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【夏季特別企画 Mac対談 Vol.1】「世間のニーズを吸い取って、緻密な計画のもとに仕様を変えていっている」

1999年08月11日 00時00分更新

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夏の特別企画ということで、Mac専門家の御ふた方にMac対談をお願いした。先日ニューヨークで開催されたMacWorld EXPOの総括を、メーンテーマとし、今年後半、アップルが提供してくれそうないろいろな話題に話を広げていく。実際に現地からいろいろなリポートをした林信行氏と、日本でascii24の記事をサポートした千葉英寿氏にご登場願った。

「見ると欲しくなるiBook」

本誌編集部「今回、夏の特別企画ということで、Mac専門家の御ふた方にMac対談をお願いしています。先日ニューヨークで開催されたMacWorld EXPOの総括がこの対談のメーンテーマなのですが、実際に現地からいろいろなリポートをしてくださった林さんと、日本でascii24の記事をサポートしてくださった千葉さんにご登場願いました。

今年後半、アップルがいろいろな話題を提供してくれそうなんですが、まずは、MacWorld EXPO最大の目玉だった『iBook』を振り返って、どんな印象を受けたか、そんなところからお話をお願いいたします」

千葉「実は、林さんからMacWorld EXPOのリポートを受けとったすぐあとに、というかiBookが発表されたすぐあとに、概要をちょっとまとめて仲間うちに送ったんですよ。『iMac』のときもやったんですけど、iBookのときは、野郎に訊くのはつまんないと思って、知り合いの女の子40人ぐらいに、いっせいに2点だけ軽い画像くっつけて、こんなんだよーって送ったんですよ。で、感想聞かせてって言って。

一応みんな、“かわいい”って言うんですよ。その“かわいい”が、“かわいい、キャー”じゃなくて、“かわいい(絶句)”だったり(笑)、いろんな“かわいい”があるんですけど、その中で“このデザインは私の好みじゃない、どうも違うんじゃないか”っていうのが、珍しく2つぐらいあったんですよ。

iMacでもそうだったんですけれど、外見とは裏腹に、実物を見てみるとすごくよくできてて、“こんなところまで、こんなふうにやっている”みたいなところがあったじゃないですか? もちろん、われわれiBookのことで、そういう細かいところって、これから見ることになるわけだからわからないんですけれど、そこらへんのことを実際に現地に行かれて実物を見た林さんに教えていただきたいんですけれども」

林「まさに、いま千葉さんが言ったとおりで、去年のiMacが発表されたときもね、最初見てかわいいっていう人は大半いたけど、その中に絶対嫌、あんなデザインとか、あんな気持ち悪い色は嫌って言う人もけっこうあったんですよ(笑)。でも、やっぱりものを目の前にすると印象が違うんですね。ジョブスがiMacを抱えている写真ってあったじゃないですか? あれ見るとすごい巨大に見えますよね。ところが、実際に目の前で見ると、すごく小さく見えたりする。アップルはiMacの角をなくして、全体的に丸みを帯びた、すごいいデザインにしている。

林信行(はやし・のぶゆき)氏:フリーランスコンピュータージャーナリストで、MACPOWER、MacPeople誌アドバイザー。両誌では海外ニュースのセレクションなども手がけ、過去9年間米国で開催したすべてのMacWorld EXPOに参加している
林信行(はやし・のぶゆき)氏:フリーランスコンピュータージャーナリストで、MACPOWER、MacPeople誌アドバイザー。両誌では海外ニュースのセレクションなども手がけ、過去9年間米国で開催したすべてのMacWorld EXPOに参加している



iBookも実はすごい巨大なんですよね、あれ。『PowerBook G3』を重ねると、PowerBook G3より全然あっちのほうが大きかったりして、3Kg近くあったりする。でも、目の前にあるとすごい小さく感じる。実際に持ってみても、3Kg? これが? っていう感じで、感じないんですよね。いままでは『PowerBook 2400』にしても、だいたいバッテリーは片側に入れるので、重量バランスが悪くてすごく重く感じたりすることがあった。でも、iMacはバッテリーが全体に横に長く、左端から右端まできているから、すごい重量バランスがいい。そんな工夫をしている。

まあ何ていっても、ジョブスの基調講演の発表で、あのマジックの中でみんなすっかりだまされてしまったというのもあるんだけど(笑)、ものを目の前にしたら意見が変わってくると思いますよ。きっと1回ね、あのデザインが嫌いだとか言っちゃうと意地でちょっとそれ引っ張ってくる人もいるかもしれないけど、でも心のどこかでは、欲しいって感じるんじゃないですかね」

