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【SIGGRAPH 99 Report Vol.1】新作3DCGソフトが勢ぞろい--展示会ブースレポート

1999年08月17日 00時00分更新

文● 文:HIROSHI/取材、構成:編集部

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8月8日から13日の6日間、米ロサンゼルスのロサンゼルス・コンベンション・センターにおいて、世界最大のCG関連イベント“SIGGRAPH 99”が開催された。

SIGGRAPHの会場となったLAコンベンションセンターSIGGRAPHの会場となったLAコンベンションセンター



元々はCGの学会から始まったSIGGRAPHらしく、会期中は数々のセッションやチュートリアルが開催される。また展示会では、3DCGソフトを中心に映像編集やアニメーション作成/編集などソフト類の展示、映像編集機器といった関連ハードの展示が行なわれる。そのほか、これらの製品を使用している映画のデモ、放送制作会社やゲーム制作会社によるデモなど、およそCGに関連するものは、なんでも揃うという一大イベントである。

このReport Vol.1では、3DCGソフトを中心に、SIGGRAPH 99の展示会の様子を紹介する。

ノンリニアのアニメ編集/制作を可能にする『Smatra』

SIGGRAPH 99で注目されていた新製品のひとつに、米Avid Technology社の次世代3次元システム『Sumatra』(開発コード名)が挙げられる。Sumatraは同社の3DCGツール『Softimage』の後継とされる製品で、年末のリリースが予定されている。4月に米ラスベガスで開催されたNABで発表だけはされていたが、一般に公開されるのは今回が初めて。

AvidブースではSmatraのデモを行なっていた
AvidブースではSmatraのデモを行なっていた



Sumatraの最大の特徴は、世界初となる3DCGによるNon Linear Animation System(NLA)。“Animation Mixer”という機能は、従来の映像編集ソフトでおなじみのインターフェースであるシーケンスウインドーを利用するもの。セーブされているモーションデータを呼び出してデータを自由な移動、配置することができ、トランジションによる合成や編集が可能となっている。シーケンスウインドーを採用したことにより、同社のSoftimage 3Dが持つ“Doopsheet機能”を使うより、複雑なアニメーションが簡単に作成できるようになったという。

また、Softimageが苦手とするマテリアルやテクスチャーといった機能も強化された。テクスチャー等をオブジェクトにより管理する従来の方式から、グローバル管理へと変更したことで、最大で64枚のテクスチャーを同一面上に貼りつけることが可能となった。また、同一テクスチャーが貼ってあるオブジェクトの管理と編集も簡易になっている。

IBMブースでは、同社のIntelliStationのデモも兼ねたSmatra教室を開催
IBMブースでは、同社のIntelliStationのデモも兼ねたSmatra教室を開催



この他にも、スクリプト機能の強化、ウインドー方式のインターフェースの採用、Render Treeを利用したレンダリング機能の強化などが特徴として挙げられる。IBMのブースでは、SumatraのNTバージョンを20台ほどのワークステーション上で体験できるコーナーも設けられており、順調に開発が進んでいることを感じさせた。なお、Sumatraの価格は未定だが、90日以内に同社から発表される予定だという。

Maya2.5発表も、機能的にはMaya2と大差なしか

加Alias|Wavefront社は、同社の主力製品でハイエンドな3Dシステムである『Maya』のVer 2.5を発表した。Maya2.5は今秋の出荷を予定しており、価格はMaya Complete 2.5が7500ドル(約86万円)、Maya Unlimited 2.5が1万6000ドル(約184万円)となっている。

Aliasのブースでは、Mayaを前面に押し出した展示を行なっていた
Aliasのブースでは、Mayaを前面に押し出した展示を行なっていた



Maya2.5から標準で統合されることになった新機能の“Maya Paint Effects”は、オブジェクトに対しペイント感覚でパーティクル等のシェーダーを加えることを可能にするもの。また、マルチスレッドのレンダリング機能である“Interactive Photorealistic Renderer(IPR)”では、最終レンダリングの結果がパラメーターの変更に応じて即座に表示されるという。また、現行のMaya1には存在しないポリゴン機能も多く追加され、特にゲームソフトベンダー向けのサポートが充実してきている。

