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先端VRとギガビット通信を融合--岐阜MVLリサーチセンターが仮開設

1999年04月27日 00時00分更新

文● 編集部 原武士

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21日、岐阜県各務原市のテクノプラザ(*1)(科学技術振興センター)にバーチャルリアリティー(VR、Virtual Reality)研究とギガビット通信実験とを融合させる研究施設『通信・放送機構MVLぎふリサーチセンター』(*2)が仮開所した。なお、MVLは、マルチメディア・バーチャル・ラボの略である。

MVLリサーチセンターのあるテクノプラザ。建物は斜面に作られた独特のデザインで、上空から見るとVの字を描いている
MVLリサーチセンターのあるテクノプラザ。建物は斜面に作られた独特のデザインで、上空から見るとVの字を描いている



MVLリサーチセンターでは、岐阜県所有の6面没入型立体映像システム“COSMOS”(*3)と東京大学所有の5面没入型立体映像システム“CABIN”(*4)、郵政省通信総合研究所の3面立体視システム“UNIVERS”(*5)を研究開発用のギガビットネットワークで接続する。それに基づき、研究情報の共有による研究効率の向上や、産業界に対するVRのアプローチについて研究する。

COSMOS。立方体の一部が可動式になっており、内部に人が入った後に蓋をする仕組み
COSMOS。立方体の一部が可動式になっており、内部に人が入った後に蓋をする仕組み



研究・開発は、東京大学、岐阜県、日本電信電話(株)、日本電気(株)、三菱電機(株)、(株)総合研究所が共同で実施する。研究期間は4年間で、8月に本開所となる。

ascii24では、センターのプロジェクトリーダーの東京大学の廣瀬通孝助教授に、別掲記事で研究計画についてインタビューした。

・【関連記事】【COMMNENT】「ポストGUIのインターフェースを探る」--東京大学、廣瀬通孝助教授
 http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990427/keyp01.html

6面没入型立体映像システム『COSMOS』を体験

現段階では、センターには研究用の機材などは運び込まれていないが、COSMOSは既に稼動している。COSMOSは、計算機に日本SGI(株)の『Onyx2 InfiniteReality』を1つのスクリーンにつき1台、計6台使っている。

計算に使われるOnyx2 InfiniteReality。廣瀬助教授は「まさに、モンスターマシン」とコメントした。
計算に使われるOnyx2 InfiniteReality。廣瀬助教授は「まさに、モンスターマシン」とコメントした。



スクリーン部分は、立方体の外側からプロジェクターで映像を映す仕組み。3次元画像は液晶シャッタリングメガネ(*6)を装着して鑑賞する。立方体の内部には複数の人が同時に入れるが、その中の1名がリーダーとなる。その人の視線(頭の向き)に合わせて3次元画像がリアルタイム計算され、表示されるようになっている。リーダーの視線は、立方体のスクリーンの外部にある、球状の磁気センサーで感知する。

この球体が磁気センサー、コイル付きのメガネをつけた人の頭の動きを探知する
この球体が磁気センサー、コイル付きのメガネをつけた人の頭の動きを探知する



記者は3種類のデモを体験させてもらった。はじめのデモは、街の中を自由に動き回れるもの。3次元画像が表示されると、四方を包み込んでいるスクリーンが背景に溶け込んでしまう。

街の中はアナログコントローラーを使い、移動する。移動しながらどの方向を見ても、画像のゆがみが感じられない。頭を急に動かしても、計算による画像の遅れがまったくないため、本当にその街の中にいるような感覚になった。直立不動の姿勢のまま、車に乗っているような速さで街の中を走るのは、かなり不思議な感覚。道を走るだけでなく空を飛ぶこともできる。

桃源郷に“酔う”

次のデモは、空中に浮かぶ3次元オブジェクトを体を動かして好きな方向から眺めたり、覗きこんだりできるもの。半透明の車が表示され、下から覗きこんだり、内部に入り込んだりできる。3次元CADで作成されたオブジェクトをリアルタイムに検証できるため、光造形装置(*7)の代わりとしての利用を期待している。

目の前にある半透明の物体に思わず手を伸ばしてしまう  目の前にある半透明の物体に思わず手を伸ばしてしまう


最後のデモは、鑑賞者が手に持つコイルに反応して光の円盤が手の上に表示されるもの。真っ黒の空間の中には、無数のオブジェクトが回転しながら浮遊している。光の円盤でそれらのオブジェクトに触れると、オブジェクトがゼリーのように変形する。ポストGUIの可能性を感られたデモだった。ただ、現実にありえない空間のせいか、船酔いのような状態になってしまった。

手に持つコイルに反応して仮想の円盤が出現する
手に持つコイルに反応して仮想の円盤が出現する



VRテクノジャパンの敷地には、公共研究施設の性格の強いテクノプラザのほか、民間企業の進出第1号、(株)イマオコーポレーションのビルが建っている。CADを出発点として、VRをテコに世界に雄飛しようというイマオコーポレーションにもインタビューした。別掲記事で紹介する。

・【関連記事】【COMMNENT】VRをテコに飛躍を狙う--岐阜のイマオコーポレーション
 http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990427/keyp02.html

前述のように進出済みは2組織だが、敷地内ではいたるところで建築工事が進んでいる。岐阜県ではこのVRテクノジャパンをVR産業の拠点にしようと計画している。情報産業はネットワークが存在すれば場所は関係ない。産業とVR、ネットワークを融合させるVRテクノジャパンの今後は、技術面だけでなく産業面から見ても注目に値するだろう。

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