千葉「iMacのときも、特にエンジニア系の人とかWindowsが好きな人とか、あんなのはパソコンじゃねえよ、玩具みたいなことを言っていたけど、それが突然ね、ぼくの知り合いで、N社というパソコンの会社にいる方なんですけと、彼から突然電話が掛かってきて“千葉さん、iMacって、やっぱりいいかな”とかって言うんですよ。“いいんじゃないですか。2台目とか、お子さんが使うとかっていうのなら”。“それもあるんだけど、おれが使ってもパフォーマンス的には全然問題ないよね”っていう話で、“あとはだから、本当にこれは買いかどうかっていうのを、ちょっとひと押しして欲しくって”と言うから、“いや、買いですよ”と言ったら、“わかった。じゃあ、いまから買う”って言って。すぐにローン組んで買っちゃったっていう話があって(笑)。

“あんなに嫌がってたのが何で変わっちゃったの”って言ったら、現物が、要するに自分の近くの電機店にきて、現物を見てみて変わっちゃったんですって。写真で見ても雑誌で見ても全然欲しいと思わなかったものが、現物を見たら、これは欲しいと思っちゃったらしくて。物欲をくすぐるっていうのかな。だからiBookでもそういうことがあるのかなと思って」

林「本当にiBookもiMacもね、目の前にあると、まず、ものとして欲しくなっちゃいますよね。きっとあれがただの空っぽの箱で、動かなくてもちょっと欲しくなっちゃうかもしれない(笑)。それで、でもじゃあ中身はどうかっていうと、廉価版のパソコンの、1000ドルぐらいのパソコンの、何も大したことない代物かというと決してそうじゃなくて、しっかりCPUも速いしね。

そうするとなんか、さらに一押しされちゃって。でも、きっと ascii24を読んでいるような人たちは、ある程度はコンピューターを使っている人たちで、そういう人たちとまた別の見方をする、コンピューターを全然知らなかったり、触ったことのない人たちに対する引きって、さらに強いんじゃないんでしょうかね。

というのは、いままでのパソコンって、スペックとかが引きになっていて、それ以外のことはね、どちらかというと二の次だったから。最近、WindowsマシンでもiMacそっくりのパソコンが出てきましたよね」

千葉「ええ」

林「うん。でも、なんだかんだ言ったって、スペック重視のためにデザインが不細工になっていっちゃうっていうか。iMacもiBookもそうなんだけど、裏から見ても、きれいなパソコンなんですよね。そういうマシンを出してくるメーカーって、確かに色つきのパソコンは出てきているけど、いまだにアップル以外にはないですもんね」

緻密に計算して仕様を少しずつ変えてきた

千葉「でも、なんでですかね、潔さがちょっとまだ足りないのかな。別に、そういうかたちでもってWindowsマシンが出てきても全然おかしくないし、大歓迎だと思うんですけどね。イマイチ、なんでここでためらっちゃってんのかなーっていう感じはありますよね。ここでがんばれば、ぼくだって買ってもいいなって思うようなものになるはずなんですけどね。残念ながらそこまでいかない。逆に言えば、それができるアップルが、ある意味ではすごいっていうか、会社を賭けているっていうか」

林「本当にアップルはちょっと前まで、崖っぷちに追いやられてつぶれてもおかしくないような感じだったから、だからこそ、あそこまで徹底してできたって言う人もいるけれど、そうじゃなくても、きっとジョブスだったらやったでしょうね」

千葉「やっぱ、ここ1、2年見てきてるけど、やっぱり緻密に計算してやっているような感じはありますよね」

林「本当になんか抜け目がないっていうかね、最初iMacが出てきたときに周辺機器が足りなくて、USBでしか拡張できなくて、HDDも増設できないみたいなことで言われていたけど、そこらへんも状況が変わっちゃいましたもんね。USBのHDDは出てくる、MOは出てくるようになるはでね。で、このiBookがまた無線通信とか、そういったところでちょっとノート型パソコンのあり方みたいなのを変えてきちゃうんじゃないですかね」

千葉「そうですよね」

林「日本でいままでの、日本人がノート型パソコンに求めていたものって、とにかく軽いことでしたよね。薄くて軽くて。だけどそれとまったく全然別の方向性で攻めてきている。でかくて重くて」

千葉「でかくて重くて(笑)」

林「でかい、重いが気にならないというか、そういったものはもう気になる要素じゃないんですよね」

千葉「そうですよね。林さんもぼくもPowerBookを持ってますけど、たぶんこれを持ち歩いて、本当に街中でいきなり通信をやったり、実際に原稿書いたりって、少なくともぼくらみたいな業界の人間ぐらいで、一般の方でそういうことやる人って、なかなか見かけないですよね。ましてオールインワンのノートパソコンをそういうふうに使う人っていうのはあり得ない。と考えると、家で使うオールインワンのノートパソコンは省スペース以外の部分ではデスクトップとなんら変わりようもないわけですよね。結局、線に固定されてしまっているっていうところがあるじゃないですか。

