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「VR研究の大学院設置も検討」--岐阜県各務原市の“ぎふMVLリサーチセンター”が正式に開所

1999年08月09日 00時00分更新

文● 野田ゆうき

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5日、岐阜県各務原市のテクノプラザ内に“通信・放送機構 ぎふMVLリサーチセンター(以後 “ぎふMVLリサーチセンター”)”が正式に開所した。開所式では、梶原岐阜県知事が挨拶にたち、"もの作り"の土地柄におけるVR技術の研究・開発の意義を強調した。

*1 4月21日の仮開所の模様は既報
【関連記事】先端VRとギガビット通信を融合--岐阜MVLリサーチセンターが仮開設
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/1999/0427/devi01.html


ぎふMVLリサーチセンターはテクノプラザ南棟にある
ぎふMVLリサーチセンターはテクノプラザ南棟にある



「VR研究の大学院設置も検討」

梶原知事は挨拶の中で、VR技術を使ったバーチャルファクトリー構想にも触れた。「バーチャルファクトリーとは、点在する工場をVR空間上に統合したもので、その際には、“ぎふMVLリサーチセンター”の成果がハイテク産業の製品開発に応用されることになることだろう」--。さらに、「VR技術のフィールドワークを研究するための大学院等の研究機関の設置も構想している」と述べた。

開所の挨拶で将来のテクノプラザ構想についても語る梶原知事
開所の挨拶で将来のテクノプラザ構想についても語る梶原知事



VR技術の産業への本格的展開が21世紀のハイテク製品開発にとって大きなポイントとなると言われ、その基礎技術の研究・開発には各国がしのぎを削っている。国と岐阜県が“ぎふMVLリサーチセンター”に寄せる期待は大きい。

続いて、東京大学先端科学技術センター教授で、プロジェクトリーダーの廣瀬通孝氏が研究の概要について説明した。

研究の概要を述べるプロジェクトリーダーの廣瀬通孝氏(東京大学先端科学技術センター教授)
研究の概要を述べるプロジェクトリーダーの廣瀬通孝氏(東京大学先端科学技術センター教授)



“ぎふMVLリサーチセンター”のプロジェクトは、その成果を2003年3月までにまとめなければならない。廣瀬教授は、研究が次の4領域に分けて推進されると述べた。
(1)マルチモーダルコミュニケーション:触覚や音声等のマルチモーダル情報をVR空間内で共有する手法の研究
(2)ポストGUIインターフェース:VR空間内でのGUI開発
(3)リアルタイム分散シミュレーション:VR空間内でのインタラクティブなシミュレーション環境の実現
(4)写実的仮想空間:イメージベーストレンダリング(*2)による高度に写実的なVR空間の実現

*2 イメージベーストレンダリング:実写画像を利用して3Dをレンダリングする手法

HapticGEAR試作機:VR空間内で触覚を共有するためのインターフェースHapticGEAR試作機:VR空間内で触覚を共有するためのインターフェース



画像情報サーバーによる仮想空間ウォークスルーの実験
画像情報サーバーによる仮想空間ウォークスルーの実験



没入型VRディスプレーが描くMVL

研究者が描くマルチメディア・バーチャル・ラボのイメージとは、どのようなものであろうか。没入型VRディスプレー“COSMOS”の体験を通してその未来を垣間見ることができる。

遠隔地の研究者は液晶シャッタリングメガネを掛け、それぞれの場所にある多面没入型VRディスプレーの中に入っている。研究者の視点位置と方向は、センサーによって捕捉される。それぞれの研究者の状況は、多面没入型VRディスプレーに立体画像として表示される。こうして、研究者たちは、共有されるVR空間内に同時に身を置くことができる。

多面没入型ディスプレー内には数人が1度に入ることができるが、センサーが対象とする1人の視点でしか正確な像は見られない
多面没入型ディスプレー内には数人が1度に入ることができるが、センサーが対象とする1人の視点でしか正確な像は見られない



設計CADデータはそのまま立体画像として映し出すことができる。製品のデザインや色、材質などは短時間に変更できる。画像情報サーバーは、形状モデルの変更結果に対して、イメージベーストレンダリングを施し、リアルな映像として映し出す。また、シミュレーションサーバーは、VR空間内の仮想製品に対して物理実験を行なう。まるで、目の前で実物が作動しているように。

車のような製品開発の場合、開発者自身がその内部に乗り込んで内装を検討することもできるだろう。各種メーター類はもちろん、ハンドルやレバーの位置も確認できる。さらに、マルチモーダル技術によって仮想のハンドルを握り、レーシングコースをテスト走行することもできる。

東京大学とギガビットオーダーで通信へ

MVLには大量な情報のやりとりが伴う。現在、“ぎふMVLリサーチセンター”では、“東京大学インテリジェント・モデリング・ラボラトリ”内の東京サイトなどと通信衛星を介して通信し、実験を進めている。そして、いよいよ今秋には、ギガビットネットワークによってこれらを接続した本格実験を開始する。

これまではVR技術といえばにエンターテイメントや教育の場での利用がほとんどであった。しかし、ここにきて、産業に寄与できるVR技術の研究・開発が、関心を集め始めている。特にハイテク製品においてはグローバルな競争が強いられ、それによって広域におよぶ共同作業も発生する。研究・開発にかかる費用と時間をいかに押さえるかが、重要な課題となる。製造業にもVR技術とネットワーク技術を応用しようという“ぎふMVLリサーチセンター”の研究は、各方面から注目されている。

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