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アドビ、PDF専門の展示会PDF Conference '99を開催

1999年07月30日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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28と29日の2日間にわたり、PDF Conference '99が、東京・恵比寿ガーデンプレイスのスペース6において開催された。主催はPDF Conference実行委員会。実質的な主催者は、後援に名を連ねるアドビシステムズ(株)。

PDFを世に広める使命を帯びたイベント

PDF(Portable Documet Format)は、インターネットをはじめとするネットワークにおける、デジタルコンテンツのデファクトスタンダードとなりつつあるファイルフォーマット。このPDFを中心に、デジタルドキュメント技術に関する情報交換と発表の場として開催されたのが、このPDF Conference '99だ。

コンファレンスには、さまざまな業界キーマンが登場し、ビジネスにおけるPDFとAdobe Acrobatの使いこなしノウハウや、PDFとフォントの関係など制作・印刷現場で役立つ情報が提供された。展示会は、アドビシステムズ(株)と、Adobe Acrobatのプラグインベンダーによる出展で構成されていた。

PDFは、DTP分野における標準といえるページ記述言語(PDL)“PostScript(ポストスクリプト)”をベースとしている。PDFおよびPDFを生成するソフトの『Adobe Acrobat』については、PostScriptを開発した米アドビシステムズ社が開発と販売を行なっている。アドビシステムズ(株)ではPDFの最新版を発表し、“AdobeAcrobat 4日本語版”の発売を開始したばかりだ。

PDFはすでに欧米では普及が進んでおり、多くの企業や公共団体で利用されている。それに対し、日本では一部を除き、認知度が高いとは言い難いのが実状だ。この普及促進を促すことが、PDFConference '99の重要なポイントと言えるだろう。

PDFの採用で、60万ドルの売上を上乗せ

基調講演では米アドビシステムズ社でPDFおよびAdobe Acrobatのマーケティングを担当している、Acrobatグループ・マーケティングマネージャーのSarah L.Rosenbaum氏が登壇。“Adobe PDFのビジョンを探る”をテーマに、PDFの最新情報と欧米におけるPDFの活用事例を紹介した。

まず、Rosenbaum氏はPDFとXML(eXtensible Markedup Laungage)の役割の違いについて説明した。Rosenbaum氏によると、米アドビシテムズ社はXMLの仕様策定を進めているW3C(World Wide Web Consortium)において、XMLシンタックス・ワーキング・グループの副座長を務めているという。さらに、SVG(Scalable Vector Graphics)についても同様にW3Cにおいて仕様を固める立場の一員であり、いずれの技術についても製品化とサポートを行なっていると語った。

PDFとXMLのいずれを使うのかということについてRosenbaum氏は、「両方使っていただきたいです。どちらを使うのかは、持っている情報によって違います。PDFならベクターのフォントやイメージのエレメントを持っているドキュメントということになります」と語った。

米アドビシステムズ社のSarah L. Rosenbaum氏と、PDF Conference実行委員長の白旗保則氏
米アドビシステムズ社のSarah L. Rosenbaum氏と、PDF Conference実行委員長の白旗保則氏



さらにRosenbaum氏は、PDFがドキュメントのデファクトスタンダードとして活用されている事例をいくつか紹介した。米国においては155を超える政府機関がPDFを標準化しているとし、その中において新薬情報をPDFにしたことで、これまでトラック数台分の紙文書を必要としていたのが、CD-ROM数枚で済むようになったと紹介した。

具体例として米国ファイザー社の例を挙げ、「ここに製薬会社にとって大きなメリットがあります。ファイザー社はバイアグラを認可申請する際にPDFを使ったことで、従来に比べ半分の時間で済ませることができました。これによって、実際にバイアグラを上梓するのを6ヵ月早めることができたのです。バイアグラは1ヵ月に10万ドルを売り上げたそうですから、PDFによってこの6ヵ月分の売上をプラスすることができた、というわけです」と紹介した。

この他に、米国司法裁判所でも提出書類をPDFでも受け付けるようになった事例や400億ドルの出版市場におけるワークフロー・エンジンとしてPDFがスタンダードとなっていることを紹介した。

電力会社や航空関連会社でもPDFを正式に採用

続いて、Rosenbaum氏はAdobe Acrobat 4.0について紹介した。前バージョンの3.0は、ウェブや紙に電子文書を表示することが主な目的だったのに対して、4.0では、ワークグループやコラボレーションのために使用するものへと変化してきたという。「Acrobat 3.0では“1×n”だったものが、4.0では“n×n”になったのです」と紹介した。

また、Adobe Acrobat 4.0は、コストを下げ、時間を短縮し、グローバル化の中でスピーディーな情報交換を有効にしていくと強調した。その特徴として、ドラッグ&ドロップでPDFを自動生成する機能や、マイクロソフト・オフィスとの親和性の高さ、電子署名の機能を紹介した。さらにPostScript 3との互換性が高いこと、ページサイズやカラーマネージメントの充実、XMLをベースとしている点など、出版分野におけるプロフェッショナル向けの機能が充実したことも併せて紹介した。

Rosenbaum氏はここでも、Adobe Acrobat 4.0を使った企業の成功事例を紹介した。航空宇宙産業界の米ロッキード・マーチン社では、オフィシャルな記録にウェブキャプチャー機能を使うことで、時間とコストの削減を実現しているとした。さらに政府による規制が厳しい電力業界では、パロ・ベルデ発電所がPDFでオリジナルドキュメントの維持を図っている事例や、PDFを使うことで印刷コストを5000万ドル(約58億円)削減した米シスコ・システムズ社の事例などを紹介した。

2~3年後には、カラー機能強化バージョンが登場

最後に、モデレーターを務めたのグローバルデザイン(株)の白旗保則氏の進行で、Rosenbaum氏への質疑応答が行なわれた。

「プロフェッショナルパブリッシングの業界において、欧米ではPDFが主流となっているようだが、日本では主流となりえるのか?」という質問に対し、Rosenbaum氏は、「日本における固有の課題があることは知っています。これらを解決し、PDFが浸透するまでには2~3年かかるかもしれません。その代わり、遅れる“特典”としてカラー機能の評価がかなり進んだものをお使いいただけることになるでしょう」と回答した。

PDFに収束すると思われていたプロフェッショナル・パブリッシングにおけるデータの標準化については、広告業界から新たなデータフォーマットが提案されるなど、これからさらに一波乱ありそうだ。しかし、「どんなデータであっても、オープンフォーマットであればいいですよね」と白旗氏がコメントしたように、業界側の情報発信者と、情報を受け取る側のユーザーが共有できるフォーマットが標準となって欲しいものだ。

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