千葉英寿(ちば・ひでとし)氏:編集者・フリーライター。大学卒業後、書店店員を経て、DTP業界紙の編集責任者として活動後、フリーランスとなる。現在、ascii24(アスキー)、JIJI NEWS Watch(インプレス)などのデジタルメディアにおいて執筆中
千葉英寿(ちば・ひでとし)氏:編集者・フリーライター。大学卒業後、書店店員を経て、DTP業界紙の編集責任者として活動後、フリーランスとなる。現在、ascii24(アスキー)、JIJI NEWS Watch(インプレス)などのデジタルメディアにおいて執筆中



いつも使っていて思うのは、たとえばインターネットにつなげる部屋に普段はiMacとPowerBookが置いてあるわけですよ。たまたま、その部屋じゃなくて違うところで動かしたいとき、たとえばキッチンでやりたいとか自分の寝室でやりたいとかというときに、電源はありますから動かすことはできる。でも、インターネットつなげたり、メールのやりとりをするとなると、結局、電話線のあるところに行ってつながなきゃいけない。この場所でつながるといいのになーと思って、結局はPHSで通信してみたりするんですけど、PHSはどうも通信状況がよくなくてつなげなかったりしますよね(笑)。

考えてみると、iBookはたぶん持って歩くことはないだろうけど、あれを家の近くで使えたりしたら、なんて便利なんだろうと思うこともありますよ。たとえば家の外で、テラスとか、そういうところでやってもインターネットつなげると思ったら、これは面白いよなと思って」

林「そうそう。やろうと思ったらベッドの上でもね、寝っころがりながね、テレビ見ながらでも、URLを打ち込んだりもできるしね」

千葉「ぜひ、早く無線通信のよさを享受してみたいと思いますけどね」

生活に彩りを与える

林「すでにあったパソコンの使い方で何かすごいものを提示するんじゃなくて、本当に新しいライフスタイルっていうか、パソコンが溶け込んだ新しいライフスタイルを提示してますよね。そういうところで、やっぱりiMacと同じようなエポック・メーキングというか、発想の違いがあると思うんですよね」

千葉「女の子の中には、もっと小さいのが欲しかった。バイオのC1みたいな、ああいう大きさのが欲しかったと言った子がいて、確かにそういう路線もありだと思うんだけど。たとえば、いま君が持っているiMacをiBookに置き換えたら生活がどういう風に変わるか、ちょっと想像してみ、っていう話をしたら、それはすごくいいかもしれないというふうに言っていて。やっぱりそういうことですよね。狭いながらもいろいろなところでやれる。iMacより場所を取らないですよね。そうなってくると面白いんじゃないかなと思いますけどね、本当に」

林「このiBookは出てきて心配なのはiMacがどうなるかですよね。(笑)」

千葉「それはありますね。(笑)」

林「iBookの唯一のライバルというのはきっとiMacですよね」

千葉「そういうことになりますよね。iMacって、新しいバージョン、出たりするんですかね。

林「iMac2ができてるってことも聞いたりしますけどね。とにかく今度iBookでユニノースとかっていう新しいBTチップを搭載してて、これがAGPとかFireWireの機能も搭載しているっていうんで、このチップを搭載してきたら次のiMacはAGPとかFireWireを搭載するのは簡単だと思うんですよね。それをジョブスが初心者には複雑すぎると考えちゃうかどうかがちょっと気になるところですね」

千葉「うーん」

林「ただ、次のiMacでFireWireを搭載したら、今度きっとIEEE1394の業界団体がそれ、喜びますよね」

千葉「そうですよね」

林「パソコン周辺機器接続用の1394が、USBのときと同じようにドバッと一気に」

千葉「そうですよね。パナソニックからも出ましたよね」

林「あ、G3には」

千葉「あれ、だからiMacがFireWire積んだら5色で載せるわけですよ。(笑)」

林「それ、メーカーとして大変でしょうね。いつも思うけど、USB周辺機器って5色の周辺機器が増えちゃうんだけど、ぼくはけっこう5色に合わせないほうが好きなんですよ。

アクトンっていう会社とか、あるじゃないですか。あそこらへん、知ってます? 変な形のハブを出してるとか、Ethernetのハブでイズイ何とかって、ちょっと忘れちゃいましたけど。あと、USBのハブでも黄色のやつとか歯ブラシがついてくる(笑)、あそこのメーカー、たぶん全然iMacの色に合わせてなくて、ああいうふうにやったほうがかえって賢いようなね、iMacがブルーベリーだからって全部ブルーベリーだと、なんか気持ち悪いですよね(笑)。」

