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海外からのアクセスが急増。国内のカルチャーを伝えるバイリンガルのオンラインマガジン『シフト』

1999年08月24日 00時00分更新

文● 聞き手、文:尽田万策

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札幌から日本のカルチャーを世界へ向けて発信しているオンラインマガジン『シフト』。最近は海外からのアクセスが急増し、海外と日本のクロスポイントとして重要な役割をはたしているという。シフトマガジン代表の大口岳人(おおぐち・たけと)氏に聞いた。聞き手は札幌在住のジャーナリスト、尽田万策氏。

“ボーダーグラウンド”上のニュースなど、特色のあるコンテンツが充実

--『シフトマガジン』の内容について教えてください

「2年ほど前から、おもにウェブカルチャー、インターネット上で新しい形式のクリエーティブ活動を行なっている人々や作品などを紹介するオンラインマガジン『シフト』を発行しています。ではまずシフトの具体的なコンテンツを紹介します。

・ 雑誌でいう表紙に当たる部分を注目すべき才能あるウェブデザイナーに制作してもらい、それと連動した“カバーインタビュー”
・世界各地の、アンダーグラウンドでもなくメジャーでもない、その中間のボーダーライン上にあるような出来事(それを僕達はボーダーグラウンドと呼んでいます)、“ボーダーグラウンドニュース”を世界のコレスポンダントがレポートする“インフォワールド”
・ クールサイトをネット上のキーパーソンが選りすぐって紹介する“クールサイトレビュー”
・ オリジナルフォントやTシャツ、ユーティリティーなど、クリエイターの作品をプロダクトとしてオンラインで提供する“シフトファクトリー”
・ 香港発のユースカルチャーマガジン『チョーク』のディレクションによるファッションシュートを毎月フィーチャーする“ファッションシュートフロムホンコン”
などのコンテンツがあります」

シフトマガジン代表 大口岳人(おおぐち・たけと)氏。'68年、札幌生まれ。Email: shift@jp.org
シフトマガジン代表 大口岳人(おおぐち・たけと)氏。'68年、札幌生まれ。Email: shift@jp.org



「現在ウェブ上では、大型のサーチシステムではカバーしきれないほどの大量の情報が流れ、今も爆発的に拡張し続けています。しかし、それとあいまって有力な個人情報に出会う可能性が一方で低くなっています。

そこでシフトでは、広大なネット上に存在する未知なる才能を持ったアーティストやクリエイターの活動を、オンラインマガジンという形態で、国内外問わず紹介しています。毎月1日に日本語版、そして15日に英語版を発行しています」

『シフト』のオリジンは『サッポロリンクス』

--シフトを始めたきっかけを教えてください。

「自宅を改造した、小さなカフェを経営しているのですが、そこに集まってくる仲間と一緒にフリーペーパーを発行したり、クラブパーティーのオーガナイズをしていました。

そんな時にインターネットが登場してきて、ちょうど地元でプロバイダーが出来る時に声が掛かったのです。コンテンツ制作、発信をオファーされ、そのプロバイダーのために、札幌のカルチャーを札幌以外の人にも知ってもらうというバイリンガルのオンラインマガジン『サッポロリンクス』を開設しました。'94年のことです。

それで1年程ほどこのサイトを運営していたのですが、その間にネット上で仲間といえるようないろいろな人達との出会いがあり、皆で国内のカルチャーを海外へ紹介するオンラインマガジンをやってみないか、と声を掛けて『シフト』始めました。日本の情報を海外へ、そして海外の情報を日本へという活動が徐々に広がり、現在のようなコンテンツになっています」

--発行はどのような体制で行なっているのですか?

「毎号制作に当たって、札幌の仲間と、東京、海外など全部で30人程度のスタッフが協力してくれています。皆それぞれ自分の仕事を持ち、シフトにさまざまな形でネットを通じて参加してくれています。

常駐して、シフトの制作に関わっているメインのスタッフは、僕と、翻訳/編集を手伝ってくれているパートナー、ドイツからコミュニケーションデザインのインターンシップで来ている学生の3人です」

大口さんの勉強会に集まった札幌のメンバー
大口さんの勉強会に集まった札幌のメンバー



「ほとんどの作業がEメールでのコミュニケーションなので、実際にはまだ会ったことのない人がほとんどです。東京のスタッフに会ったのも、シフトを始めてから1年後のことでした。今はスタッフ同士の実際の出会いの機会も徐々に増えてきています」

“ボーダレスなコミュニケーション”をその言葉通りに実践したい

--最近の状況について教えてください

「シフトのようなスタイルのオンラインマガジンが日本に他にないということもあり、海外と日本のクロスポイントとしての役割が増えてきています。海外のアーチストから“日本でCDやCD-ROMをディストリビュートしたい”、“日本でイベントをしたい”、“映画の配給をして欲しい”などなど、様々なオファーが来ています。またその逆に日本にしか流通していない商品、本やCD-ROMなどを海外へネット販売するということも行なっています。

月間のアクセス件数も順調に増えて10万ぐらいですが、今年に入ってからは海外からのアクセスが特に増えていて、全体の6割を超えています。アメリカについでヨーロッパ、アジアでは香港からが多いです」

海外からの広告もたくさん入っている
海外からの広告もたくさん入っている



「シフトマガジンとしての収入は主にバナー広告と物販ですが、こちらもアクセス増に伴なって徐々に上向いています。広告は安く設定していることもあって、クリエイター個人や、エージェンシーなどがプロモーションの為に広告を出すというのが海外を中心に増えてきています。

あとは、雑誌など既存の媒体に対する原稿執筆や、コーディネートなどもしています」

--今後の抱負などお聞かせください。

「先ほどお話したように、国内外からのさまざなオファーを、少しずつですが形にしていきたいと思っています。海外で盛んに開催されている、デジタルカルチャーのコンファレンスやイベントなどを日本に紹介したり、実際に日本で開催できるような手伝いができたらと思います。

それから、札幌でこうした活動を行なっていることについてですが、僕自身は、Eメールとウェブは完璧なコミュニケーション手段だと感じています。インターネットで良く言われる建て前というか、“ボーダレスなコミュニケーション”と言われますが、これをその言葉通りに実践したい、したらどうなるか、というのを楽しんでいます」

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