日本ヒューレット・パッカード(株)(以下日本HP)は10日、記者会見を開催し、企業向けにインターネットビジネスを資金面で支援するサービス“HP
ストラテジック・ファイナンス・サービス”の提供を開始したと発表した。新たにインターネットを活用したビジネスに取り組もうとしている企業に対して、同社製サーバーなどをリース提供するほか、システムの構築や運用を代行し、それを利用した頻度に応じて課金するメニューを用意している。また、従来はリースサービス提供の対象としていなかったベンチャー企業にも、積極的にサービスを提供していく方針だ。
左から、日本HPテクノロジーファイナンス事業部コンピュータ・ファイナンス事業開発部の前田賢治部長、寺澤正雄社長、エンタープライズ事業統括本部 E-servicesプロジェクト室の浜崎伸夫室長。 |
HP
ストラテジック・ファイナンス・サービスは、“ベンチャー・ファイナンシング・プログラム”、“Pay-per-Use(PPU)ファイナンシング・プログラム”、“ソリューション・ファイナンシング・プログラム”の3つのプログラムメニューが用意されている。同社がファイナンス部門として設置している“HP
テクノロジー・ファイナンス”がサービスのコンサルティング、提供、サポートを担当する。
“ベンチャー・ファイナンシング・プログラム”は、設備投資のための資金調達が難しいベンチャー企業を対象としたプログラム。HP製のサーバー、パソコンのリース契約を、資本金などの審査項目の基準をこれまでより低くして提供する。同社では従来、営業を開始して2年未満の企業にはリース契約などを提供していなかったが、これにより営業開始直後の企業でもリースサービスなどが受けられるようになった。
すでにこのサービス受けているベンチャー企業が、ウェブ上で中古車のオークションビジネスを行なうバリ(株)である。同社は今年4月の創業で、資本金は4000万円。日本HPから資本金とほぼ同額となる約4000万円のクライアント/サーバーシステムのリースを受けている。「これまでなら、到底リース契約はできなかった相手」(前田氏)だという。
“Pay-per-Use(PPU)ファイナンシング・プログラム”は、ユーザーに対して、サービスの使用頻度に応じて課金するシステム。ターゲットとするのは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)やインターネットビジネスのために新たに子会社を設立しようと計画している大手企業となる。このサービスは、ネットワーク構築など、インフラの整備にかかるコストを日本HPが負担し、ユーザーはこのインフラを利用した頻度に応じて使用料金を支払う(ペイ・パー・ユース)というもの。新たにインフラを構築するコストを削減し、システム運用、保守などを統合して提供することで、ユーザー企業の投資を低減できるとしている。
“ソリューション・ファイナンシング・プログラム”は、大手企業をターゲットとしたサービス。インターネットを活用した電子商取引の導入など、既存ビジネスの効率化や生産率の向上などを図りたい企業を中心にアプローチする。メーカーなどが新たにインターネットを販路として活用する場合などに、コンサルティングやハードウェア、ソフトウェアの提供、システムの保守、管理、運用などを総合的に提供する。インフラ資源が不足していたり、IT部門に人件費を割きたくない企業、システム稼動までの時間を短縮したい企業などを対象にサービスを展開する。
日本HPの寺澤正雄社長は、「企業が単独でインターネットビジネスのためのインフラを構築する場合、大きなコストと人的負担が掛かる。これをHPが支援することで、少ない投資とリスクでインターネットビジネスに取り組むことが可能になる。HPでは、インターネットを次世代のビジネスに活用するためのコンセプトとして“E-services”を掲げている。今回のファイナンス面でのサポートで、企業の次世代インターネットビジネスへの取り組みをサポートできると考えている」とコメントした。
日本HPでは、初年度で500億円の契約を目指すとしている。これは、500億円の売り上げを目指すのではなく、想定されるリスクも含めて500億円の枠を用意して契約し、運用するのだという。500億円という金額は、米ヒューレット・パッカード社がワールドワイドで提供しているファイナンスサービスから、日本HPが提供する枠として設けている金額。
ベンチャー企業など、資金面での体力が少ない企業に投資することは、日本HPとしてはリスクを負うことになる。この点について、日本HPでは「失敗する事例もあれば、成功する事例もあるだろう。ロスを最小限にとどめることを念頭に置き、トータルで500億円という資金を焦げ付かせずに運用させることができればいいと考えている」(前田氏)としている。