林「収録用にいくつかムービーを取り込んであって。(持ってきたPowerBookから、MacWorld EXPOで収録したビデオ映像を再現しながら)このね、スリープビーコンっていうのがなんか、点滅の仕方がいままでみたいにチカッチカッじゃなくて、すごい滑らかだったりとかね。すごい細部にこだわりがあってね」

千葉「あ、そう、白いキーボードって、すごい評判いいんですよ、女性に。考えてもみなかったですけど。白いキーボードって、それだけで買ちゃいそうっていうのがけっこういましたよ。考えてみれば白いキーボードって、でもあれか、いままでのやつはアイボリーっていうか、ちょっとベージュですからね」

林「ドイツに行くと全部白いキーボードなんです」

千葉「あ、そうなんですか」

林「政府のほうで決められちゃってるんですよ。日本のJISキーボードみたいなもんで、それをやらないと役所とかに入れらないっていう」

千葉「ふうん。どんなもんですかね、あの白いキーボードって」

本誌編集部「汚れが目立つかもしれないですけどね。(笑)」

林「デスクトップのキーボードって、白じゃないですか、ほとんど」

千葉「(PowerBookのビデオ映像を見ながら)え、これ、どういうふうに撮ってあるんですか。上から撮ったんですか」

林「三脚で。三脚がフニャフニャだったんで、けっこう揺れちゃったんですけど」

千葉「あ、そういうふうになってんのか」

林「もうこれは完全に独立してるんですよね。これ、『マックパワー』の付録CD-ROMにムービーが入るので、よければ宣伝していただくと(笑)。」

林「ここ、ちょっと見えないんですけど、“My family name is 何とかかんとか”とか、“I was made in Taiwan”とか、かわいらしく入っていて。PowerBook G3のキーボードと、ほとんど同じです。ストロークもまあまあ」

千葉「なるほど、いいですね」

ねじとポートと入出力

林「だから初心者用だからといって、扱いづらいキーボードということは全然ないですよね」

千葉「CDのトレーはiMacとG3とかと一緒ですか。あ、それがあれですね、バッテリーの。ネジ止めになってるって話を聞きましたけど」

林「90°キュッて曲げると。コインかなんかで」

千葉「あ、そういうネジなんだ。なるほど。それはいいですよね」

林「これ、なんでああいう風にしたかっていうと、iMacのデザインって、いろいろ意味があって、とにかくムービングパーツっていうか、カバンとかに入れて、けっこう乱暴に扱ったりすることも考えてあるんですよ。閉じちゃって、こういった状態にして置いておくと、ポロッと取れちゃったりするとか、あとバキッと折れちゃったりすることが全然ないんですよね。

ハンドルの部分を手で持つじゃないですか。で、パッと離すとバンッとバネで戻っちゃうんですよ。何でこんなに勢いがあるんだって思うぐらいなんだけど、それがしっかり、カバンとかに入れたときに固定されるようになっているんですよ。だからカバンに入れたときも中途半端に開いちゃって、なんかボーンとか置いた拍子にボキッと取れちゃうようなことはないんですよね。

あと、電池とかも、普通のだったら乱暴にボーンとか放り投げたりすると、まあ、そこまで乱暴にやったら保証は効かないかもしれないけど、取れちゃったりすることが、たまにあるんですよね」

千葉「そうですよね。ぼくもたまにありますよ」

林「そういったこともないし」

千葉「それはいいですよね」

林「普通はノート型って、Windows用にしても、これまでのMacにしても、必ずこういう外部入出力やインターフェースを保護するカバーがあるじゃないですか。これもないんです。全部側面も裸の状態であるから。そのかわり壊れることはない。PCカードスロットもないし」

千葉「背面はじゃあ、どうなってるんですか」

林「背面はハンドルが1個ある、それだけ。iMacもすごい背面がすっきりしてるじゃないですか。それと同じで、背面がまるっきり何もないんですよ。あと、アクセント用なのかわからないけど、ネジが2つある」

千葉「ネジがあるのはそこだけなんですか」

林「いや、ネジはここに2ヵ所見えているのと、あと正面のここらへんに2つぐらい見えているだけ。ほかのネジはちゃんと隠してあるんですけど、そこだけ見えるっていうのは、たぶん、PowerMacG3の方もわざとアクセントでネジ見えるようにしてるじゃないですか? それと同じように、視覚的なアクセントといった感じだと思います」

