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【夏季特別企画インテル対談Vol.1】Athlon登場、Coppermineは……

1999年08月19日 00時00分更新

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夏季特別企画対談インテル編では、周辺チップなども含め、x86プロセッサーの動向に詳しい元麻布春男氏と小林章彦氏をお迎えして、Pentium IIIやAMD Athlonなどの、現状と今後についてお話を伺った。

インテルの0.25μmプロセスは非常に順調だが0.18μmは……

編集部「さっそくですが、まず現在のインテルのプロセッサーと今後の動向について伺います。インテルの0.25μmプロセス製品は非常に順調だそうですね」

小林「(製造段階の)歩留まり、8割という噂もされているらしい。この噂の真偽は別として、とにかく*Katmaiは調子がいい、その割に*Coppermineは調子が悪い。

0.25μmプロセスは、(インテルの)歴代のプロセスの中でも、立ち上がりといい、歩留まり率といい一番いいと言われている。0.25μmプロセスで製造したプロセッサーは、当初の予想よりも高い動作クロックで動くようだし」

*Katmai:0.25μmプロセスで製造されるPentium IIIのコードネーム

*Coppermine:0.18μmプロセスで製造されるPentium IIIのコードネーム。2次キャッシュがCPUコアに同梱されるなどの変更も行なわれるといわれている。

編集部「0.35μmプロセスでの立ち上げ時よりもいいということですか?」

小林「そうですね、立ち上げが早かったっていうことと、0.35μmプロセスからの移行がうまくいったっていうのもあると思う。0.35μmプロセスは、その前のプロセスに比べて結構調子がよかったので、急いで0.25μmプロセスに移行する必要がなかったというのも、移行がうまくいった要因だと思うけど。」

編集部「なるほど」

小林「0.25μmプロセスは、MMX Pentiumで移行してから、現在のPentium IIIまで使われているのだから、やっぱり結構できのいいプロセスだと言えるんじゃないかなぁ。インテルによれば、Coppermineの立ち上がりが悪いのは、0.18μmプロセスの問題じゃなくて、当初のステップに問題があったということだけど、どういうことだろうか」

元麻布「Coppermineの立ち上がりが悪いのは、Coppermineが見捨てられているからじゃないかと密かに思っているんだけど。要するにCoppermineを改良しても(AMDの)Athlonにかなわない」

元麻布春男(もとあざぶはるお)。“DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。インテルアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。コラム“元麻布春男のソリッド・ステート・サバイバー”でもおなじみ。
元麻布春男(もとあざぶはるお)。“DOS/V”登場以前からIBM PCクローンを個人輸入。インテルアーキテクチャーをはじめデジタルシーンにもっとも詳しい日本人アナリストのひとり。コラム“元麻布春男のソリッド・ステート・サバイバー”でもおなじみ。



小林「うーん」

元麻布「だから*Willametteを前倒しにするために、(プロセッサー設計部隊の)主力がそっちにいってるんじゃないかなという気がしてるんだ、少し。だってCoppermineをどんなによくしたってさ、今の*P6コアじゃさ、しょせんAthlonに勝てないもん。よっぽどクロックが上がれば別だけど、上がんないじゃない」

*P6コア:ここではPentium Proで採用されたプロセッサーアーキテクチャーを指す。Pentium II/IIIはP6コアがベースとなっている。

*Willamette:0.18μmプロセスで製造される次世代の32bitプロセッサー

小林「うん、まあ、確かに思惑違いな部分があったのかもしれない」

元麻布「だけどAthlonなんて去年から技術発表されてさ、少なくともFloat(浮動小数点演算)の性能に関しては、同じクロックのP6を上回るのが明らかだったわけでしょ、アーキテクチャー的に。それで何もインテルが手を打ってないわけはなくて、なんか打ってるはずなわけ。AMDに最速のx86プロセッサという称号を明け渡しちゃうことになるんだから。そう思うと、こんだけCoppermineが悪いのは、明らかにインテルらしくない。だからそれは、Coppermineって、ひょっとすると、もう半分見捨てられているからなのかなぁっていう気がしているんだけどね」

0.18μmプロセスがネックなのか

小林「さすがに 0.18μmプロセスの壁は厚かったって話はないですか」

元麻布「そんなことないでしょう。だって、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が0.18μmプロセスの製品この前発表したんだよ」

小林「でもほら、集積トランジスタ数がかなり違う……」

元麻布「もちろん、もちろん。だけど、そう言うけど、*NVIDIAのNV10が、プロダクトサンプルの状態だけど、クリスマスにはでるんだよ、NV10の集積するトランジスタ数ってさ、Pentium IIIの比じゃないよ。それから考えれば、(インテルが作ることは)そんなに難しくはない。ただし、だけどもAMDのほうは*ドレスデンとかの噂では、0.18μmはいいんだけど、0.18μmのカッパー(銅配線)は難しいっていう話なんだよね。だから、0.18μm自体は、もうそろそろいけるんじゃないのかな。インテルだってさ、0.18μmプロセスそのものは問題ないから*モバイルPentium II作れるんだって言ったじゃない」