Maya2.5の操作画面、左下には“IPR”のメニューが見える
Maya2.5の操作画面、左下には“IPR”のメニューが見える



Paint Effectsで描いた画像サンプル、細かいシェーダーが特徴
Paint Effectsで描いた画像サンプル、細かいシェーダーが特徴



ただし、Maya Paint Effects以外の機能は4月のNABで発表された『Maya2』においてすでに実装されている機能であり、今回のMaya2.5はあくまでマイナーアップグレードの感が強い。日本市場においては7月にMaya2の出荷が始まったばかり。同社としても、まだまだMaya2を市場で売っていきたい段階であり、この時点での大幅なアップグレードはないのだろう。

昔からのAlias|Wavefront製品ユーザーとしては、3Dソフト『Power Animator』の動きが気になるところ。だが、同社ではPower AnimatorからMayaにシフトしようという動きが顕著で、今回のSIGGRAPHでもPower Animatorの出展はなかった。

ゲームベンダー向けという意味では、『Maya Builder』の発表も見逃せない。これはMayaのサブセット版にあたる製品で、ポリゴン機能やテクスチャーツールなど、ゲームソフトの制作に必要な機能を選び出したもの。価格は2995ドル(約35万円)と、同社製品としては低価格に抑えられている。同社では、ゲーム制作のラインに一貫してMayaが導入されることを狙っているという。

ブースでは“MAYA for GAMES”の展示を行なうなど、ゲーム業界向けのアプローチが見られた
ブースでは“MAYA for GAMES”の展示を行なうなど、ゲーム業界向けのアプローチが見られた



3D Studio MAXやLightWave[6]は、大掛かりなデモで集客

Autodeskによる買収以来、初めてのSIGGRAPH登場となる米Discreet Logic社は、『3D Studio MAX R3』を大々的に展示していた。すでに7月26日から発売されている同ソフトだが、来場者の注目度は高く、同社ブースでの実演デモブースは人の輪が何重にも取り囲んでいた。

3D Studio MAX R3の実演デモ、Discreetのブースはライトを落とした幻想的な演出を施していた3D Studio MAX R3の実演デモ、Discreetのブースはライトを落とした幻想的な演出を施していた



3DMAX R3の主な特徴は、インターフェースのカスタマイズが可能になったほか、シェーダー機能の強化、グループワークを効率的にするシーン参照機能などが挙げられる。もっともこれらの機能は4月のNABで発表されていたもので、機能的には特に目新しいものはなかった。あくまで今回の発表は、宣伝と販促に力点を置いたものといえる。

米Newtek社の『LightWave[6]』は、インターフェースの変更がもっとも大きな話題。価格が1995ドル(約30万円)と3Dソフトの割には手軽なことから、ブースでのシアターデモには通路まであふれかえるほどの来場者が詰め掛けていた。また、10年ぶりの登場になる『VIDEO TOASTER』の展示も話題だったが、さすがに、LightWave[6]に人気が集まったためか、こちらのほうはデモのときも観客はまばらだった。

シアターデモに力点を置いていたNewtek、学生などの若者も多く集まっていたシアターデモに力点を置いていたNewtek、学生などの若者も多く集まっていた



プラグインも充実--各ソフトの差は小さくなる傾向に

これらの3Dソフトに加え、元気があったのはサードパーティー製のプラグインツールだ。米Pixar社では、同社のレンダリングソフト『RenderMan』をMayaで利用できるようにするプラグインの『MTOR』(MAYA TO RenderMan)を展示。同社が制作したCG映画の展示よりも、MTORの展示のほうに力を割いていたほどだ。

トイストーリーでおなじみのPixarだが、展示のメインはプラグインだった
トイストーリーでおなじみのPixarだが、展示のメインはプラグインだった



以上紹介した3Dソフトにもみられるように、最近の傾向としてインターフェースに変更を加えたり、ソフト自体の基本構造を改新するケースが多く見られる。この理由としては、多様化するプラグインへの対応に迫られているほか、他社製ソフトが持つ優れた機能への素早い追従が要因といえるだろう。実際、他のツールの機能を取り込めるプラグインが増えてきていることもあり、各3DCGソフトの使い勝手は年を追うごとに似通ってきているのが実情だ。

これら、インターフェースや機能の近似化と統一化は、それぞれのソフトの特徴を埋没させる反面、ユーザーにとってはソフトの乗り換えや併用に抵抗がなくなるというメリットを持つ。少なくとも、実際にこれらの3DCGソフトを併用しているゲーム開発者やCGスタジオのエンジニアにとっては、喜ばしい傾向にあるのではないだろうか。

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