千葉「なるほど。ほかのポートはどんな配置になってるんですか?」

林「こちらに。(再び、PowerBookを取り出して映像を再生)ちょっと見づらいですね。

これがたぶん100Base Tで、もう1つあって、その横にUSBが1ポートだけあって、それだけですね」

千葉「剥き出しになってるままなんですか。カバーが閉じたりしないんですか」

林「閉じたりしません。で、音声の出力ポートだけあって、入力ポートはないんですよね。それだけちょっと不満でならないんですけど、音声入力がマイクも内蔵してないし、USBで入力するしかないんですよね。で、今回けっこうEXPOでも目玉になっている『ViaVoice』が、ドラゴンシステムズの『ドラゴンナチュラルスピーキング』のですからね。今後も音声認識用ソフトがMac用もけっこう出てくるにもかかわらず」

千葉「そうなんだ」

林「ただ、一応、EXPO会場で、テレックスっていう会社が、世界で最初とうたっていたんですが、USBのマイクを出してましたね。ヘッドセットの形になってますけど。ただこれを一緒に持ち歩かなければならないっていうのは、ちょっと嫌ですよね」

千葉「そうですよね。もうちょっとスマートな形になれば持ち歩いてもいいですけれど」

林「本当、iMacでもマイク内蔵してるのに、なんでそんなところでって思っちゃうんですけどね」

東京のモバイル通信環境

林「他に欲しいのはUSBのEthernetですね。日本で使用する場合、あとPIAFSとかね、ぼくやっているんですけど、それがつなげないというのはちょと困る。USBに接続できる携帯電話とかも出てきたらしいけど、まだPHSはないですもんね」

千葉「PHSはまだないですね。そうですね、ぼくもPCカードを使えないのはつらいな。マウスボックスでもいいから欲しかったな」

林「そうですよね。あと日本だとMacOS 8.5の中で、赤外線で公衆電話で通信ができるとかって、まあ、恥ずかしくてなかなかやれないかもしれないけど(笑)。」

千葉「実は、ぼくはけっこうやっているんですよ。アクセスするポイントはけっこうあって、新宿(東京)の駅、南口を出るところ、中央線の改札、降りるところに両側にありますよね。いつも埼京線(JR東日本)で来るんで、埼京線からまっすぐ来て、歩きながらカバン開けて、PowerBook出して、スリープを解除して、ちょうどポイントに着くころにスリープ解除されている。それで、つないで、カード入れて通信するんです。すると、うち(埼玉)から新宿に来る間に20件ぐらいメールが入っているんです。速いですよ。あそこでメールを20件落とすのでも、1分ちょっとですからね」

林「ぼくはもうPIAFSなんで。けっこう最近、どこでも入るんでね、使っているんですよ」

千葉「32K、1回使ったんですけどね、うち、つながんないんですよ(笑)。あんまりにも田舎なもんで(笑)。もうちょっと安定してつながるようになればね、ぼくもPIAFSにしようかなと」

林「でも、赤外線通信ができる公衆電話って、けっこう地方でも出てきてるんですか? 地方っていうか、都市圏以外でも」

千葉「あ、けっこうありますよ。さすがにぼくのうち(埼玉県)のそばにはないですけど、帰りしなに寄るとすると、たとえば新宿もあるし、池袋(東京)もあるし、赤羽(東京)もあるし、浦和もあって、大宮(埼玉県)もあって、基本的にどこかの駅で降りるとすれば、たいがいある。大宮の駅なんかは構内に4つ、駅出て西と東で合わせて10個ぐらいある。すごい勢いで広がってるんですよ。で、このあいだまで普通の電話機だったのが、もう赤外線通信できるタイプに替わってるっていうケースは、けっこうありますよね。恵比寿(東京)なんかもすごい勢いで増えてるし。なんか言ってたじゃないですか、年内に30万台にするとか。勢いはありますよね、すごい。

(財布からテレホンカードを取り出して)話がそれちゃうんですけど、このテレホンカードで使うんですよ。ぼく、よく知らなかったんですが、これは電話番号を覚えるんですってね」

林「え、そうなんですか」

千葉「これ自体が電話番号、覚えるんですって。種類があって、度数が高いほうが10個まで覚えるのかな。度数低いやつは1個しか覚えないんですけど、それだけでも、1個覚えて、消去してまた別のやつを入れることもできるんですよ。なおかつ、これで期限があって、期限が切れると使えなくなるんですけど、移せるんです。もう1枚買って、有効期限が長いほうのやつに移すことができるんですって。よくわかんないんだけど(笑)。

それを電話機のとても小さいインターフェースでやるってことを考えると、ちょっと気が遠くなるんですけどね。ものすごすごいアイデアだなと思いました。たとえば、これをPHSの替わりに小学生に1枚持たせておいて、家の電話番号を入れておけば、家につながるとかね、電話番号を覚えていなくても。そういうふうに考えると、けっこうこれは面白いと思って。あとは電話機を置く場所をちゃんと作って欲しいといつも思いますね」