*NVIDIA:米のグラフィックチップメーカー。RIVA TNTシリーズが有名。NV10は年内に出荷されるといわれる次期グラフィックチップ。

*ドレスデン:AMD社がドイツのドレスデンに建設中のプロセッサー工場を指す。0.18μmプロセスの製造ラインを持つ。カッパーというのは、現在のアルミニウムの代わりに銅を使ってプロセッサー内の配線を行なう技術を指している。銅を使うことでプロセッサーの動作クロックが向上する。

*モバイルPentium II:モバイルPentium II-400/433MHzは0.18μmプロセスで製造されている。

小林「とはいうものの、高い動作クロックの製品は出せないでいる」

元麻布「だからさ、それは*モバイルって枠があるからさ、よくわかんないんだよね」

*モバイルの枠:ここではモバイル用プロセッサーでは消費電力を抑える必要があることなどを指す。

小林「意外にほら、0.18μmぐらいになってくると、(プロセッサーダイ上の)線が細くなりすぎて、絶縁体を突っ込んでも、コンデンサー効果が発生してしまうっていう問題が起きるとか。そういう影響が出ているのではないのか、って想像しているのですが」

小林章彦(こばやしあきひこ)。元月刊スーパーアスキー誌デスク。スーパーアスキー休刊後、編集長の小川氏、副編集長の打越氏とともに独立し、編集プロダクション“デジタルアドバンテージ”を設立。パソコン関連誌を中心に活動中。
小林章彦(こばやしあきひこ)。元月刊スーパーアスキー誌デスク。スーパーアスキー休刊後、編集長の小川氏、副編集長の打越氏とともに独立し、編集プロダクション“デジタルアドバンテージ”を設立。パソコン関連誌を中心に活動中。



元麻布「いやー、それはもう当然見越してるでしょう。だって、それも含めて0.18μmプロセスの技術開発であって、それは去年の春に*アルバート・ユーが開発は終わったって言ったんだもん。それが、いざやってみたらうまくいかないってこと?」

*アルバート・ユー(Albert Y.C.Yu):米インテルのシニア・バイス・プレジデントで、マイクロプロセッサー製品グループのゼネラルマネージャー

小林「実際に作ってみると、そういった問題が発生して、動作クロックを上げらんないんじゃないのかなあ」

元麻布「Coppermineはもう見捨ててるんじゃないかと思うんだけどな。あんまり魅力的じゃないから。モバイルはいいけどさ、0.18μmだって。デスクトップは別にね、そんなに0.18μmにこだわるほどでもないと思うけれど。デスクトップはさ、多少でかいヒートシンク付けてでも、*SPECintとSPECfpが速くないと話にならないでしょ」

*SPECint、SPECfp:SPEC(Standard Performance Evaluation Corp)のベンチマークテストの名前。それぞれ整数演算能力と浮動小数点演算能力を測定する。プロセッサーのベンチマークとしてよく利用される。

小林「うん、でも、今のユーザーってそういった性能を気にするのかなぁ。あんまり関係ないじゃないのかっていう気もするのだけど」

元麻布「ええー? だってそれを否定したらさ、インテルとか、何やっていいかわかんなくなっちゃうじゃん」

小林「いや、だから最終的にはそこが重要なのだけども、数値上の動作クロックで、ほかのプロセッサーよりも速いっていう印象のほうが重要なのであって、別に実際は速くなくてもいいんじゃないかと思ってるんだけど(笑)」

元麻布「いやー、そんなこともないんじゃない。だってAthlonとさ、Pentium IIIとの比較で、必ず 600MHz同士でさ、どっちのFloat(浮動小数点演算)が速いかってさ」

小林「そういう部分でね。それは重要。でも、それはAthlonに対して速いってイメージがなくなるからでしょ。だからそういう対抗製品がなければね。まぁ、AMDがある以上ね、当然それは出さなきゃいけないか」

元麻布「そうそう、AMDに勝たなかったら話にならないわけだよね。(負けてしまったなら)盟主としてのプライドはもう、どこにもなくなってしまうわけじゃない」

AMD Athlon登場でインテルはどうする?

編集部「AthlonのパフォーマンスはPentium IIIに対してよいベンチマークが出ていますよね」

元麻布「少なくとも浮動小数点演算はいい。整数演算は思ったよりよくないよね。まあまあいいけど」

小林「うん。まあ、悪くないんじゃない」

元麻布「負けてはいないからね。ただ、1次キャッシュ 128KBも積んでてさ、こんだけって言われるとさ、ちょっと、もう少し上がってもいいんじゃないかなと思うけど」

小林「実行ユニットがそんな多くないでしょう。だから、浮動小数点演算であんだけ頑張ったわりには、なんでもうちょっと整数演算の実行ユニット増やすとかしなかったのかなって気がする。やっぱりx86アーキテクチャーの並列性があまりよくないから、しょうがないのかな。たぶんシミュレーションして、あれ以上並列演算ユニットを増やしても、空くだけだということなんだろうと思うんだけど」

