の様子、MSC構想に対する考えなどを伺った。

今回のインタビューは、クアラルンプール(KL)市内のUBNタワーにある同社のKL支店にて収録した。

--サイバージャヤに設立したNTT MSCセンターについてお聞かせください

「弊社のNTT MSCセンター(研究所)は、6月半ばにサイバージャヤへの移転を開始し、7月9日の正式オープニングにはマハティール首相を迎え、来賓の祝辞をいただきました」

NTT MSCの堀田明男社長
NTT MSCの堀田明男社長



「現地には6ヘクタールほどの土地があり、現在は約半分の敷地内にメインウィング、東ウィング、西ウィングと、2階建ての建物が3つあります。延べ面積は3900平方m。現在、研究部門と営業部を合わせて20名の日本人、60名のマレーシア人とシンガポール人のスタッフが働いています」

--営業部門も郊外のサイバージャヤに移転ということですが、活動しにくいということはありませんか?

「NTT MSCは大きく分けて2つの分野のサービスを提供しています。ひとつはLANなどのシステム構築、もうひとつはグローバル国際通信です。マレーシアでは、全産業における製造業の割合が約50パーセントと大きく、それら製造業の顧客というのは、市街地よりも空港(KLIA)に近い場所や、マレー半島西岸のペナン島、シンガポールにほど近いジョホールバルに工業団地を設けているため、むしろ交通の便は良くなったという状況です」

サイバージャヤはクアラルンプールとKLIAのちょうどサイバージャヤはクアラルンプールとKLIAのちょうど


中間に位置している

「製造業ではない商社、金融関係、流通、サービス業などの顧客に関しては、UBNタワーにあるこのKL支店を基点として営業活動をすることになります。現在はペナン島とKLの支店、そしてサイバージャヤ本社という3つの拠点で業務を行なっております」

--研究所では今後、どんな研究が行なわれる予定なのでしょうか?

「インターネットを中心にしたeコマース(電子商取引)や、eビジネス(電子ビジネス)が現在伸びており、我々としてはこれらがマレーシアで発展していくような研究をしていきたいと思っています。従来はアメリカ主導型で英語が中心でしたが、我々が考えているのはアジア地域にあるマレー語、中国語など、多言語でのeコマースやeビジネスをうまく発展させていくようなアプリケーションソフトの開発が主な研究となります」

「ほかには、翻訳と組みあわせた多言語による自動検索システムの開発も進めていく予定で、将来的にはタイ語、ベトナム語などアジア各国の言語にも手を広げていくつもりです」

「マレーシア国内で起業し発展している多国籍企業に向けて、IT分野での最先端技術を用意し、使いやすい形で提供していきたいのです。我々のためにもなり、顧客の役にも立ち、この地域の発展にもつながるという、いわゆる“三方一両得”になるのではないかと考えています」

--MSCというプロジェクトに関してご意見をお聞かせください

「これからIT分野をもとにこの地域を発展させていこうという、MSCのプロジェクト自体は、素晴らしいものだと思っています。マレーシアは奇跡の高度成長から通貨危機を迎え、マイナス成長というかなり苦しい時期を迎えながらも、MSCのプロジェクトを国を挙げて推進し続けてきました。「予定通りに行なう」というマハティール首相の宣言をもって、投資家を安心させてきました。ほぼ予定通りにインフラも整いましたので、合格点ではないかと私は考えています」

「ただ、MSCをモデルにして同じようなプロジェクトを進めようという、シンガポールや香港といった競争相手が出てきました。これからは競争相手に負けないような企業誘致の方法や、プロジェクトの進め方を考えていかないと、追い越されてしまうのではという懸念はあります」

「プロジェクト開始当初から宣言されていた、IT産業を起業しやすくするというサイバー法やマルチメディア法も整ってきました。サイバージャヤというモデル都市の中で、フラッグシップアプリケーションと呼ばれるスマートスクール、電子政府、遠隔医療という新しい実験もすでに始まっています。ただし、競争相手が次々と出現してきた現在、サイバージャヤを更に活性化させ、企業を誘致するための新しいプロジェクトを継続的に打ち出していく必要はあると思います」

--マレーシアで事業を行なうメリットというのは何でしょうか?

「私は、単一民族が集まって何かを作り出すよりも、創造性や文化、言葉も含めてバックグラウンドの違う人たちが集まってアプリケーションソフトの開発をした方が、面白いものが出来てくるのではないかと思っているのです」

「しかし、なかなか日本では多国籍の人々を集めるということが難しいものです。その点、マレーシアは国自体がもともと多国籍国家であり、英語という共通の言語で研究員達は開発を進められます。将来的にはタイやベトナムからも研究員を迎えることも考えています」

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