林「結局ぼくたちっていつも大きな荷物を持っている人間なんで、外でモバイルをやろうとすると、ISDN公衆電話なんかでやろうとしても、かばんをこっちに置いてなんて感じで、狭苦しくやらないといけない(笑)。基本的に、片手で持てるザウルスなんかの使い勝手しか考えてないんですよね。唯一ね、恵比寿のウォークウェイの中間のところにある電話機が、ノートパソコンでも,無理なく通信できるんですけどね。あとは車椅子の人用の公衆電話ボックスぐらいですね。

その辺のニーズは結局、日本市場だけでね、アメリカ人とか、だいたい日本に来たやつが、あ、ISDNの公衆電話がこんなにいっぱいあって、しかも今度は赤外線か! なんて驚くんですよね」

千葉「一体どうなってんだ? って話になりますよね」

林「iBookに搭載されているエアポートもすごい面白いけど、結局、ワイヤレスLANだから、あくまでも見えない50mの壁になっちゃってるんで。いままでのパソコンをバリバリ、モバイルして使おうっていうユーザー向けじゃなくて、うちの中とか学校の中で、新しいライフスタイルとしてパソコンを使っている人をターゲットにしてますよね」

いままでのノートと別のものを目指すのか

千葉「やっぱり本当のモバイルではないですよね。モバイルじゃないと言ってましたっけ、アップルも。なんかそんなようなフレーズがどこかにあったと思います。となると、やっぱりモバイル用のマシンが欲しいなと、ちらっと思ったりしますよね」

林「日本はモバイルで使用することを考えると、iBook嫌いだっていう人が、けっこういるみたいですけどね」

千葉「でもぼくはモバイル用途とは別もので、iBookはiBookでいいなと思いますけどね。でも明らかなのは、PowerBook2400はしばらく使わなければいけないというのが判明しちゃった(笑)。これの後継機が出て欲しいなっていうのはありますよね」

林「正直なところですよね。それで必ずしもCD-ROMがついてなきゃいけないってことはないと思うんだけどな。あれだけHDDがでかくなると、OSを起動するのにCD-ROMが確かに必要だとしても、そんなことは頻繁にあっちゃ困るじゃないですか、逆に言えば。なくてもいいわけだから、あとはCD-ROMの内容なんて、圧縮してポンと放り込んでおいても、いくらでも入りますよね。その方向性のやつが欲しいなって思うと、これの後継機かな、日本のユーザーが一番ほしがっているのは。いまのPowerBook G3のテイストで、このサイズでっていったら、飛びつく人、たくさんいると思いますけどね」

だから、iBookは、本当にいままでのノート型とはまったく別のところを目指しているわけですよね。ぼくは、仕事で海外の取材とか行くときって、PowerBook2400をけっこう使うんですけれど、これを持って行く場合には、外付けのCD-ROMドライブを持って行って、それからEthernetのカード持って行って、ビデオ取り込みカードを持って行く、それから何持ってく、かに持ってくって、すごい大変な量じゃないですか。それだったらG3で、多少重くても、1台で済むほうが全然いいんですよね」

千葉「そうですよね」

林「だから、スペック的なことを考えると、ぼくとかに必要なのは、PowerBook G3のオールインワンだと思うんだけど、それと別に、うちでベッドの上に寝っころがりながら、ウェブラリーするためのマシンとしてiBookが欲しいですね。で、そういったベッドの上で寝っころがりながらウェブラリーするためのライバル製品がiBook以外にあるかといったら、きっとウェブTVぐらいしかないですよね」

色と素材

千葉「iBookに関して、たくさん質問が出たのはね、ほかのカラーはどうなっているの? っていうことなんです。あと3種類がどうなるのか? iMacも最初にボンダイブルーが出たときに、ボンダイブルーはiMacにふさわしい色だから、これしかないんだっていう言い方しましたよね。でも舌の根も乾かないうちに5色出しましたよ。今回も、この素材に合う色が、この2色なんだと言ってました。ということは、また舌の根も乾かないうちに3色出したりするのかなと思ってるんですけどね」

林「iMacもね、最初は、一番ふさわしいのはこの色だと言いながらも、ユーザーの意見に耳を傾けて5色出した。ユーザーからの要望で、ほかの色と欲しいという要望があったから5色出したということが、アップルの“Tell us”っていうページに載っているんです。そこに行って、みんなが大勢欲しいと言えば、そのうち出るかもしれないですね」