元麻布「どうなんだろうね、それは。それよりも、クロック上げるほうを考えたほうがいいかもしれないよ。だってさ、K6ってさ、パイプラインが5段しかなかったやつをさ、今度のやつが10段、整数演算で10段だったかな。だから倍にコンバートしたわけじゃん。だからそうとうクロック上げることを意識してるよね。そっちとのバランスなんじゃないかな」

プロセッサークロックはどこまで上がる

編集部「(コンパックの)Alphaプロセッサーみたいに高クロック化でできるようなアーキテクチャに最初からしたっていう意味ですか?」

元麻布「Alphaみたいにはならないよね。x86だからね」

編集部「Athlonはどのぐらいまで延びるでしょう。最初、650MHzまでで、来年は1GHzまでいくと言ってますけど」

元麻布・小林「もっといくんじゃない」

元麻布「だっていまのP6コアってデビュー当時150MHzだよ。Pentium Proは133MHzでも実際、作ったからね。製品としては出さなかったけど。サンプルとしては存在したし、ごく一部のテスターには出荷しているから。それでデビューしたP6コアがいま600MHz。たぶん700MHzぐらいはいきそうだよね」

小林「まあ、Coppermineとか、そのあとのデビューの具合によるんだろうけど、800MHzぐらいまではきちんと考えているでしょうね。いま製造プロセスを変えるんだから」

元麻布「で、(インテルの)『SE440BX』マザーボードには 800MHzまで設定あるからさ」

小林「800MHzぐらいまでは考えているでしょうね」

編集部「Pentium IIIでという意味ではなくて?」

小林「Pentium IIIは、デモで1GHzで動作させているのだから、最終的には1GHzまで可能な設計だということはいえるね」

元麻布「でも、そろそろたぶんアーキテクチャーとしては限界にきているよね。P6コアは」

小林「もうバス性能との問題が出てくるでしょう。CPUコアの動作クロックとシステムバスのクロックの差が開きすぎちゃって。まあ、バス性能を上げていけばいいけれど」

元麻布「でも、バスのクロック上げても(全体の性能は)変わらないよ」

小林「そうなの?」

元麻布「だってさ、VIAのセミナーで、日立が発表した数字を見ると、*PC100をPC133にしてもさ、0.1パーセントとか2、3パーセントしか上がらないんだよ、性能。だからたぶん、Fetchかなにか、あの辺が悪いんだよ。あのあたりがクロック上限に達するとこが設計限界で、たぶん1GHzぐらいなんじゃないないかな」

*PC100、PC133:FSB(Front Side Bus)100MHz/133MHzに対応するシステムとメモリー

元麻布「P6コアはそもそも 133MHzの*Pentium Proを作ったときには、ファーストページモードのさ、80nsとか90nsのアクセススピードの遅いDRAMしかメモリーはないっていう前提で設計されてるから。で、(プロセッサーの処理速度に比べて)そんな遅いメモリーでも極力性能出せるようにするにはどうしたらいいかっていうのでね、いろいろ工夫したプロセッサだから、逆に言えば外側を速くしても中は速くならないよね」

*Pentium Pro:前出のように実際リリースされた製品は150MHzから。FSBは66MHzだった。

小林「確かにそういう、外部依存性はなるべくなくすという設計ですね」

元麻布「外部依存しないということは、外部を速くしても速くならないってことでもあるんだよ、そういう意味では」

小林「そういう意味ではSocket 7系プロセッサーとはえらく違う」

元麻布「(プロセッサーコアの)チューニングが違うから。だからあんまりね、その辺(外部クロック)を上げてみてもたぶん性能は上がらないだろうね」

編集部「ほかの互換チップメーカーの設計もそれに準じているのでしょうか」

元麻布「全然準じてない。違う道をいっている。もはやね」

PCプロセッサーベンダーはインテルとAMDのみ

小林「AMD以外はもう、安く作ることしか考えていない」

元麻布「AMD以外はもう、パソコンのプロセッサーはもうないでしょう。あとはサイリックスを買った、IDTも買うっていってる、VIAがどうするかだけど、戦えないよね、あのコアじゃ」

小林「基本的にはハイエンドではなくて、ローエンドを目指すでしょう。だから低価格。それこそ 300ドルパソコンとか、あのラインを埋めていく路線でしょうね」

元麻布「上狙うんだったらIDT買う意味ないものね」

小林「だからなるべく低消費電力で、集積していって……」

元麻布「*GEODE対抗だよね」

*GEODE(ジオード):米ナショナルセミコンダクターが発表した、MediaGXコアを使った情報アクセス機器向けの統合プロセッサー。

元麻布「だからそのへんで彼らは必ずぶつかると思うんだけどね」

小林「うん。だから30ドルチップ、1チップ30ドルで、PCを構成するすべての機能がほぼそろってます、という」

編集部「これでx86互換チップメーカーがAMDとVIAとRISEと、3社になったわけですけど、AMDだけはちょっと路線違うと」

元麻布「AMDとインテルだけがPCプロセッサーベンダー。あとはそれ以下で」

(Vol.2に続く)

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