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シーグラフ東京、“SIGGRAPH 99”報告会を開催--女子美術大学の内山助教授によるアートギャラリーレポート

1999年08月24日 00時00分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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東京ACM・SIGGRAPHプロフェッショナルチャプター(ChapterACM/SIGGRAPH-TOKYO:シーグラフ東京)は20日、“ シーグラフ東京 第9回セミナー SIGGRAPH 99 報告会”を開催した。これは、8月に米ロサンゼルスで開催されたCGに関する国際学術会議“SIGGRAPH 99”の報告会で、シーグラフ東京会員および(財)画像情報教育振興協会の関係者を対象として開催したもの。

SIGGRAPHは、米国コンピュータ学会(The Association for Computing Machinery:ACM)内のCGに関する分科会(Special Interest Group on Computer Graphics)が主催する国際会議。毎年7~8月に米国の主要都市で開催されている。SIGGRAPHでは、セミナー、論文発表、機器展示会、Electronic Theater、アートショーといった各種イベントが催される。本稿では、“ シーグラフ東京 第9回セミナー SIGGRAPH 99 報告会”でアートショーの模様をレポートした女子美術大学・女子美術短期大学助教授の内山博子氏に、展示会の様子を伺った。

女子美術大学の内山博子助教授
女子美術大学の内山博子助教授



アートギャラリー

内山氏は、自身も平面作品“SPT901”をアートギャラリーに出品している。これは、CG画像を布にプリントし、手で直接凹凸感クラフト的な加工を施した作品。アートギャラリー内ではCGを用いた実験的な作品(平面、立体、インタラクティブ)が展示されている。

“SPT901”
“SPT901”



「今回のアートギャラリーの中で、インタラクティブアート作品の数は実はそんなに多くはありません。93作品中、8作品のみがインタラクティブアート作品でした」

「アートギャラリー全体を通して“ヒーリング”をテーマにした作品が目につきました。なぜ“ヒーリング”がテーマなのかは、作品が出来た背景にそれぞれの理由があるので、ひとつに括ってしまうのは難しいかもしれません。しかし、私の個人的な感想として、やはりコンピューターのようなハイテク機器を使っていると、色々な意味で人間は疲れるのだと思います。そんなこともコンピューターを使って作品を作っている人の心の中にあるのかもしれません」

アートギャラリーで印象に残った作品、話題を呼んでいた作品

内山氏はまず、メディアアーティストの岩井俊雄氏の“Composition on the table”を挙げた。これは、4つの白いテーブルに、ダイアルやターンテーブルを取り付けたもの。机の真上の天井にはプロジェクターが設置され、テーブルの上にCGを投影する。観客がテーブルに用意されたダイアルなどのインターフェースを操作すると、CGや音楽がリアルタイムに反応するというもの。岩井氏がSIGGRAPHに出展するのは、今回が初めて。

“Composition on the table”
“Composition on the table”



「岩井氏の作品では、作品としての完成度が非常に高いということが挙げられます。4つそれぞれのテーブルで展開される内容は、工夫が多く、関わっている人を飽きさせない魅力に溢れてました。実際、彼の作品の前にはいつも人が途切れることなく集まってたいたということが、一番如実に結果を表わしていたのではないでしょうか。アートギャラリーのチェアマン(責任者)も岩井氏の作品を絶賛していたと聞いています」--。

テーブルの上にはCGが投影されている
テーブルの上にはCGが投影されている



次に、内山氏は、“Sisyphus&Ulysses”という作品を紹介した。これは、Jean-Pierre Hebert(ジャン=ピエール・エベール)氏ら5名が共同制作したもの。1.5メートル四方くらいの板の上に砂が敷き詰められ、直径4センチメートルほどの鉄球がその上を動く。鉄球の軌跡は、あたかも地中海地方の古代遺跡に見られるような線を描いたり、幾何学模様をイメージしたような跡を残すなど、ランダムに動くようにプログラムされている。

“Sisyphus&Ulysses”
“Sisyphus&Ulysses”



「“Sisyphus&Ulysses”というタイトルのこの砂を用いた作品は、禅寺の石庭を思わせるようなイメージを、大地とハイテクノロジーの融合によって作り出していました。アイディアと工夫に溢れた作品だと思います。コンピューターの台頭によって、時間に追われるようになった我々が、完成までにとても時間がかかる砂上の描画プロセスをじーっと見ているといつのまにか時間を忘れてしまっているのです。自然の砂と石の存在が、私たちを落ち着かせるのでしょう」--。

鉄球の軌跡はプログラムで制御されている
鉄球の軌跡はプログラムで制御されている



本稿に掲載している写真は、編集部がSIGGRAPH会場で撮影したもの

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