千葉「オレンジは何でしたっけ? タンジェリーでしたっけ、タンジェリーよりはストロベリーのほうがよかったなって言う子もけっこういましたね」

林「今回、タンジェリーの色がすごい目立ちますよね」

千葉「そうですか? 発色はよさそうですよね」

林「素材がちょっとiMacとは微妙に違うんで。この素材に対して、色を塗ると、ブルーベリーよりかはタンジェリーのほうがいい。プレスのQ&Aで1番質問が多かったのは、タンジェリーはiMacで1番売れていない色じゃないか? って、なんでわざわざ採用するんだっていって、それに対する答えが、同じ筺体(きょうたい)で違う色をいろいろシミュレーションしてみたけれど、1番映えるのはこの2色だったと言うんですね。けれど、1番映える色って人によって違いますよね。

ぼく個人は、タンジェリーが1番、色自体がアクティブな色だし、こういった製品には似合うような気がしてならなかった。逆にブルーベリーがね、ただ単にiMacで1番売れている色だから無理やり採用したんじゃないかって気がしちゃったぐらいに、タンジェリーが合ってる気がしたけど」

千葉「あと、素材はどんな感じなんですか。丈夫だって話は聞きますけど」

林「そうですね、透明感がないですね。ここの辺は。iMacに似ているかわからないですけど、ハンドルがついて、ボンって机の上に間違えて置いたりする可能性もあるじゃないですか。それを考えてか、色がついている部分が、ゴムをちょっと混ぜたような」

千葉「ラバーを」

林「コーティングしてるのかな、そういった素材らしくて。ちょっと透明度がないっていうか、逆にゴムっぽい質感があるような素材になっている」

千葉「何ていう素材かは公表してなかったんでしたっけ?」

林「いろいろ聞く人によって違ったりして、ぼくもあんまりよくわかってないんですけどね。プロダクトマネージャーに訊くと、ポリカーボネートとゴムを両方混ぜてつくったような素材だという」

千葉「ポリカーボネートというのは信号機と一緒でしたっけ。信号機に使われているやつ」

林「ああ」

千葉「一番丈夫で透明な素材といわれている。ちょっと調べないとわからないですよね。あれと一緒なんですよ、“ゾウが踏んでも壊れない”んです。多分そうだと思います」

林「でも、日本だと、ポリカーボネートを使ったということでiMacがグッドデザイン賞を逃してね。デザイナーの川崎和夫さんがね、残念そうなこと書いてましたよね」

千葉「あ、川崎さん。こないだ会ったときに言ってました。どのぐらい丈夫なのかっていうのは、テストのデータがあったりするといいんですよね」

林「そこら辺は、もっと発売日が近くなったらはっきりするらしいけど。頑丈だ、頑丈といっても、いわゆるパナソニックの、デューティーLAとかを目指しているわけじゃないんで。机の上から落としても大丈夫かというと、そういう保証はないという」

千葉「いわゆる時計で言うところの生活防水のような、普通の生活の衝撃に耐えるということなんでしょうけどね」

林「そういう感じですね」

千葉「早く現物を触ってみたいですね、ぼくは」


日本の展示会でどう展開する?

林「日本だと、きっとWORLD PCEXPOはね、最初に触れられる場所になるでしょうね。9月7日かな」

千葉「でも、あと1ヵ月ないですね。じゃあ、また今年のWORLD PCも、話題はアップルですか。去年もそうでしたけどね」

林「今回はWORLD PCEXPOはなんだろう、WORLD PCEXPOのウェブページを見ても、アップルがどこに出展するか書いてないんですよ。出展することは書いてあるんですけど、聞くところによるとFireWireとかUSBとかの展示をやる、でっかい2つぐらいのホールがあって、そこにたぶんアップルが出展するらしいです。FireWire、USBの製品ってMac用が多いじゃないですか。多分そのホールのほうを、丸々iMac用にするんじゃないかな」

千葉「また、でっかいバルーンが出るんですかね」

林「うん。で、さらに予想できるのは、今回のニューヨークのアップルの展示パビリオンをそのままきっとWORLD PCEXPOに持って来ますよね。だからアメリカでまず最初にiBookを大々的に見せて、次に日本のWORLD PCEXPOでアジア向けに見せて、9月の十何日からアップルのEXPOがパリであって、そっちでまた同じパビリオンで見せて。その分、先月、MacWorld EXPO香港だったかがあったはずなのが、節約してなくなっちゃったんですよ。そのお金を全部WORLD PCEXPOにまわして発表してくるんじゃないですか。

(再びPowerBookのビデオ映像に映し出されるiBookを見ながら)ちょっとだけ見えますけど、メイド・イン何とかじゃなくて、“I was assembled in Taiwan ”とか、“My family number is 何とか”とかって書いてありますよね。これがバッテリーの部分です」

千葉「また、凝ったの作りましたね。でも細かいところを見ると、うーんって感じですよね」

林「何だろう、形が、単純なようで、けっこう複雑で、とらえどころがない形っていうかね」

千葉「ああ、ここはこんなに光ってるものなんですか」

林「ここは、iMacの裏側みたいな感じです」

千葉「なるほど」

林「立体的。で、PowerBook G3だとキーボードとトラックパートの間がけっこう離れていても、どうしてもホームポジションから離してじゃないとうまく操作できなかったのが、もうちょっと寄ってるし、本当に使い勝手がよさそうですよね」

千葉「液晶はどんな感じですか」

林「すごい明るくて見やすかったですよ。12.1インチとか、デザイン的にうまく見せてるのかわからないけど、そんなに小さく感じないんですよね。きっと使っていると、 解像度が800×600ドットなんて、ちょっと狭いって感じる人がいるかもしれないけど、液晶そのものの大きさを見たときには、そんなに小さく感じないですね」

千葉「フルカラーじゃなかったんでしたっけ」

林「うん。でも、一応、レイジモビリティーっていう、オート用の最速ビデオチップを採用してきましたね。ビデオチップ周りに関してだけはね、AGP接続だし、PowerBook G3より速いですよ、きっと」

千葉「でも、その辺はまたマイナーチェンジしていく可能性はありますよね」

林「まあ、PowerBook G3もそのうちAGPになっていくんじゃないかと思いますけどね」

iBookがiMacの市場を食う?

千葉「こうやって、見れば見るほど欲しくなるな」

林「現物を見ると欲しくなる人はきっとね。いまはさ、あんなiBookなんて、軽くもないし、大きいし、あんなもん邪道だ、じゃないけどね、そういうふうに言ってるような人が、現物見てるとそのうちね、買いたいだとか、仲間内に言い出すようになるんですと」

林「最初の話みたいになってきた(笑)」

千葉「買わないって言ったやつが、うちに行ったらポコッとあるとか、なるんでしょうね。日本は値段、いくらぐらいなんでしょうね」

林「そこらへんが一番気になりますよね。20万円超えるってことはないでしょうけどね。17万か、18万か、そこらへんですよね」

千葉「iMacとあまり差がつくとね。ただ、iMacと同じってことはあり得ないでしょうね」

林「うん、それはないですね。アメリカの価格で見ても、iMacよりこっちのほうが高いですからね。アメリカはいま1299ドルでしたっけ、1100ドルだったかな」

千葉「それでも20万円切れば十分ですよね」

林「うーん、でも、それってきっとパソコンユーザーの意見ですよね。ターゲットにしてるのは、パソコンを初めて買うっていう人ですからね。18万円とか19万、出す勇気があるかと。それ考えると、本当は理想は17万ぐらいですよね」

千葉「ほかのWindowsマシンはどんどん下げてますからね」

林「うん、ただ、それを言ったらきっと、デスクトップにしても8万円だの7万円だののWindowsマシンもあるけど、それでもiMacを買う人は、それなりにいるわけですからね。Windowsと特に比較する必要は、もしかしたらないかもしれないですね」

千葉「となると、ほかのアップル製品ですかね」

林「本当、一番のライバルはiMacでしょうね」

千葉「でも一番買うのがiMacのユーザーっていうのもつらいでしょうね(笑)。すでにiMacを買っている人が、こっちに買い替えるようと思っている人もけっこういるでしょうね」

林「デザインの整合性とかも考えていると、1個、iMac置いてあって、こちらもということはあるかも」

千葉「実はうちはもう、ぼくの預かり知らないところで2台目ってことになっていますからね(笑)。でも、ぼくは使わせてもらえそうもないんですよ(笑)。本当はiMacを2台買うって言ってたんですけど、ちょっとごまかして1台しかまだ買ってないのが、どうもひんしゅく買ってるみたいで。

なおかつ、iMacは使わないよって言っていたにもかかわらず、スロットのマシンにたまに使ってるんで。お父さん、PowerBookがあるじゃないって言われてしまっていて。娘が。まだ4つなんですけどね、EXPOがあった翌日に、ぼくが朝、原稿書いてたら横から、“これ、何? iMac? 違うなー”とか言って。“買うの? 買うよね!”って、勝手に買ことになっちゃってる(笑)。だれが使うんだよって言うと、“私。だってかわいいもん”。4歳にもわかるかわいさ。30代の女性も認めるかわいさ。そのへんだよなと」

林「これが本当ですよ。アップルはね、今年のクリスマス商戦はきっと安泰ですよね」

(Vol.2に続く)

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